息子が電車好きになったのは、一体いつだったか。育児日記を振り返ると、最初は車やバスが好きだったのが、2歳前後から次第に電車好きに移行してきたようだ。まだ舌足らずの頃すでに「〇〇〜、〇〇〜、しゅうてんでーしゅ」(〇〇は駅名)と車掌さんの真似もしていた。うちの子も!と共感を覚える方も多いのではないだろうか。今回は、そんな子鉄にうってつけの知育教室「レールキッズ」の取材レポートをお届けする。


■鉄道を通じて地名を覚える子どもたち


とある平日の午後、鉄道知育教室「レールキッズ」の月島教室を訪れた。ちょうど2〜3歳児を対象とした「急行クラス」がスタートする時間。やってきたのは近隣に住む親子3組、3歳の男の子3人とそのママたちだ。

講師を務めるのは、自身のお子さんも「子鉄」として育ち、東京大学に進学したという青木美加先生。「こんにちは」のご挨拶を終えると、「好きな電車、教えてくれるかな?」と子どもたちに質問した。真っ先に「はんじょーもんせん(半蔵門線)!」と答えた子は、「むらさき!」と半蔵門線のシンボルカラーまで教えてくれた。その他の子の好きな電車は「Max」と「こまち」。やはり新幹線が人気のようだ。

鉄トークで場が温まったところで、「それでは、電車でお勉強しましょう!」。最初に取り出したのは電車カードだ。表には電車の写真、裏にはその電車の名称や紹介文が掲載されている。

「ひたち、あずさ、つがる、しなの、くろしお……」

電車の名前をすばやく読み上げながら、カードを次々とめくって見せていく。知育教室でもよく用いられる「フラッシュカード」の電車版だ。ひととおり見せると「知ってる電車、あったかな?」。「ひたち!」と一人の子が答えると、今度は「ひたちはどこまで行く電車かな?」。答えられる子はいなかったのだが、「福島県のいわきまで行くんだよ」と先生が優しく教える。それに応じるように「いわき」とつぶやく子どもたちが何ともかわいらしい。

続いて「埼京線、京葉線、京成本線、銀座線、小田急小田原線、常磐線、横須賀線、山手線、御堂筋線……」と通勤電車のカードも読み上げてから、埼京線のカードをピックアップ、「埼京線は、東京と埼玉を結ぶ電車です」と説明した。月島教室の近隣に住む子どもたちにとって、埼京線は馴染みの薄い路線だが、電車を通じて教えてもらうと、埼玉という地名もすんなり頭に入っていくようだ。

銀座線のカードを見せたときには、子どもたちはすぐに「ぎんざせん!」と反応。「銀座線は何色かな?」との質問にはすぐさま「黄色と茶色!」と答えていた。この子たちは色の名前も電車を通じて覚えたのかもしれない。「銀座線は日本で一番古い地下鉄だよ」という先生の解説も交えつつ、レッスンは次の課題に進んでいく。

■子鉄心をくすぐるプリント学習



フラッシュカードの次は、プリントを使った勉強がスタート。この日は「モノレールの“も”」の書き方を練習した。合間に「モノレール乗ったことあるかな?」とか、「サンライズいずもの“も”だよ」「他にも“も”のつく電車は、“やくも”や“もりよし”があります」といった情報も挟まれる。そういえば息子も以前、『でんしゃのひらがなれんしゅうちょう』(学研プラス)で楽しそうに平仮名の練習をしていたっけ、と思い出した。

その後は、プリントに薄く描かれた線路をなぞり書きする練習。まだ3歳で鉛筆を持つ手もおぼつかないため、握って書けるようにクレヨンも用意されていたのだが、一人が鉛筆で書き始めると、他の子も鉛筆でチャレンジしていた。その次に配られた、絵と言葉を線でつなぐプリントも、やはり子鉄仕様で、運転士や駅員が描かれていた。


レッスンの時間は45分。2〜3歳だと途中で飽きてしまうこともある。実際この日も、プリントでの勉強が続いて中だるみしてきたのだが、そこでとっておきの、電車の絵がいくつも描かれたプリントが登場。たくさんある電車の中から、新幹線にだけ丸をつけるという課題だったのだが、電車の絵にテンションが上がったようで、どの子も熱心に取り組んでいた。3歳児にして、新幹線とそれ以外の電車をさっと区別して認識できるのは、さすが子鉄!とうならされる。

最後はお楽しみのゲームタイムで、電車の形のカードでかるた大会が始まった。ドクターイエロー、はやぶさ、サフィール踊り子、パンダくろしお、観光特急しまかぜ、ラピート、つばさ、新幹線試験車両ALFA-X……大人でも、鉄道に興味がなければ知らない名前が多いのではないだろうか。子どもたちも全部はわかっていなかったと思うが、それでも我先にカードをとろうとして、熱いバトルが繰り広げられた。悔し涙を流してしまう子もいて、真剣さが伝わってきた。

レッスン後、参加した子どもたちのお母様方にお話を伺うと、「あまりに電車が好きなので、その力をもっと伸ばしてあげたくて通い始めた」「レールキッズに通うようになってから、平仮名に興味が出てきた」とのこと。電車好きという共通の趣味を持つ仲間と出会えるのもメリットのひとつだろう。

■『電車が好きな子はかしこくなる』


鉄道知育教室「レールキッズ」のアドバイザーは、『電車が好きな子はかしこくなる』の著書がある、福山市立大学准教授の弘田陽介先生。ちなみに同書は、教育学・心理学の視点から、電車好きが賢くなる理由や、電車で育児・教育することのメリットについて解説した一冊である。『電車が好きな子はかしこくなる』を一部引用しよう。


「鉄道を介して、駅名や用語、路線図を覚えていくことの意義は、覚えたものがその後の人生で役立つという保証ではなく、幼い時から知性を働かせ、記憶するトレーニングをしている積み重ねにほかなりません。自分でも知らず知らずにこのようなトレーニングを積んでいたことが、将来、勉強する上で大きな力になっていきます」

たとえ4、5歳になって電車への興味が薄れてしまったとしても、それまでに電車を介して得た力はその後も必ず役立つ、とのこと。電車に乗ることで公共マナーも身につくし、運転士さんや車掌さんの仕事ぶりを見て学ぶこともあるだろう。そのまま電車好きを貫いて成長していけば、時刻表を片手にプランを立てて、オリジナルの鉄道の旅を楽しむようになるかもしれない。

レールキッズは現在、東京の豊洲と月島にて少人数制の教室を開講。先ほど紹介した「急行クラス」のほか、1〜2歳児向けの「準急クラス」、年少さん向けの「こだまクラス」、年中向けの「ひかりクラス」、年長さん向けの「のぞみクラス」、そして小学1年生以上の子どもを対象としたマンツーマンの「リニアクラス」がある。さらに不定期で、鉄道会社・車両基地への見学ツアーや貸切列車を使っての課外授業といった特別授業も行われるそうだ。

好きこそものの上手なれ。親としても、電車が好きという子どもの思いを受け止め、楽しく学べるチャンスへとつなげていきたいものだ。

【取材協力】
鉄道知育教室・レールキッズ
https://rail-kids.com/

加治佐 志津
ミキハウスで販売職、大手新聞社系編集部で新聞その他紙媒体の企画・編集、サイバーエージェントでコンテンツディレクター等を経て、2009年よりフリーランスに。絵本と子育てをテーマに取材・執筆を続ける。これまでにインタビューした絵本作家は100人超。家族は漫画家の夫と2013年生まれの息子。趣味の書道は初等科師範。