羽田空港などで見かけることの多い政府専用機、実は2機しかありません。また大型機ゆえに少人数や短距離の運航には向かないことも。そこで航空自衛隊にはビジネスジェットが原型の「準政府専用機」といえる要人空輸機があります。

準政府専用機としても使われる空自のビジネスジェット

 航空自衛隊には、政府首脳や皇族などの要人輸送用として、大型のボーイング777型ジェット旅客機がベースの政府専用機が配備されています。

 しかし政府専用機は2機しかないうえ、大型ゆえに少人数での運航や、短中距離飛行などでは、かえって使いづらい部分もあります。そのような部分を補う形で運用されているのが「U-4多用途支援機」です。


入間基地出発前、ほかの自衛隊基地に向かう隊員を乗せる航空自衛隊のU-4多用途支援機(2020年9月、柘植優介撮影)。

「多用途支援機」とは聞き慣れない名称かもしれませんが、要は何でも屋という意味です。多用途に使え、各種支援のために用いられる機体として命名されたもので、航空自衛隊ではU-4のみに付与されています。そのため人員空輸だけでなく、指揮連絡や軽貨物輸送、訓練支援なども行います。

 そもそもU-4多用途支援機は、アメリカのガルフストリーム社が開発したビジネスジェット機「ガルフストリームIV」をベースに、所要の改造を施した機体です。

 おもな改造としては機体右側面に設けられた大型のカーゴドアでしょう。この開口部はビジネスジェットには必要ないものですが、U-4では人員乗降扉を通せないような大型貨物であってもカーゴドアを開けることで積載できます。

 併せて機内のシートも取り外せるようになっており、通常は2列+1列の座席配置ですが、幾つかのシートを外して、荷物をより多く載せることも可能です。

2個飛行隊にあっても個別の部隊マークを付けないワケ

 U-4多用途支援機は、前出のように汎用性の高い作りになっているものの、要人輸送や指揮連絡などでの運用を考慮して、配備先は東京にほど近い、埼玉県入間基地とされています。

 運用するのは、C-1輸送機などで空輸任務にあたる「第2輸送航空隊第402飛行隊」と、本州中央部の防空を担う中部航空方面隊の司令部を支援するための飛行隊、「中部航空方面隊司令部支援飛行隊」の2個飛行隊です。

 2個飛行隊ともに入間基地をホームとしていますが、U-4の導入機数は全部で5機のため、定期整備やバックアップなどを考慮すると余裕はあまりないといえるでしょう。

 そのため、ほかの航空自衛隊機の場合は、尾翼に所属部隊のマークを描いた機体が多いなかで、U-4多用途支援機はあえて部隊マークではなく航空自衛隊のマークを描いて飛行隊をまたいだ運用をしやすくしています。


尾翼に描かれた航空自衛隊マーク。ほかの航空自衛隊機の場合、ここに部隊ごとの特色あるマークが描かれていることが多い(2020年9月、柘植優介撮影)。

 なお2007(平成19)年には、当時の麻生外相を韓国の済州島へ、翌2008(平成20)年には当時の福田首相が北京オリンピックの開会式に出席するために使い、政府専用機に準じた機体としての役割を全うしています。

 また2011(平成23)年の東日本大震災をはじめとして、天皇皇后両陛下の被災地巡幸などにも何度か用いられているほか、約7000kmという長い航続距離や巡航速度マッハ0.8というスピードを生かして、航空自衛隊トップである航空幕僚長をはじめとした高級幹部の空輸などにも使用されています。

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