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リクルート住まいカンパニーは、緊急事態宣言下の5月に引き続き、8月〜9月(8/24〜9/11)にかけて実施した、首都圏・関西・東海と一部の政令指定都市に在住する、住宅購入・建築やリフォームを検討している人たちに調査した結果を公表した。8/24〜9/11という調査時期は、第3波が訪れたいま振り返れば、第2波が収まりつつあった時期に当たるのだが、調査結果にどんな違いがあったのだろう?【今週の住活トピック】
第2回「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」を公表/リクルート住まいカンパニー

第2波後も在宅勤務の影響で、住まい探しは促進傾向?

緊急事態宣言下で行われた同社の第1回の調査結果については、SUUMOジャーナル「駅距離よりも家の広さが欲しい?コロナ禍で変わる住まい選び」で詳しく紹介している。第2回の調査結果を見ると、第1回と同じような傾向が見られる。具体的に見ていこう。

「コロナの拡大によって住まい探しにどういった影響が出たか?」について、以下のように分類したところ、全体として第1回の調査結果より「抑制された」という割合が減っている。

○影響はない
○抑制された
・モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物物件を見に行くことをやめた
・検討を休止した、いったん様子見にした
・検討を中止した
○促進された
・住まい探し始めのきっかけになった
・住まい探しの後押しになった
・契約の後押しになった

コロナ拡大の住まい探しへの影響(特定の項目に回答した人のみ/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より転載)

ただし、この結果には地域差も見られ、関西では「抑制」のほうが「促進」より多いが、東海ではイーブンに、首都圏では「促進」のほうが「抑制」より多くなるという結果になった。

これは、在宅勤務などの影響が見て取れる。「テレワークの実施率」を見ると、全国的に緊急事態宣言中に大きく上昇し、7〜8月末になると減少しているが、それでも首都圏では62%と依然として実施率は高い。

【緊急事態宣言中と7〜8月末のテレワークの実施率】
首都圏:72% → 62%
関西 :53% → 47%
東海 :51% → 41%

その影響もあってだろうが、「住まいの検討のきっかけ」(複数回答)を聞くと、首都圏では「在宅勤務になった/増えた」(5月調査では「在宅勤務になった」)が急増して、最多のきっかけ要因になった。結婚や子どもの誕生などのライフステージの変化に加えて、特に首都圏で、テレワークが住まいを検討する大きなきっかけになっている。

住まいの検討のきっかけ(複数回答)※上位3つを抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より抜粋転載)

コロナ下では「在宅時間の長期化」と「在宅勤務の継続」の影響大

住宅に求める条件は、住み替えを考えるきっかけによっても変わる。今回の調査結果を見ると、(1)在宅時間が長くなったこと、(2)在宅でのテレワークが続いていること、が住宅の条件にも影響していることがうかがえる。

※:今回調査から選択肢に追加した項目(前回調査では選択肢に含まれず)
コロナ拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答)※上位10を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より抜粋転載)

コロナ下では換気が求められるので、「換気性能」や「通風」などが上位に挙がる。加えて、従来も重視されてきたが、「日当たり」「省エネ性」「遮音性」などの機能や「宅配ボックスなど」の設備は、在宅勤務や会食の自粛などで在宅時間が長くなったことも影響しているだろう。また、特に首都圏では、在宅勤務でニーズが高まる「仕事専用スペース」「通信環境」が、1・2位を占め、在宅勤務による影響の大きさがうかがえる。

どうなる?住宅市場の動向は?価格は?

では、これからの住宅市場はどうなっていくのだろう?

住宅購入・建築やリフォームについては、大半の検討者が「影響なし」と回答しており、「抑制された」比率は前回調査より下がっている。首都圏では、むしろ「促進された」比率のほうが多いという状況を見ると、住宅市場は比較的安定していると見てよいだろう。

例えば、東日本不動産流通機構が公表している首都圏の中古マンションや中古一戸建ての取引データを見ると、4・5月こそ一時的に売買の成約件数が大きく落ち込んでいるが、以降は回復しているし、成約した価格については、コロナ下でも大きな下落もなく、いまのところ安定している。

次に、研究機関の予測を見てみよう。

東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期(出典:日本不動産研究所)

一般財団法人日本不動産研究所が公表した「東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期」を見ると、東京23区の新築マンションの価格と賃料は、2020年〜2025年までほぼ横ばいで推移すると予測している。新築マンションの価格については、新型コロナによるマクロ経済の停滞の影響は小さいと見ており、2020年に新築マンションの供給が減少しているが、主な購入層の経済余力は減少していないため、価格は下がらないという見立てだ。

こうしたことから、住宅市場に限れば新型コロナによる影響はあまり大きくないので、当面は価格も大きな変動はないと見てよさそうだ。住宅購入はライフステージの変化や今の住まいに対する不満などがきっかけになる。もしいま住み替えたいと思ったのであれば、コロナの影響に左右されることなく、冷静に判断するとよいだろう。

○日本不動産研究所/「東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期」


(山本 久美子)