『鬼滅の刃』時透無一郎の性格がガラリと変わったワケ

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―[魂が燃えるメモ/佐々木]―

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第232回

 映画が大ヒット中の『鬼滅の刃』。この作品ではキャラクターの行動理由や判断理由が詳しく描かれています。霞柱の時透無一郎は「刀鍛冶の里編」の序盤では、仲間の刀鍛冶を能なし呼ばわりするような人間でした。それが終盤になると、「俺のために刀を作ってくれてありがとう」と感謝するようになります。

◆なぜ性格は変わったのか?

 彼の性格はなぜ変わったのか。人間は「感動した時に考えたこと」が自分の信念になります。何かを成し遂げたり、性格や習慣を変えたりするには、この信念が必要です。無一郎が持ったのは、「人の役に立つ」という信念です。

 彼の父親は生前に「人のためにすることは、巡り巡って自分のためになる」と教えていました。このことから無一郎は自分に剣の才能があると知った時に、「剣士として役に立ちたい」と考えました。これが彼の信念になるはずでした。

 ところが、無一郎は鬼に襲われ、兄の有一郎を殺されたショックで、こうした過去の記憶を失ってしまいました。そして、この記憶を炭治郎とのやりとりをきっかけに思い出したことで、彼は自分の信念を取り戻し、性格も変化したのです。

◆マインドレコーディングとは?

 信念はテーマ、ヒント、エピソード、フレーズ、アウトプットの5つのステップで気づけるようになります。この仕組みを私は「マインドレコーディング」と呼んでいます。

1.テーマ(望みや悩みの対象)
2.ヒント(体験を思い出す手がかり)
3.エピソード(心を揺さぶられた体験)
4.フレーズ(体験について考えたこと)
5.アウトプット(考えを誰かに話す)

 無一郎の場合、記憶を失っている間はただ鬼を倒すことが目的になっていました。彼のように結果だけを追い求めると、人間はどんどん冷淡になって、周囲との間に軋轢が生じます。こうした段階では、「人のため」がテーマになります。

 このテーマについて、「人のためにすることは、巡り巡って自分のためになる」という炭治郎の言葉をきっかけに、自分の体験と信念を思い出しました。また、鬼殺隊の長である産屋敷耀哉から「ささいなことがきっかけで思い出せるようになる」と事前に言われていたことも、ヒントの一つになっています。

◆アウトプットすることの重要性

 刀鍛冶の里を襲った鬼を倒した後、無一郎は炭治郎に「君のお陰で大切なものを取り戻した」と感謝を伝えます。これがアウトプットです。誰かに話して再確認することで、信念はより一層強くなります。この一件以降、無一郎は「人の役に立つこと」を第一に考え、行動するようになりました。

 人間は何を覚えているか、何を思い出すかで、考え方も習慣も行動も、人生すべてが変わります。鬼滅の刃はフィクションですが、これは現実でも変わりません。

◆本当に大切なのは体験すること

 仕事には「人のため」と「世のため」の2種類があります。「人のため」は、誰かに感謝されるような「質」が判断基準です。一方、「世のため」は、できるだけ多くの人に広まるような「数」が判断基準です。そして、どんな仕事も「人のため」と「世のため」でバランスを考えることが求められます。

 私たちは自分の信念に基づいて、相手や社会を判断しています。人の役に立とうと考えて、誰かに感謝された経験があれば、誰かが自分のためにしてくれたことに対して、自然と感謝の念が湧いてきます。「剣士として人の役に立つ」という信念を思い出した無一郎が、刀鍛冶に感謝するようになるのは、まさに象徴的です。

 無一郎が自分の信念を思い出したのは、「人のため」が自分のテーマになったからです。このように人生には取り組むべきテーマがあります。「人のため」や「人の役に立つ」という言葉は誰でも知っていますが、大切なのは自分で体験して、自分で考えることです。無一郎の境遇はこのことを物語っています。

―[魂が燃えるメモ/佐々木]― 【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中