しまいには、私に『お前もこんな風に成長すればいいなあ』とか、『ちょっとこれ見てみろよ』と際どいシーンを見せて、恥ずかしがったり怒る様子を見て楽しんだりしていました。自分の父親ながら、サイテーな人だなとあきれましたね(笑)」

 けっして笑える話でもなく、「デリカシーがない」という一言では到底片付けられません。ですが取材中、松浦さんは「性的虐待というほど大事(おおごと)ではないと思う」「本当にキモい(気持ち悪い)笑」と笑いながら、自然と父親をかばうような発言を繰り返していました。

◆「お前成長したな」と胸にタッチ

「とくに衝撃的でムカついたのは、中学生になって胸が大きくなりはじめたときのことです。家のこたつでダラダラとテレビを見ていたら、ふいに隣にいた父が『お前いつの間にか胸が大きくなったなあ』とわしづかみされました。

『最低!やめてよ!』と声をあげましたがやっぱり父は謝るわけでもなくニヤニヤと……。お風呂場で服を脱いでいるときもいきなりドアをあけられたり、『生理はきたのか?』と大声で聞いてきたリ。本当に心底デリカシーのかけらもない父親ですよね……(笑)」

 それでも、なんども、なんども「私は虐待というほど大げさなことをされていません」と語る松浦さん。「性的虐待なんて疑ったことがない」「大げさですって〜!(笑)」と言葉を続けますが、はたして本当に笑って済ませられることでしょうか。

◆“親からの性的虐待”を認めたくない、子どもの気持ちと暗い影

 子どもへの性的虐待は、なにも直接体に触れたり行為を行うものだけではありません。子どもに性的な動画や写真などを見せることもまた、“接触しない性的虐待”に当てはまります。

「やっぱり実の父親ですし、正直自分でも虐待という言葉を使いたくないのだと思います。

 でも、学校で性を知識として得る前に、アダルトビデオや漫画などから偏(かたよ)った知識を吸収したせいで、小さい頃から『性的なもの=気持ち悪いもの、やましいもの』という認識が刷り込まれてしまったのも事実です。それに少しだけ、男性が苦手になってしまいました」

 父親の言動に怒りを覚えても、断固としてそれを“虐待行為”とは認めたくないと語る松浦さん。しかし過去の記憶は、今も彼女の心を蝕(むしば)んでいます。

「今も私が女性らしくあればあるほど、父から『よけいに性的な目で見られてしまうんじゃないか』という漠然(ばくぜん)とした不安がぬぐえなくて。そんな目で見られるわけがないのに、おかしいですよね。

 社会人になった今は薄化粧で、ずっとショートカット。服は中性的か、ボーイッシュ。今の私がどれくらい父の影響を受けているか分かりませんが、女性らしい服装をするのはなぜか苦手です」

 スカートを履くことはほとんどなく、常にパンツスタイル。

「本当、デリカシーのない親を持つと大変(笑)」

 そう笑う顔に、どことなく影を感じるような……。無責任な親の言動は、ゆっくりと長い年月をかけ確実に、子どもの心に暗い影を落としているように思えます。

 家族からの性的虐待は外部からの介入が難しいのが実情です。子どもは性被害を受けたと気付かなかったり、気づいても“自分のせいで家族がばらばらになるのではないか”と外に助けを求めることができなくなってしまうことも多いといいます。また、加害者から口止めされたり、子ども本人が悪いことをしているという罪悪感から話すことができない傾向もあります。

「性」について話しづらい、相談しにくい雰囲気が世の中全般にあることや、子どもが性的虐待について告白しても信じてもらえなかったりすることも背景にあるといえるでしょう。この空気を変えることが、苦しむ子どもを減らすために私たち大人が今するべきことなのではないでしょうか。

 また、もしあなたが周囲の子どもから性的虐待被害の告白をされた場合は、問いただしたり、しつこく尋ねたり、内容を言い換えて確認したりなどの干渉はしないでそのまま聴き取り、児童相談所へ知らせるようにしてください。

※参考「性的搾取からの子どもの安全」サイト『子どもへの性的虐待・家庭内性暴力の初期対応手引き 保育所・幼稚園の保育者のために』<文&イラスト/赤山ひかる>