2020年の日本サッカーにまつわるトピックとして、第1回目で1月のU−23選手権、第2回目で新型コロナウイルスへの対応に触れてきた。今回は久保建英を取り上げたい。

 海外組による20年最初のニュースは、南野拓実のリバプール移籍だっただろう。19−20シーズンのチャンピオンズリーグでの活躍を評価され、レッドブルから引き抜かれた。日本人選手のビッグクラブ加入は久しぶりで、日本サッカーにとって誇らしいステップアップである。

 冨安健洋の足跡も頼もしい。シント・トロイデン(ベルギー)を経て19−20シーズンからセリエAのボローニャへ完全移籍すると、右サイドバックとCBでレギュラー格の働きを見せた。シーズン終了後にはミランからオファーが届くなど、“カテナチオの国”で高く評価されている。

 南野と冨安に加え、マルセイユで確固たる地位を築いている酒井宏樹も称賛されるべきだ。サウサンプトンからサンプドリアへ新天地を求めた吉田麻也も、健在ぶりを示した。

 しかし、2020年シーズンの海外組から一人を選ぶなら、久保を推したい。18歳になったばかりの選手が、ラ・リーガ1部でフル稼働したのである。2020年だけでなく、日本サッカーの歴史に刻まれるトピックと言っていいはずだ。

 19年6月にレアル・マドリーの一員となった久保は、19−20シーズンの開幕直後にマジョルカへ期限付き移籍した。

 加入直後は途中交代のカードで、先発には定着できなかった。それでも、試合にはしっかりと絡んでいく。出場3試合目で初アシストを記録し、同10試合目で初得点をマークした。4大リーグ日本人最年少となる18歳5カ月でのゴールだった。

 20年に入ると、チーム内での立場を好転させていく。

 2月21日のベティス戦でリーグ戦6試合ぶりに先発すると、1得点1アシストを記録した。続くヘタフェ戦で2試合連続となるフル出場を果たすと、翌節のエイバル戦でシーズン3点目をマークする。

 ベティス戦とエイバル戦の得点は、右足で決めたものだった。利き足ではない右足でゴールを決めたことは、プレーの幅を広げていることを表わすものだっただろう。

 右肩上がりに調子を上げていたタイミングで、リーグ戦は中断を強いられる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けたものだった。

 再開までは3か月以上を要した。中2日または中3日の試合間隔を基本に、6月13日からの1カ月強で11試合を消化する過密スケジュールが組まれた。フィジカルとメンタルのタフネスさを問われるなかで、6月4日に19歳の誕生日を迎えた日本人アタッカーは躍動する。

 再開初戦から10試合連続で先発した。レギュラー格では最年少だったが、不用意なボールロストはほとんどなく、高い確率で局面を打開する「TAKE」は、チームに欠かすことのできない選手となった。
バルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーといった上位との対戦ではフル出場し、60分以前に交代した試合はひとつもなかった。最終節のオサスナ戦で先発から外れたのは、すでに2部降格が決まっていたからだった。

 35試合出場で4得点4アシストの個人成績は、その数字以上に価値がある。6月の再開後はチャンスクリエイトの大部分を担った。チームメイトが得点機を生かしていれば、アシストは2ケタに到達していただろう。
得点が「4」にとどまったのは、久保をふたりでマークするチームが増えてきたことも影響していただろう。自らが強引にシュートへ持ち込むよりも、得点の可能性がより高いプレー選択していたところもあった。20チーム中19位で2部降格となったマジョルカの戦力を考えれば、彼が残した数字は決して悪くないと言える。