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旅客機に乗っていると、まれに着陸時「ドシン」と衝撃が強くかかるケースがあります。実は場合によっては、こちらの着陸の方がよいケースがあるとANAのパイロットは話します。その理由などを聞きました。

積雪時や凍結時の着陸は「しっかり」がベスト

 旅客機に乗っていると、「本当に接地したのか」と思うような衝撃が非常に少ないときもある一方で、着陸時「ドシン」と衝撃が強くかかるケースがあります。ごくまれにそれに驚いて声を上げる乗客も。

 一般的には「着陸は衝撃が少ない方がグッド=操縦がうまい」と考えてしまいそうですが、現役のANAのパイロットによると必ずしもそうとは言えないそうです。


着陸するANA機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。

「お客様の感覚では衝撃の少ないほうが良い着陸と思われるかもしれませんが、滑走路が凍結していたり、積雪があったりするときには、あえて接地点を延ばさずに少ししっかり目に接地させます。その時はスムーズというよりも、”ドン”と感じるくらいの衝撃で着陸させるほうがベターです。パイロットは状況に応じて、どの程度の強さで機体を地面に接地させるかを考えて操縦しています」(ANAのパイロット)

 あえて「しっかり目に着陸」しているとのことですが、これにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

しっかり目に着陸するメリットとは

 ANAのパイロットいわく、積雪や凍結している際、滑走路へ強固に機体を接地させるのは「路面の雪氷で停止距離が長くなることで、滑走路でオーバーランすることを防ぐため」という目的からだそう。できる限り早くスポイラー(主翼上で立ち上がる抵抗装置)を立ち上げて制動させることが重要といいます。


スポイラーを立て、エンジンカバーを開き、逆噴射装置を作動させているANAのボーイング777型機(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。

「接地がスムーズ過ぎると、機体センサーが地上に降りたことを認識するのがわずかに遅れ、スポイラーの展開や逆噴射装置(エンジンの噴射方向を変えることで減速を図る装置)の作動がそのぶん遅れることがあります。通常、着陸後の制動にはスポイラー、逆噴射装置、タイヤのブレーキ、機体そのものの抵抗が大きな効果を発揮しますが、滑りやすい路面ではスポイラーと逆噴射装置の効きがとくに重要なので、それらのシステムを少しでも早く作動させることが肝心です」(ANAのパイロット)

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 ちなみに同パイロットによると、降雪時だけでなく、短い滑走路や追い風のときなども「しっかり目に着陸」を実施するケースが多いといいます。