ワークマンフランチャイズ店の「ワークマンプラス上尾日産通り店」(筆者撮影)

今年9月、神奈川県横浜市に女性客をターゲットにした業態店「#ワークマン女子」を初出店し、多くの話題を振りまいているワークマン。コロナ禍でも売り上げは順調に伸び続け、依然として好調さを維持している。この躍進の主な原動力は、ワークウェアをベースにした一般ユーザー向けウェアの開発や、一般ユーザーも入りやすい業態店「ワークマンプラス」の開発とされているが、もう1つ、陰の功労者がいる。フランチャイズだ。

2020年9月末現在、ワークマンの店舗数は885店(前年同期比37店舗増)で、うち839店がフランチャイズ店(フランチャイズ比率94.8%)。ワークマンは自社のフランチャイズシステムを自ら「ホワイト・フランチャイズ」と称している。

その大きな理由は、営業時間が朝7時から夜20時まで、正月三が日を含め年間店休日22日と過酷な労働環境ではないことと、それでありながら1店舗平均売り上げが1億3800万円、フランチャイジーの実収入が年間1000万円以上であることが挙げられる。同社のFCの仕組みと、FC店の実情をレポートする。

独立に反対していた妻がワークマンFCに賛同

ワークマンプラス上尾日産通り店」(埼玉県上尾市)の長島孝行・美香店長夫妻は、2020年1月にフランチャイズオーナーになったばかりだ。長島孝行氏は今年39歳。上尾市の隣の桶川市在住で、埼玉県の高校を卒業後にサッカーショップ店員を5年ほど務め、結婚を機に電気工事関係の企業に転職、電気工事士の資格を取得し、建築現場で働いてきた。

8年経ち親方的な立場まで出世するものの、朝6時から深夜12時まで、土日もほとんど休めない多忙な業務に明け暮れ、家族との時間がまったく取れないことが悩みだった。そこで、建築基礎の部材メーカーに営業職として転職し、そこでも8年ほどを過ごしていた。子どもの成長に伴い、収入的にも次のステップアップを考えていたところ、ワークマン上尾日産通り店の店主募集の情報にあたり、一念発起で応募したとのことだ。

実は長島氏は以前にも脱サラを考えたことがある。電気工事士として多忙な毎日を過ごす中で、自分で自由に働く時間を決めたい、家族との時間をもっと大切にしたいとの思いから、独立してフリーの電気工事士として活動しようと決意したものの、妻の美香さんの反対にあう。

「自分の親が自営で失敗したのを見てきました。家族がいる中で、後ろ盾のない一か八かの独立はリスクが大きい、それよりも安定した勤め人のほうがいいと思い、反対したのです」と美香さんは当時を振り返る。

そんな美香さんもワークマンのFCに応募することには二つ返事で同意した。「ワークマンは大企業だし、本部という後ろ盾がある。今飛ぶ鳥を落とす勢いのある企業なのもあって、不安はありませんでした。むしろ、夫のこれまでの経験が活かせると後押ししました。私自身も化粧品の販売を経験しているので、お店をお手伝いできるかなと」。夫婦の経験を活かし、夫婦2人で経営できることに面白みと希望を感じたという。

FCオーナーになるために必要な「5つの条件」

ワークマンのFCのオーナーになるには、5つの条件がある。(1)個人契約のみの「専業」で店舗運営すること、(2)夫婦で参加すること(兄弟でも可だが、必ず専業のパートナーがいること)、(3)50歳未満(パートナー含む)、(4)健康状態が良好、(5)通勤30分圏内(車でも可)の地元住まいであること──である。

コンビニエンスストアのように法人契約による複数店舗運営を認めないのは、売り上げ・利益の追求のみに陥らず、オーナー夫婦が地元に密着した運営に真剣に取り組んでほしいから。「オーナーが複数店舗を運営して店には立たず、アルバイトだけに任せると店は荒れる。1店舗で1家族を養えるだけの利益は十二分に上げられるので、自分が住む街の人々のため、自分の家族のために店舗経営をしてほしいのです」と、ワークマン本部でフランチャイズを管理する加盟店推進部の八田博史部長は説明する。


ワークマン東京本部加盟店推進部の八田博史部長(筆者撮影)

ワークマンのFCは6年契約だが、99%が6年後に再契約を結ぶ。残り1%は定年退職などだ。同社では70歳定年制を導入しており、定年を迎えたオーナーの半数は息子など身内に事業承継するが、残りの半数は完全引退となり、本部が新たなオーナーを募集する。ワークマンは現在、人口10万人に対して1店舗の出店政策をとっており、FCオーナーを希望する場合は自宅の近隣に新店舗がオープンするのを待つか、既存店のオーナーの定年を待つしかない。

上尾日産通り店は、前のオーナーが70歳の定年を迎えたことによる募集だった。新業態店「ワークマンプラス」へのリニューアルもあり、本部としても若い世代のオーナーを募集していたところ、ちょうどよいタイミングで長島さん夫妻が応募してきたというわけである。「ワークマンプラスの開発により知名度が上がったことで、FCオーナー募集を告知すると応募が殺到する」(八田部長)。長島夫妻は運がよかったといえるだろう。

夫婦での運営を推奨するのは、何でも相談できる相手がすぐそばにいることが重要だからだ。店長は気を配らねばならないことが数多くある。売り上げ、客への対応、商品管理・売り場管理、アルバイトスタッフの管理。悩みは尽きない。

そのとき、業務に精通し、共に悩みを分かち合え、相談できる存在が身近にいるのは心強い。また、女性の目線が入ることでうまくいくことも多い。「ワークマンプラスの来店客の半数近くが女性客になっている。店長の奥さんが一緒に店に立つことで、女性客も安心して買い物ができます」(八田部長)。

新規募集オーナーの年齢制限を50歳未満とするのには2つの理由がある。1つは、ワークマンプラスの導入により、女性を中心に新しい客層が増えており、柔軟な接客が求められるから。もう1つは、新規顧客の開拓が継続することで来店客が増えて忙しくなり、体力・精神力が求められるからである。実際、上尾日産通り店の来店客は建設業関連客4割、一般客6割と一般客の比率が多くなり、売り上げも前年比120%で推移し、忙しい毎日だ。

建設業関連客のニーズは特殊なものが多いため、自身も職人経験がある長島店長が接客し、一般客は美香さんおよび女性パートスタッフが担当するという役割分担ができている。

ただ、美香さんの明るい人柄と人懐こさにより、寡黙な職人気質の客のリピーターも増えているという。「プラス店になって一般のお客さんが増えたことで従来の職員さんが入りづらくなってはいけないし、逆に一般客が入りづらい雰囲気を作ってもいけない。その匙加減が難しいが、長島さん夫婦は2人の経験を活かして、上手に采配している」(埼玉地区第一スーパーバイザーの楠本潤氏)。

支援制度で若い世代のオーナーを増やす

2年前の2018年にワークマンプラスがスタートしたことで、それまでFC加盟時の店主の平均年齢が42.3歳だったものが、今年4月には38.5歳まで下がっている。ワークマン本部が意図時に若い店主を選んでいるということもあるが、若い世代からの応募も軒並み増加しているという。直近の半年間で新規にFC契約した40件の内訳は、20代が5人、30代18人、40代16人、50代1人だった。

なお、女性店主は全体の20%にものぼり、20代の女性店主は3人いるという。奥さんが店主兼経営者で夫が店員という、婦唱夫随のパターンである。

20代、30代の若い世代でもFC加盟できるよう、ワークマンは支援制度を導入している。ワークマンとフランチャイズ契約を結ぶための必要資金は、加盟金75万円+開店手数料100万円+研修費25万円+保証金100万円=合計300万円(税別)。

大手コンビニエンスストアチェーンとほぼ同等だ。300万円を準備できない場合には、自己資金130万円をベースに、残りは日本政策金融公庫を紹介し、無担保・無保証・低金利での融資に協力する。なお、店舗の土地と建物はワークマン本社が用意する。

2020年4月からは、若い世代向けの「ヤング加盟店支援制度」を導入した。40歳未満の加盟者に対して、300万円のうち200万円をワークマンが1.75%という低金利で貸し付けるものだ。貸付金はオープン後に月々の分配金から自動的に引き落とされ、3年で返済していくことになる。

ほかにも、新規オープン店舗は必要資金を50万円減額して250万円としたり、既存店でパート・アルバイトをしていたスタッフが独立して別店舗のオーナーになる場合も250万円とするといった加盟支援制度を導入している。

売れば売るほど儲かる仕組み

肝心の収入だが、冒頭述べたように、FCの売り上げは全店平均で1億3800万円、ワークマンプラス店だけを見ると平均1億8000万円で、トップ店は3億円以上も稼ぐ。

売り上げから商品仕入れ原価を差し引いた粗利額を本部とFC店で分け合う粗利分配方式を採用しており、本部の取り分、いわゆるロイヤルティーは60%の一定比率。大手コンビニチェーンは売り上げに応じて30数%から70数%まで変動するスライドチャージ方式を採用しており、売り上げが上がった分だけでロイヤルティー比率が増えるのに対して、ワークマンはどんなに売り上げが伸びても60%の固定。つまり、稼げば稼ぐほど儲かる仕組みになっている。

例えば、月間売り上げが1500万円の場合、粗利率は平均36%なので、粗利額は540万円。本部へのロイヤルティーは324万円、加盟店の取り分は216万円。そこから電気代などの営業経費、在庫金利負担金、棚卸しロス預託金、パート・アルバイトの人件費、在庫の返済金などを差し引いた、最終的な店舗側の実収入は約100万円。年間1200万円の収入となる。

年商3億円を売り上げれば年収2000万円超も夢ではないということだ。また、加盟時の必要資金の融資を受けたとしても、最初の1年で返せるほどの収入が得られる計算になる。なお現在、上尾日産通り店ではパート・アルバイトを6人雇用している。

加えて、加点主義による褒賞金制度もあり、ほとんどのFC店が実収入+αの収入を得ているのも特徴だ。例えば、年間売り上げが1億5000万円以上の店舗には漏れなく20万〜50万円が支払われる「サクセス倶楽部」、不良品以外を戻さない返品ゼロ店舗には「買取懸賞金」として30万円。さらに、売り上げ前年比の伸び率に応じて3万〜150万円もらえる「ステップ・アップ賞」。このステップ・アップ賞は年2回行われており、最高150万円×2回で300万円を受け取っている店舗もあるという。

褒賞金は2年目からが対象となるため上尾日産通り店はまだ対象外だが、すでに前年比120%で推移しているため、来年は確実に受け取ることができるだろうと、楠本スーパーバイザーは語る。

「サラリーマン時代に比べて、すでに月の手取り収入は2倍になっています。サラリーマン時代はいつも家計を気にしており、子どもの洋服はできるだけ安いものを買おうとしたり、外食も高いものは頼まないように家族に制限をかけていました。今は、家族に我慢を強いることが減り、幸せです。私自身、家計の問題で大学に進学できなかったのですが、子どもにはそのような思いをさせずに済みそうです」と長島店長。


ワークマンのFCになって、将来に希望が持てるようになりました」とワークマンプラス上尾日産通り店の長島店長夫妻(筆者撮影)

美香さんも、「家計に潤いができ、子どもの将来にも希望が見えてきました」と明るく笑う。職人相手なので朝は早いが、通常閉店後に行われるレジ精算作業は昼の12時に行うので、20時の閉店後は5分で帰宅でき、家族と一緒に食事がとれる。自宅が近いので、子どもの運動会や授業参観は中抜けして見に行ける。家族との時間が増え、夫婦の会話も増えたという店主も多い。

ワークマンのFCは、売り上げ目標はあるがノルマがない。だから、減点主義ではなく加点主義。頑張った分だけ自分に跳ね返ってくる。やりがいがある、と長島店長は語る。「やるからには埼玉県で一番店になりたい。スーパーバイザーから成功店の情報を教えてもらったり、社内報で商品情報を得て工夫したり、妻やパートさんに協力してもらって女性客を取り込んだりと、やることはたくさんある。まだまだ伸びると信じています」。

「#ワークマン女子」店は1000店舗規模を目指す

ワークマンは10年後のビジョンとして、「#ワークマン女子」店を400店、「ワークマンプラス」店を900店、従来型の「ワークマン」店を200店、合計1500店舗体制を想定している。時期は未定だが、#ワークマン女子は最終的に1000店舗規模にしたい意向だ。


神奈川県横浜市の#ワークマン女子コレットマーレ店(写真:ワークマン

コンビニのように自社競合が増えると懸念する向きもあるが、「まだまだワークマンを知らない、ワークマンに行ったことがない人は多いです。当面、ワークマン女子はショッピングセンターを中心に直営店として出店していきますが、成功すればロードサイトFC店としての出店もありえます。ワークマン女子店ではワークウェアは扱いませんが、ワークマンプラス、ワークマン店にはワークマン女子と同じものが置いてあるので、ワークマン女子店でワークマンを認知し、次はより自宅に近いワークマンプラス、ワークマン店に見に行く、という良い循環が生まれるでしょう。まだまた市場開拓の余地は残されているのです」(八田部長)。

ワークマンは大都市中心部への出店はなく、ロードサイドも空白エリアが多く残されている。今は人口10万人エリアに1店舗の出店政策だが、「#ワークマン女子」が成功すれば5万人エリアに1店舗への変更もありえるという。ワークマンフランチャイズオーナーになるチャンスはまだありそうだ。