ファミリーマートでは見切り販売の本格展開に向け、実験を進めている(撮影:今井康一)

「見切り販売処理の方法がいやらしいほど面倒」

2020年9月に公正取引委員会が公表したコンビニの運営実態をまとめた報告書では、見切り販売に関する加盟店オーナーの声がそう記されていた。

お弁当やおにぎりなどの商品は、販売期限を過ぎると店頭から下げられ廃棄へと回される。その前に値引きして売るのが「見切り販売」だ。

加盟店が負担する廃棄費用の軽減や売上高増加が見込めるため、見切り販売に興味を示す加盟店オーナーは少なくない。だが、チェーン全体での価格の統一性が崩れるなどの理由で、コンビニ本部は見切り販売に消極的な姿勢をとっていた。

コンビニ各社は11月30日、公正取引委員会の求めに基づきフランチャイズチェーン(FC)加盟店との取引における自主点検の結果と改善内容を発表した。総じていうと、本部社員への教育をより深く行い、加盟店オーナーにも公取委が指摘した課題について丁寧に説明すると強調した内容で、コンビニのFCビジネスが変わるほどのものではない。

手間がかかった見切り販売

しかし、見切り販売について一歩踏み込んだ記述をした会社があった。一部の加盟店オーナーから「わざと処理を煩雑にしている」と酷評されてきたファミリーマートだ。

現在ファミマで見切り販売を行う場合、事前申請のうえに伝票を手書きで書く必要がある。天候変化などに対応できず手間がかかることから、見切り販売を行うのは現実的ではなかった。セブン-イレブンやローソンといった他社と異なり手書き伝票を求めていた理由を、ファミマ広報は「システム処理の都合上、必要だった」と弁解する。

公取委に提出した改善報告では、2021年度の本格展開を目標に、値引きシールを使用した見切り販売の実験を行っていると説明している。「100円引き」などと記された値引き専用のシールを商品に貼り、会計の際に商品バーコードと値引き用バーコードを読み込む仕組みだ。

あるファミマ加盟店オーナーは、「私が見切り販売をしようとすると本部側は妨害してきた。だが行政の介入でようやく動き始めた。本当によかった」と安堵する。

ただ、見切り販売はコンビニ業界が抱える問題の一端に過ぎない。今回、各社が公表した改善内容をみて、加盟店歴20年超のセブンオーナーは次のように指摘した。

「『自主』や『自己』の点検で改革がすぐに果たせるのであれば、この間にもう少しどうにかなっていたはず。自身ではどうにもならない、そんな企業体質だから、問題がこれほどまでにこじれ大きくなったのでは。外部から検証してもらう必要がある」

加盟店の利益改善に向けたコンビニ各社の取り組みはまだ途上といえる。