滋賀県は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを農業分野で進めるための条例を制定する。持続可能な農業の推進を「県の責務」と明記。県内農業を取り巻く課題に全般的に取り組み、生産者が将来にわたって営農活動を継続できるようにするのが狙いだ。県によると、農業分野のSDGsを前面に掲げた条例は全国で初めて。

 制定を目指すのは「持続的で生産性の高い滋賀の農業推進条例」。県議会定例会議で21日に採決される見通しで、来年4月の施行を目指す。

 県はこれまで、2003年に「滋賀県環境こだわり農業推進条例」を施行するなど、環境に配慮した農業に全国に先駆けて取り組んできた。ただ近年は生産者の減少や米の需要縮小、気候変動など、農業を取り巻く状況が一変。「環境問題だけでなく、課題全般に取り組む必要がある」(県農業経営課)と条例制定に乗り出した。

 条例案では、県の責務として、持続的で生産性の高い農業の推進に向けた施策を「総合的に策定し、実施するものとする」と明記。生産力の向上や環境保全対策に取り組むよう求める。

 具体的には、県はスマート農業や良質な土づくりの他、気候変動に適応した新品種や栽培方法の開発に取り組む。生産性を高めて農業所得の向上につなげ、県内生産者の経営安定や県内での新規就農の機運につなげる狙いがある。

 生産基盤の維持にも取り組む。米の需要が大きく落ち込む中、円滑な転作を支援して水田フル活用を後押しする他、中小規模の農家や兼業農家など多様な生産者の確保を進める。

 18年に廃止された主要農作物種子法(種子法)の基本事項を盛り込んで、米、麦、大豆の種子の安定供給にも取り組む。

 環境保全対策では、農薬と化学肥料の使用量を半分以下に抑えた「環境こだわり農業」の推進や、廃プラスチックの抑制に取り組む。その他、県育成品種の知的財産権の保護を進める。

 県は「県内生産者が将来にわたって営農活動を続けられる環境づくりを進めたい」と意気込む。