借金500万円男、ジャパンカップ「魂の3連単」2点買いの結末は

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。
「マニラのカジノで破滅」したnoteで有名になったTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は27回。
今回は、馬も犬も本気を出した2020ジャパンカップ、当日の話です。
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◆本気を出した2020ジャパンカップ回顧録
高校野球の最後の試合、最後の一球の行方を確認してからしばらくは、なぜかまだ試合が終わってないような気がして、僕が泣いたのはみんなより少し後だった。
ジャパンカップが、終わった。
日刊SPA!の担当から5万円を借り、久しぶりに少し大きな賭け事ができると張り切った僕が選んだ馬券は「3連複乱れ打ち」という、予想外の展開がくればとりあえずたくさん勝つかもしれない買い方だった。
先日、初めてジャパンカップの出走馬について真剣に調べていたら、ほとんど全ての馬に思い入れが出てきてしまい、
「もうお前たち全員が主人公だよ」
というアツい感情が湧き上がってきた結果、どの馬がどんなドラマを繰り広げても当たりそうな馬券が出来上がってしまった。お気に入りは過去のレースがほとんど2着の1枠「カレンブーケドール」。この馬を中心にたくさん買った。1着の馬は引退試合のアーモンドアイだと思った。名馬引退で1着。
意気揚々と買う予定の馬券を送ると、おそらく馬券を確認する時間が少し経ったのち、
「借りた金なのにこんなどっちつかずの半端な馬券でいいんですか?」
と返信が来た。
かつて僕がカジノの話をする時に「賭場において、借りた金こそ振り返らずに思い切って賭けるべき」という話をしたことがある。しばらくギャンブルから離れていたせいで忘れていた。そういうことなのだ。5万借りた僕がやるべき事は、少しでも増やすのではなく、今々の生活を変えてしまう勝ちだ。
エアコンの止まった肌寒い部屋の中、何もない壁から寒風が吹いた気がした。ここ数ヶ月、愚直に日雇いを頑張ったせいで濁った目が覚める。
◆ジャパンカップ当日
ジャパンカップ当日。
目が覚めてすぐに考え直した買い目を送ると、担当から、
「5万円、振り込んでおきました」
と返信がくる。次いで、
「まだ足りないです、もっと絞りませんか?」
と追撃がきた。
「今日は例年のジャパンカップと違って内枠有利が弱いかもしれません」
「外枠のグローリーヴェイズに絞るってことですか?」
「そういうことにもなりますかね」
さらに出走表と睨めっこを続けることになった。あくまで僕が決める馬券、参考程度にしよう……。
◆ギリギリまで続く攻防
気がつくと14時になっていた。レースの開始は15時半くらいなので、そろそろ馬券を買いに行かなければならない。僕がこれまで馬券を買うために使っていた口座は引き落とし地獄で使えなくなっているので、WINSと呼ばれる馬券売り場まで行かなくてはならない。近いのは銀座、次いで水道橋。電車で30分も乗れば着くが、準備はそろそろしなくてはならない。
「ちなみに……WINSで買おうとしてます?」
含みを感じる言い方に、コロナがよぎる。行間とクエスチョンマークに全てが詰まっていた。読める、僕には。
「WINS、やってないんですか?」
「14時で閉まります」
しまった、と思った。ここまで考えて馬券を買わないなんて、そんなマヌケな事はできない。 厚顔無恥なのでSPA!の担当と連絡を取り合い、近所に来てもらって代わりにネットで買ってもらうことにした。喫茶店で合流した時点でもう15時を回っていた。振り込まれた5万円は途中でおろしてその時に返した。