2020年のプロ野球は、ソフトバンクの4年連続日本一で幕を閉じた。開幕が遅れ、交流戦やオールスターも中止になるなど異例の短縮シーズンとなったが、そんな中でもっとも輝いた捕手は誰なのか。現役時代に千葉ロッテマリーンズの正捕手として活躍し、現在はYouTubeチャンネル「Satozaki Channel」でのトークも好評の里崎智也が、独自の基準で今季のナンバーワン捕手を選んだ。


日本シリーズも戦った巨人の大城卓三(左)とソフトバンクの甲斐拓也(右)

――2020年シーズンのプロ野球が終わりましたが、両リーグ含めて、里崎さんから見た今季のナンバーワン捕手は誰になるでしょうか。

「名前を挙げる前にひとつ前置きさせてください。すでにいろんなところで言っているんですけど、僕が捕手を評価する基準は、『打つこと』と『勝つこと』。守備面がまったくダメでもいいわけではないですが、チーム防御率やリードなどは、そのチームの投手の能力による部分が大きいですから」

――以前、スポルティーバの記事でも話されていましたね。それではあらためて、"里崎基準"で選ぶとしたら?

「今季のナンバーワン捕手は巨人の大城(卓三)でしょう。炭谷(銀仁朗)が起用されることもありましたが、93試合に出場して打率.270、9本塁打、41打点は立派です。エース・菅野(智之)の13連勝にも大きく貢献して、チームをリーグ2連覇に導いた。ベストナインに選ばれてもおかしくないと思いますよ」

――セ・リーグで大城選手に続くとしたら?

「ケガでの離脱はありましたが、阪神の梅野(隆太郎:98試合、打率.262、7本塁打、29打点)か......中日の木下(拓哉)も頑張りましたね。中日はしばらく"打てる捕手"が出てきませんでしたが、木下は88試合に出場して、打率.267、6本塁打、32打点と結果を残しました。来季もこれを継続して、さらに飛躍できるかに注目です」

――来季に期待の捕手としては、広島4年目の22歳、坂倉将吾選手も挙げられると思います。正捕手の會澤翼選手がケガなどで戦列を離れることがあった中で、81試合に出場して打率.287と存在感を示しました。

「確かに長打力もあって楽しみな選手だと思います。ただ、『會澤の状態が悪かったから出場数が多かった』で終わらせてほしくないですね。會澤が万全であればいきなりスタメン奪取とはいかないでしょうが、来季はどのくらいの割合で試合に出られるのかに注目したいです」

――日本シリーズの結果を考えると、4年連続で日本一になったソフトバンクの甲斐拓也選手を今季のナンバーワン捕手に思い浮かべるファンも多いと思いますが。

「シーズンを通して試合に出ていましたし、もちろんチームが日本一になったことはすばらしいですよ。でも、僕の基準でいうと打率.211は低すぎる。昨年は打率.260 でしたから、それと比べても打撃面では大きく数字を落とした印象があります。だから、やはり今季のナンバーワンは大城になります」

――甲斐選手が打撃の調子を落とした原因は何が考えられるでしょうか。

「バッティングはタイミングがすべてですから、それがシーズンを通して合わせられなかったんでしょう。打撃では西武の森(友哉)の名前が挙がってくるところでしょうが、今季は苦しみましたね。他の選手であれば、打率.251で9本塁打ならば合格点をあげてもいいでしょうけど、昨季に首位打者(打率.329)を獲得して23本のホームランを打った森の能力からすると寂しく感じます」

――森選手も、やはりタイミングのズレが原因ですか?

「森の場合は、特に前半戦でチームがなかなか勝てなかったことが影響したと思います。守備面で大きな変化があったわけではありません。パスボール数はリーグトップタイの7個ですけど、昨季も12個ですから(笑)。

 それを打撃で十分にカバーできていたのが、今季は調子が上がらずに守備面が注目されるようになってしまった。山川(穂高)など他のバッターのバッティングもよくなかったので、なおさら目立った感があります。岡田(雅利)や柘植(世那)がスタメンに出ることへの焦りもあったでしょうし、悩むことも多かったと思います。すべてがマイナスに働いて、涙する試合があるくらいに追い込まれてしまったんだと思います」

――心理的な影響というと、シーズン終盤でロッテの田村龍弘選手がボールをうしろに逸らしてしまう試合が続いたことが思い浮かびます。いずれもCS進出のために負けられない試合でしたが、やはりプレッシャーがあったのでしょうか。

「あれに関しては単純な技術不足です。技術が高かったら、どんな試合でも体が硬くなったりしません。現役時代の僕もそうでしたし、すべての選手に言えることですが、結局は調子の良し悪しも技術、能力次第ということ。調子を落としている時にも、修正する"能力"が必要になるわけですからね。だから選手たちはそれを高めるために、毎日必死に練習するしかないんですよ」