ホームでの勝率は高いと語ったヨルディ・バイス(写真は千葉戦) photo/Getty Images

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 シュートはホームの京都が4本に対して、アウェイの長崎が13本。CKも京都のゼロに対して長崎は8本。内容面でどれだけ長崎が押していたかが分かる。しかし結果は2‐1とホームの京都が競り勝った。昇格の可能性が完全に潰えた京都だが、90分間集中を切らさず最後の一線を守り切ることに成功した。一方の長崎はJ1昇格に絶対に勝たなくてはならない試合だったが、京都の分厚い守備網を突破できず、2位の福岡との勝ち点差は4へと開いてしまった。計算上は福岡が残り4試合の内3勝すれば、どう足掻いても長崎の昇格はない。

 試合前、データだけを見れば長崎に嫌な予感はあった。新設されたサンガスタジアムで京都は滅法強く、過去に徳島、福岡、北九州の上位勢を連破している。あくまでもこれはデータに過ぎないが、結果的には長崎もサンガスタジアムの軍門に下ることになった。

「このサンガスタジアムでは上位チーム相手の勝率が高い。多くのファン、サポーターの後押しを受けながら、そのアドバンテージを活かして勝利することができた」(CBヨルディ・バイス)

 応援と結果に因果関係があるかは分からないが、京都の選手には心理的なアドバンテージがあるのかもしれない。

「アップのときからちょっとフワッとした雰囲気があった」と話したのは長崎のMF秋野。

「このスタジアムでやるのはみんな初めて。専用スタジアムも久々だったので、そういうアウェイの雰囲気に呑まれてしまった」

 試合後の会見で手倉森監督は「悔しい残念な結果。前半がもったいなかった」と話したが、心理面での僅かな綻びが後々重大な結果を生むのだろう。

 試合のキーポイントとなったのは34分の京都の2点目。長崎が京都陣内でボールを繋ごうとしたが、大きく最終ラインを上げていたCB二見が出した横パスを京都のMF仙頭がカット。このままGKとの1対1の勝負に持ち込み、冷静にファーサイドに蹴り込んだ。

「相手のCBが左利きで、あちらに出すことは予測できた。狙っていた。カットできてゴールできたのは良かった。あの時間帯で2点目決めるかどうかで試合の運びは変わるのは理解できていた。魂込めてシュートした」(仙頭)

 まさに言葉通りのプレイだった。京都としては狙い済ました形、逆に長崎からすればこれまでもミスを生んできた守備の問題を解決できずに、またしてもということになる。極論ではなく、勝負事はミスしたほうが負ける。その典型といえるだろう。

 長崎でもうひとつ気になったのはMF大竹を配した右サイドに守備の強度が足りず、脅威とならなかったところだ。特に高い位置でボールを奪うことができず、京都にうまくコントロールされてしまった。後半に入って改善はしたものの(大竹は64分にMFルアンと交代)、もっと早く手を打っておけばいたずらに時間を費やすことはなかっただろう。実際ルアンが69分にこの試合で長崎唯一のゴールを決めている。

「1点に留まったが投入したメンバーが数多くのチャンスを作り、あわやPKというシーンも作り、敵地で相手を攻め立てたという気迫は残りの4試合に必ずつながっていくという話をした。ここにきての敗戦というのは非常に痛いが、なす術なしで負けた訳ではなく、長崎が積み上げてきたものが形となり、どの試合でも表現できているので、自信を失わずにさらなる結束を持って次のゲームに向かいたい」(手倉森監督)

 既に昇格の可能性がなくなったチーム相手に痛恨の敗戦。先行する徳島と福岡の戦いを楽にしてしまっただけに、残り4試合は非常に厳しいものになる。全勝は必須だ。

 一方の京都はタフに戦い、勝利を手にした。ただ本来意図したゲームを支配しての勝利には程遠い内容だった。既に監督の人事について新聞辞令が飛び交っており、ベテラン選手の退団も噂されている。FWウタカ依存のサッカーが昇格争いでは通用しなかったことは明白だ。来季に向けてどのような準備ができるのか。フロントがこの勝利に満足していることだけはないと信じたい。

「ビルドアップの部分で相手のプレッシャーをはがして前に出す作業ができなくては京都はレベルアップできない。常により良くなるように取り組んで行きたい」

 若手のMF福岡の言葉がすべてだ。

文/吉村 憲文