電気柵周辺の草刈りをする庄賀さん(左)ら(広島県熊野町で)

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 「イノシシを恐れずに済む安全な地域にしたい」と、広島県熊野町の萩原地区で、女性らが獣害対策に立ち上がった。電気柵を設置したモデル農地でエダマメを栽培しながら、定期的な草刈りなどの保全作業を担う。被害・出没防止に加え、地域住民に獣害対策を意識させるきっかけづくりとして貢献する。

 四方を電気柵に囲まれ、内部は雑草もなく、しっかり見渡せる──。県や町、JA安芸も協力した獣害対策のモデル農地3アールは、開設3年目に入った今もきちんと管理されていて、周辺でイノシシの被害や出没はないという。手掛けるのは、50〜70代の地元女性4人が参加する「ふぁーむ我花咲(わかさ)」だ。

 いずれのメンバーも農業は自家用に野菜などを栽培する程度。代表の庄賀深雪さん(72)は対策に携わる理由を「イノシシが歩き回るような環境のままにしておけば、いつけがをするか分からない。自分たちで何とかするしかない」と話す。

 同町は県西部の山間部にあり、地域住民は、イノシシによる農作物被害や民家周辺の出没に頭を悩ませてきた。「地域の安全を守ることができるなら」と庄賀さんらがモデル農地の管理に立候補した。

 6月から10月にかけて黒大豆エダマメを栽培。年間を通じて月1、2回、電気柵周辺部の草を刈り、設備を保全する。経験のない作業だったが、グループの一員の面迫龍子さん(77)は「相変わらず草刈りは大変。でも、安全につながるというやりがいは大きい」と話す。

 グループが獣害対策に力を注ぐ姿は地域住民にも影響を与えた。メンバーが草刈りをしていると近隣に住む数人が手伝いに来るようになった。事前に呼び掛けていないが参加が続いている。さらに、隣接する農地の所有者も定期的に草刈りをするようになった。

 町は「積極的に活動している我花咲の姿は、獣害対策に携わることの大切さを地域に伝えるきっかけになりつつある」(農林緑地課)と話す。21年度にはモデル農地を4・5アール程度に拡大する予定。地域内で獣害対策の機運がより高まることに期待を寄せる。