大物もパーソナリティを務めた(左上から時計回りに川中美幸、戸田恵子、坂本冬美、香西かおり)

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 半世紀にわたって放送されてきた、文化放送の看板番組「日野ミッドナイトグラフィティ 走れ!歌謡曲」が来年3月で終了する。

 放送開始は1968年で、高度経済成長期の真っ只中。トラック製造大手、日野自動車の一社提供で、毎週火曜日から土曜日の午前3時から5時まで、長距離トラックや深夜バスのドライバーに音楽や天気、交通情報を生放送で提供してきた。

「リクエストをハガキで受け付けていた時代ですね」

 と、振り返るのは98年から約2年半、パーソナリティを務めたフリーアナウンサーの内山久美子氏だ。

「意外にもハガキを下さるのはドライバーより、パン屋や豆腐店のような朝が早い職業の方が多かった。寝付けずにいる高齢者の方、病院のベッドでこっそりイヤホンで聴かれる入院患者さんもいて、幅広い年齢層に支持されていましたね」

大物もパーソナリティを務めた(左上から時計回りに川中美幸、戸田恵子、坂本冬美、香西かおり)

 ゲストに思い出も多い。

「テレビと違って顔が見えない安心感からか、演歌界の大御所の意外な一面を垣間見ました。着物姿のイメージが強い女性歌手は、ジーンズにハローキティのTシャツ姿。また、化粧の濃さが話題になった別の女性歌手は、薄めのナチュラルメイクでお肌つるつる。派手に見えたのは、顔の彫りが深いせいでした」

 深夜帯の生放送ならではの苦労もひとしおで、

「私が初めてのラジオ出演で悩んでいると、先輩パーソナリティから“ドライバーは一人で運転している。彼らへの問いかけは〈皆さん〉じゃなくて〈あなた〉だよ”と教えられたり。リスナーに寄り添うことの大切さに気づかされました」

 80人を超える歴代パーソナリティには、川中美幸、香西かおり、坂本冬美といった一流歌手も名を連ねた。

 文化放送の幹部によると、番組終了は数年前から社内で検討されていたという。

「2、3年前、日野自動車が宣伝費の見直しを理由に撤退を打診してきましてね。今年9月には中部、中京、関西エリアの放送局への提供が終わったばかり。終了は時間の問題でした」

 当の日野自動車に聞くと、

「ドライバーの嗜好性の変化、スマホの普及などを総合的に勘案して判断しました」(渉外広報部)

 後継番組は未定という。

「週刊新潮」2020年12月3日号 掲載