自然豊かな田舎となにかと便利な都心。これから住むにはどちらがいいのか。経済評論家の勝間和代氏は「いまは、田舎に行かなくても穏やかな暮らしはできる。都心に近く、なおかつ駅から遠い物件を選ぶのがいい」という――。

※本稿は、勝間和代『自由もお金も手に入る! 勝間式超スローライフ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■長時間労働に代わる「新しい形」の働き方

アフターコロナの時代には「あらゆることがいつでも情勢に合わせて変化する」ことを前提にすべきでしょう。つまり、仕事の仕方も、生活の仕方も、サステイナビリティ(持続可能性)が課題となります。

なぜなら、持続可能な働き方というのは変動に対して耐性を持つ働き方であり、時間的にも収入的にも余裕を十分に保つことができるから。今回の新型コロナのような様々な外的ショックにも耐え得る、ベストな働き方なのです。

長時間労働ありきの旧来型の生活から脱却し、幸せでサスティナブルなライフスタイルに切り替えるために、私は「都市型スローライフ」を提唱します。

これまでの「スローライフ」といえば、「自然豊かな田舎に暮らして、ホームガーデンを耕しながら、年収が低くてもいいから落ち着いた、自然豊かな田舎に暮らして」というようなイメージが強かったと思います。

しかし、私が提唱するスローライフは、それとはだいぶ違います。

現代生活のテクノロジーや利便性を駆使しながらも、忙しすぎる交感神経優位な外界から少し遠ざかり、ある程度資本をかけて装備された自宅を中心に、毎日を幸福度高く暮らす「新しい形」のスローライフなのです。

■通勤しなくなっても都会の近くに住むべき理由

今後もリモートワークが続くとすると、通勤を前提としたオフィス周辺に限らず、より自由度の高い住居の選択肢が可能になります。だからと言って、本当に都会から遠く離れていいのかというと、そうとも言いきれないでしょう。自宅中心に仕事や生活を行うにしても週に1〜2回は外出をして、様々な用件を実行する必要性は出てきます。

例えば、私は定額制の美容室サービス「MEZON」に入っており、複数のいろいろな美容室に行っていますが、やはり銀座や六本木など、都心に近い美容室ほど技術が高いという実感があります。払う金額が同じであれば、より技術が高い方へ通う方がコスパは当然良くなります。

美容院に限らず、飲食や医療施設、文化的施設においても、強豪の激しい地域にある方が、より良い技術やサービスが得られる可能性が高い傾向があることは事実です。

■都会に近く、駅から遠い物件がオススメ

それでは、具体的にこれから住むべき物件とはどんな物件なのでしょうか。

ある程度都会へのアクセスも確保した上で、それなりに利便性が良く、仕事するスペースも確保できるくらいの床面積がある。そのうえで住宅費が高すぎない物件を探すとなると、「駅から遠いけれど駅自体は都心のアクセスが良く、かつ、築年数がある程度立っている物件」というのが現実的です。

毎日の通勤が有る場合には駅から遠いことが負担になりますが、週に数回であれば、そこまで問題にはなりません。むしろ、家賃とのバランスでどのぐらいの広さをどのぐらいの単価で手に入れられるかの方が重要です。

よくスーパーマーケットや大型ショッピングセンターのそばに住むのが良いといわれますが、すでにオンライン環境が整った現代では特に必要はなくなりました。Amazonフレッシュやイオンなどのネットスーパーの配達エリアであれば、大きな問題はないでしょう。

■田舎に住まなくても自然のリラックス効果を得る方法

私たちは自然の中に身を置くとリラックスし、ストレスが減り、様々な機能が活性化されます。だからこそ田舎暮らしを推奨する人も多いのだと思います。

私もそのこと自体は全く否定しませんが、私が推奨するスローライフでは週に数回の都市部における外出や社交が要素にあるため、自然豊かな環境と都心の利便性とのトレードオフが生じます。

それに対する私の解決法は「VRの積極活用」です。「VRで見る自然なんて、まがいものだ」と考えるひとが多いと思いますが、今のVRは大変高精細になっていて、私たちの脳が「本物の自然だ」と勘違いできるレベルまで精度が上がっています。

私たちはお芝居を見ても、映画を見ても実体験と同じように感動できます。それと同じように、VRで見る自然も脳が勘違いして精神に影響するレベルになっているのです。私は自然環境と都市部の利便性を両立する、今のところ一番優れた解決方法だと感じています。

■健康を維持するために労働時間を減らす

都市化型スローライフを実践するうえで次に大切なポイントが、心身ともに健康が維持できる余裕のある生活時間を差し引いた後で、適切な労働時間を割り出すことです。

出所=『自由もお金も手に入る! 勝間式超スローライフ』

1日24時間のうち、健全な心と体を維持できるだけの十分な睡眠時間と食事の時間、運動の時間、そして趣味の時間を天引きすると、働く時間は長くても6時間、できれば4時間ぐらいに抑える必要があることがわかります。

私たちが年中「時間がない!」と感じてしまう理由は、単純に長時間労働のせいです。毎日9時間も10時間も労働し、そこへさらに片道1時間前後の通勤時間が上乗せされてしまったら、十分な睡眠時間はもちろんのこと、食事や運動の時間、ましてやそれ以外の時間を必要十分に取れるわけがありません。

多くの会社勤めの方々と比べると、私はコロナ以前から比較的自宅にいる時間が長く、自炊率も高かったといえます。新型コロナを機会に、さらに徹底して自宅快適ライフを追求したのが、この2020年の初春から夏にかけての半年でした。

その結果、仕事はこれまでと同じ分量か、それ以上の分量でも1日3時間から4時間働けばほぼ終わるようになりました。外で働いていた一昔前と比べて考えると、概ね3時間働けば、以前の2日分ぐらいの仕事ができるイメージです。

家はいつもすっきりと片付いていますし、愛猫のちろちゃんやあおちゃんとも、いつも一緒にいられます。食事は三食とも、健康的な食材を使って作ったおいしいロジカル料理を好きなだけ食べられます。

■リモートワークも自由がなければ意味がない

なぜそんなに早く仕事が終わるのかというと、仕事に必要なすベての要素が、自由だからです。

原則自宅で仕事をしているため、常時強いWi-Fiの中、複数の端末を使いながらの音声入力がしたい放題です。自分にとって一番都合の良い時間に十分な睡眠を取り、適度な運動をしているので、脳のコンディションが常に良く、大体3000字から5000字の原稿が1時間もかからずに終わってしまいます。

スケジュールも、基本的にすべて自分の都合で決められて、自分のために使えます。

日本の企業は従業員に対して、個々の仕事のやり方について工夫することを良しとしない傾向があります。ある程度在宅勤務のような形で、それぞれの機器も自分で自由に選ぶことができ、仕事のやり方も自分で自由にすることができれば、もっともっと生産性は上がるはずです。

実際に、リモートワークを導入して生産性が変わらない、もしくは上がっている企業は、働く人のスピードや働きを妨げない環境を柔軟に取り入れています。

■自由で豊かな生活は簡単に実現できる

長時間通勤、長時間労働をし、しかも密で狭くて、ろくに体を動かせない場所で働いている生活は、あまりにも私たちが望む自然な生活とはかけ離れていました。

勝間和代『自由もお金も手に入る! 勝間式超スローライフ』(KADOKAWA)

とはいえ、これまでのスローライフ=田舎暮らしを実行しようとすると、収入や仕事の幅、都会暮らしの利便性や質をある程度諦めなければできませんでした。

しかし、これだけオンラインが高速化し、VRが普及し、オンラインサービスが隅まで普及した現代においては、10年前には外でしかできなかった働き方や生活の充足を自宅でほぼ全てできるようになりました。

しかもコストは安く、本人の肉体的、精神的な負担も少なく、です。

自宅で穏やかに暮らすということは、本当に驚くぐらい、私たちに幸せをもたらしてくれます。幸せな時間や幸せな生活というのはなかなか貯められませんが、自宅がそのステーション、あるいは貯金箱となって、私たちの幸せを応援してくれるのです。

皆さんはどんな、新しいスローライフを試しますか?

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勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。
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(経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授 勝間 和代)