2016年に当時中国共産党中央党校の副校長だった王东京氏が、「中国官场三大定律(中国官僚社会の三大法則)」という記事を発表しました。王氏は、中国の官僚社会にみられる現実や問題点を3点にまとめています。

头条文章

https://card.weibo.com/article/m/show/id/2309634492089764216920

How the CCP Does Job Promotions - ChinaTalk

https://chinatalk.substack.com/p/how-the-ccp-does-job-promotions

◆第1の法則:貧しい地域ほど、多くの人が官僚になりたがる

王氏によれば、中国の貧しい地方では「官職を買う」という犯罪行為が横行しており、そういった不正な官僚が罷免されて実刑を言い渡されるケースも少なくないとのこと。貧しい地方で官僚になりたがる人が増えている理由について、王氏は「中国では国家の資産が国民の資産であるとされているが、現実では一般人にそれを管理する権利はない」からだとしています。

中国政府が共産主義を掲げている以上、「国有財産はすべて国民の財産である」という建前はありますが、実際は政府が所有するものを管理できるのは官僚だけです。そして、中国の経済市場は実質的に政府がすべてを掌握しているため、中国の経済はすべて官僚のためにあるといえます。



例えば、一般の中国人がレストランで食事をする時、自分でお金を支払って食事をします。しかし官僚になれば、レストランで食事をして、その領収書を役所に持って帰れば全額精算できるとのこと。つまり、国家が官僚の食事代を払ってくれるというわけです。王氏は「中国では、庶民は自分のために食事をする。しかしいったん官職に就くと、国家のために食事をする。そのため、国が費用を負担しなければならないのです」と述べています。

「現代の中国人が金もうけをするためには、2つの方法があります。1つは密輸や麻薬取引など、大きな利益があっても人生も財産も失うリスクがある違法行為、もう1つが官職に就いて行政を独占することです」と王氏は述べています。

◆第2の法則:権力が大きくなればなるほど、官僚としては昇進しない

「経済的、あるいは人事的な権力が強い官僚には、それをうらやむ人や嫉妬する人、すり寄ってくる人や憎む人もあらわれます。もし大きな権力を持っていても、他人の計略によってあっという間にひっくり返ってしまいます」と王氏は述べ、若い時から強い権力を握っている人ほど激しい競争にさらされて、のし上がっていくのが難しいとしています。

中国共産党の高級幹部を目指すためのエリートコースは、中国共産主義青年団(共青団)への入団から始まるといわれています。共青団が中国共産党のエリートコースになった理由について、王氏は「共青団は金銭とは無縁で、横のつながりと縦のつながりを駆使しなければ物事を実践できないので、所属している人物は仕事の能力が比較的高いといえます。一方で、共青団のメンバーには大きな権力が与えられておらず、誰かから恨みを買ったり謀られたりすることがほぼないため、権力を持つ官僚よりも昇進する機会が多いのです」と説明しています。



◆第3の法則:善人がいい官僚であるとは限らない

「ここでいう『善人』とは、誰もがいい人だと評価するような人です。つまり、毛沢東がいうところの『過ちを犯すことを恐れ、危険を冒さずに保身に走ることだけに秀でた人』のことです」と王氏。

官僚であることは、それ自体が責任の重いことであり、公務員としての責務を全うするには一部の人を怒らせることもあります。王氏は「もし寺の仏が誰かを昇進させたり金持ちにさせたりできるのであれば、昇進しなかった人は仏に対して苦情を入れるでしょう。仏が誰からも敬われて崇拝されるのは、仏が具体的なことを一切しないからです。私たち共産党幹部は仏になることはできません」と例えています。



by Gisling

王氏は「つまるところ、我々の社会では、善人が多数派で、悪人が少数派なのです。有権者の7割から支持されて3割から支持されない人はすでに立派な官僚であり、逆に全員から支持される人は『善人』かもしれませんが、役人としては理想的ではありません」と述べています。

また、「経済発展のために必要なのは『善人』ではなく『いい官僚』です。 我々の分析では、善人はいい官僚ではないということが示されています。私は、国の繁栄のためには善人を役人にさせない方がいいと思います」と王氏は主張しました。