鳥インフルエンザの発生を受け防疫作業に当たる関係者(26日、兵庫県淡路市で=兵庫県提供)

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 農水省と兵庫県は25日夜、同県淡路市の養鶏場で、鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。今季10例目で、県内の養鶏場で確認したのは初めて。県は、同日中に採卵鶏約14万6000羽の殺処分を開始。移動・搬出制限区域を設定し、消毒ポイントを設置した。

 県によると、25日午前10時25分に発生農場から通報があり、同日午後0時36分に簡易検査で陽性と判明。農場では開放鶏舎9棟のうち1棟で、13羽が死んでいた。午後9時に県内の家畜保健衛生所でH5亜型と確認し疑似患畜と判定した。

 発生農場の半径3キロ圏内の移動制限区域内には養鶏場がないが、半径3〜10キロの搬出制限区域には7戸が約1万羽を飼育する。

 県は発生農場周辺の主要道路に7カ所の消毒ポイントを設け、拡大防止対策を始めた。

発生農家 「まさか…」肩落とす


 県内の養鶏場で見つかるのは初めて。発生農場の経営者は感染を疑い迅速に通報したが、「まさか発生するとは」と肩を落とす。県内は渡り鳥が集まりやすいため池の数が全国で最も多いため、関係者は警戒を強めている。

 「通報時は半信半疑だったが、まさか発生するとは思わなかった」。発生農場の経営者の男性は26日、日本農業新聞の電話取材に応じ、こう漏らした。

 異常が見つかったのは25日午前。男性の農場では複数の鶏舎で14万6000羽を飼養しているが、そのうち1棟で隣り合う籠で集中して死んだ鶏が見つかった。死んだのは13羽で通常と変わらなかったが、近隣の香川で鳥インフルエンザが多発しているため、万が一を考えて家畜保健衛生所に通報したという。

 結果的に悪い予感は的中した。正午すぎには、家保の簡易検査で陽性を確認。夜には遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜と判定され、午後10時半から殺処分が始まった。24時間態勢で作業を進めており、県職員が常時100人態勢で臨む他、知事の災害派遣要請を受けた自衛隊員約300人も作業に当たる。

 兵庫県養鶏協会は「今回の事例では通報が早かったため、迅速な対応が可能となった」と指摘する。

 同県は渡り鳥が集まりやすいため池が全国最多なだけに、関係者は警戒感を強めている。

 JA全農兵庫は26日、高病原性鳥インフルエンザ対策本部(対策本部長=石塚博己全農兵庫県本部長)を立ち上げた。行政などと連携して、情報収集や県内JAへの情報提供に当たる。担当者は「これ以上広がらないようにしたい」と強調する。

 「播州百日どり」など肉用鶏の独自ブランドを持つ同県のJAみのりは、防疫対策を強化する。管内に100超ある鶏舎を対象に、金網や防鳥ネットを設置。JA経済部の長谷川貴浩部長は「野生動物対策に万全を期したい」と話す。