4年前に脳梗塞を発症して右足に軽度の麻痺が残るものの、支援を経て再就職を果たした下川さん。今では週5日フルタイムで働く

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 40〜50代の失業、数値には反映されない“新型”の無職中年が今、増加の一途を辿っている。働きたいけど働けない、そんな新型無職中年が頼れる場所として、自治体による就労支援がある。急増する新型無職中年に対して、どのような支援が行われているのだろうか?

◆対象者の枠を撤廃し就職者増。新たな就労支援の形とは?

 今回、我々が密着したのは静岡県富士市の「ユニバーサル就労支援センター」。就労支援の場は各自治体に存在するが、富士市が画期的なのは、相談から仕事探しまでを一貫して行っている点。通常の就労支援の場では相談や就労のためのトレーニングを受けられるものの、仕事探しはハローワークなど別の機関で行う必要があるのが他の自治体の現状だ。

「障害者支援やひきこもり支援、高齢者支援などの仕組みはありますが、それらの対象外だと従来の法律では支援することができませんでした。とくに40〜50代は支援の枠から外れることがほとんど。そこで、年齢にかかわらず働きたい人たちの相談から就職までを地続きで支援できないかと考え、この事業が始まりました」

 そう語るのは、富士市役所福祉こども部生活支援課の主査である松葉剛哲氏。この日、同センターの就労支援員として勤務する吉田美夏氏のもとに相談者が訪れると聞き、利用者本人の許可も得て、どのようにヒアリングを行っているのか同席させてもらった。

「前職ではうつを発症して退職しました。最近は症状も軽くなったのですが、今度は同居する母親が体調を崩しているため、食事や家事の介助を行いながら働けないかと模索していて……」

 相談者の西野隆さん(仮名・45歳)は富士市内の製紙業で10年以上勤務していたが、長年の激務とストレスによってうつを発症し、3年前に退職したという。そんな事情を、支援員の吉田氏は丁寧かつ親身な態度で聞き進めていく。

「まずは『私たちはあなたの味方ですよ』という意思を示して、不安感や警戒心をなくすところから始めます。その後、ご自身やご家族の状況や、どの程度働きたいのかもヒアリングし、必要だと感じたら『ストレスマネジメント』『模擬面接指導』といった同センターで実施しているセミナーへの参加を勧めます。また、親の介護で困っているなら生活支援課など別の課の職員にも同席してもらい、対応策を考えることも。そうしてひとつずつ課題をクリアしながら就労を目指します」

 西野さんはかつて働いていた製紙業での勤務を希望したが、吉田氏は他の業種もすすめる。

「前職でうつ病になってしまったので、また同様の症状が出てしまうかもしれないという懸念からです。最終的には利用者さんが決めますが、こうした助言は随時させていただきます」

 いざ仕事を探す際も、職場見学や就労体験といった他の自治体にはない段階を踏み、相談者と企業が納得した形での就労ができるまで支援員が相談・助言するという。富士市が施行している「ユニバーサル就労推進条例」により、法的根拠のもと市内の企業に職場体験〜就労の協力を呼びかけやすい点も他の就労支援との大きな違いだ。

◆脳梗塞を克服し社会復帰。「今は人の役に立ちたい」

 こうした就労支援を経て無職状態を脱した人はセンター設立から3年で98人(’20年3月時点)。現在はサービス付き高齢者向け住宅に勤務する下川健一さん(仮名・53歳)もそのひとりだ。

「4年前に脳梗塞で倒れて仕事を続けられなくなり、無職になりました。右足に麻痺が残り、再び社会に出て働くことは到底無理だと諦めていたんですが……生活の相談で訪れた市役所の窓口で同センターを紹介され、支援を受けることになりました」 先ほどの西野さんと同様にまずは面談を受け、セミナーにも参加。職場見学や就労体験を経て、一度は諦めていた再就職を果たしたのはセンターを初めて訪れてから半年後のことだった。