美容院で目の前に置かれた雑誌を見て「私より読者年齢が上の雑誌を置かれてちょっとショックだった」「私ってこんな風に見えてる?」といった経験のある方も少なくないのではないでしょうか。 

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 そうした美容室での雑誌問題は「あるある」として美容師側も認識していますが、それでも美容師は必ずと言っていいほど、お客様の手元に雑誌を置きます。それはお客様が手持ち無沙汰な時間を作らないためです。しかし、なぜ自分に合わない雑誌が置かれてしまうのか。そこには理由があります。   


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雑誌を用意しているのは誰? 

 美容室でしか雑誌を読む機会がない方は多いようです。手元に置かれた雑誌をたくさん読みたいお客様もいれば、全く興味を示さない方もいらっしゃいますが、美容室では、大体2、3冊置くのが定石。これは雑誌を用意する美容師さんが「あの方には多分これが合うだろう」と思って選んだ2、3冊です。1冊のファッション誌だけだと限定的なので、2冊目以降は少し違うジャンルのものを置くことが多いです。 

 お客様が違和感を感じるのは、主にファッション誌です。出されたファッション誌に違和感を感じるのは出す側が、雑誌の年齢別のファッション志向を把握できていないために起こりがちです。 

 多くの美容師はファッション誌を年齢別、ジャンル別に大枠で把握していますが、ではその手元の雑誌は誰が用意したのか? 

 多くの場合、雑誌の用意はアシスタントの仕事。まだ経験の浅いアシスタントが置いている可能性が高いと言えます。間違った雑誌を置く「あるある」は美容師の間でも周知の事実で、後輩に指導する機会も多い事例です。アシスタントが用意したのでなければ、その担当の美容師さんの勉強不足が原因でしょう。 

 美容師はファッション志向を知るのも勉強のうちです。自分が好きで得意なファッションだけでなく、各世代、各層の好みやライフスタイルの傾向を知らないと、その方に合うヘアスタイルを提案できないのです。 

 ファッション誌の年齢層、印象を振り分けると 

 各ファッション誌にはターゲット層が明確に振り分けられていて、各世代、各層に向けた雑誌が出ています。 

 下の図は男女別の代表的なファッション誌をカテゴライズしたものです。 

 縦軸は「年齢」、横軸は左の「カジュアル/かわいい」「フォーマル/キレイ」の度合いをあらわします。 

 ここではファッションのジャンル(アメカジやモード、ファストファッションやハイブランドといったもの)を省いているため、正確な縮図というよりも、その雑誌のファッションに抱く印象、といったところです。   

ファッション誌のターゲット層を知る方法

 ファッション誌が打ち出しているイメージが顕著にあらわれるのは、表紙を飾るモデルです。モデルはその層にとっての「憧れ」の象徴です。ファッション誌の表紙は、本屋さんやコンビニに並んだ中から手に取ってもらうために、その層に一番響く、「憧れ」るビジュアルが選ばれています。 

 なので誰が表紙を飾るかによって、雑誌のメインターゲットが年齢別、ファッション別にわかります。 

 例えば蛯原友里さんは、20代の頃に『CanCam』がバイブルだった世代の代表格で、今は結婚して5歳の子を持つママ世代として、『Marisol』の表紙を飾っています。 

 また俳優やアイドル、タレントが表紙の場合も、基本的には表紙のモデルと同年代の層に訴求していると言えます。 

 なのでジローラモさんが『MENS NON-NO』の表紙を飾ることはなく、石田ゆり子さんであっても『non-no』の表紙には選ばれません。 

美容室に常備している雑誌とは

 当然ですが、美容室の本棚の容量は限られています。本屋さんの様に全ての雑誌が網羅されている訳ではありません。 

 ファッション誌は年齢別、男女別に合わせて、広く多めに用意していることが多いです。その他にライフスタイル系、食、観光、文芸、カルチャー、スポーツ、芸能の情報誌など、その美容室で扱うことが多い雑誌を厳選しています。   

 なので、美容室の客層によって用意する雑誌も変わります。マンガを置くところもあるし、同じ雑誌を何冊も用意することもありますが、予算の問題もあるため、お店の客層に合わせたラインナップをしています。 

 客層が限定される美容室では、その層以外の雑誌をあまり置きません。例えばおばちゃん美容室に『Seventeen』を置いても、『Seventeen』を読みたいお客様が来なければ経費の無駄使いです。キッズ向けの美容室に『FINEBOYS』を置いても、子どもを連れてきたパパですらそれを開きません。 

 その雑誌を1ヶ月に何人のお客様に出すのか。そのことを考慮に入れると、客層から外れた雑誌は用意しにくく、最低限になります。 

雑誌を置くときに美容師が注意していること 

 僕はトラブルやクレームと言うほどのアクシデントに遭遇したことはないですが、特に気を付けているのは、先述したお客様とターゲットとしている年齢層の違う雑誌を置いてしまうことです。雑誌によっては表紙に『35歳』『40代』など具体的な年齢が書かれていることもあります。 

 また、未婚の方に「ママ雑誌」を置いてしまうこともできるだけ避けています。例えば『VERY』は30代のママ世代に人気の雑誌ですが、「コンサバでキレイ目のファッション誌」として未婚の方にお出ししてしまうと、「私結婚してないし、子供いないし」と思うはずです。 

 なので美容室には、幅広い年齢層にお出しできる雑誌が好まれています。例えばライフスタイルを提案する雑誌は、広い層の女性の悩みに応えていたり、テーブルに置いてあるだけでお洒落な印象を与えてくれます。 

テクノロジーの恩恵…新しい「お悩み解決法」

 最近ではタブレットで雑誌を用意する美容室が増えています。 

 雑誌は場所を取るし、傷んでボロボロになったり、ページの間に挟まった毛を毎回取り払い、ゴミに出すのも重くて大変。そうした美容室側が雑誌に労してきた事を、タブレットは全て取り払ってくれます。 

 それどころかお客様が読みたい雑誌を選ぶため、「それじゃない」雑誌を出される心配もありません。 

 ですが紙媒体はサラッと見て情報を得るには有効ですし、年齢によってはいまだに根強く支持されています。 

 どちらにしても美容師としては置いた雑誌を通して、お客様が新たな発見をしたり、気持ちよく過ごせる時間を提供できれば、それが一番いい事だと思っています。 

(操作イトウ)