なぜ日本に中国製EV導入? 小型EVトラックは物流業界に革命を起こすのか

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日本初!公道走行間近の中国製EVトラック登場!

 日本の物流業界では、小型EVの市場投入が進んでいます。日本郵便は、三菱「ミニキャブ・ミーブ バン」、ヤマト運輸では小型商用EVトラックを共に2020年度内に実践配備を進めています。
 
 そんななか、中国製小型EVトラックが2020年内に国土交通省から認可を受けて日本の公道を初めて走行するといいます。この中国製小型EVトラックとは、どのようなクルマなのでしょうか。

中国製小型EVトラック「メトロ」。物流業界に変化をもたらすか

 静岡県の朝霧高原にある「あさぎりフードパーク」で2020年11月15日、「Japan EV Meetup」が開催されました。
 
 さまざまなメーカーのEV計124台が集まり、そのなかの企業ブースにはひときわ注目を集めるEVトラックが登場しました。

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 当日、出展した企業ブースのなかで来場者の注目を集めていたのは、日本初上陸の小型EVトラックとなるHWエレクトロ社の「エレモ」です。

 手がけたのはHWエレクトロ社でエレモは約2年前の2019年1月開催の東京オートサロンで、タイヤメーカーのグッドライドブースに展示されていました。

 当初は日本導入の計画もなく、単にグッドライドのタイヤを純正採用する車として展示したとのことです。

 ちなみに、グッドライドは中国・杭州に本拠地を構える中策ゴムのタイヤブランドで、2018年には世界のタイヤメーカーランキングで8位にランクインも果たした世界的タイヤブランドです。

 しかし、予想に反して来場者からの反響が大きく、日本への正規導入が検討されるようになり、HWエレクトロ社のエレモは元々はセントロ(CENNTRO、容大智造)という中国のEVメーカーが製造・販売する「メトロ」というモデルで、オートサロン出展時は中国名のまま。日本導入に際して日本独自の会社名と車名が与えられました。

 日本導入までの経緯をHWエレクトロ社の代表で、タイヤブランドのグッドライドジャパンのトップも務める蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)氏に話を聞いてみました。

「導入したいという声は東京オートサロンに出品したときからいただいていました。

 既にいくつかの会社や団体から問い合わせがあり、キッチンカーの用途や地方自治体の公用車としての用途が主のようでした。

 当時の個体は左ハンドルでIoT連携用のSIMカードを挿入するスペースなども未調整でした。

 日本仕様は右ハンドルで4ナンバーの小型貨物自動車として登録されます。2020年中にはナンバープレートが取り付けられる予定です」

 現状、日本での小型商用EVは三菱の『ミニキャブ・ミーブ』か、ヤマト運輸も導入したDHLの子会社であるストリートスクーターのモデルにとどまっています。

 ストリートスクーターとの大きな違いはやはり価格と耐久性にあると見ています。

 ストリートスクーターは1台800万円以上で導入コストが非常に高額ですが、エレモはミニキャブ・ミーブと同価格帯の200万円台。予算が限られている小さな会社でも導入がしやすいでしょう」

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 実際に、中国製の小型商用EVを日本で走らせるには手探り状態だったといいます。

 通常、グローバルで販売されるクルマは自動車技術基準となるECE(ECE Regulation)という加盟(定められた基準に適合)していますが、中国はそのネットワークに入ってないので、日本で認可を得るのにはひとつひとつの部品が基準に達しているかを調べる必要がありました。

 なお日本で初めて認可を受けた中国製商用EVはBYDオートという会社のEVバスです。2015年に京都の路線バス会社(プリンセスライン)に納入されたのを皮切りに全国各地で導入が進み、2020年には羽田空港での実証実験用に、上野動物園でもシャトルバスとしての利用が始まっています。

 今回のメトロは、小型EVトラックとして初となり、前述のように部品をひとつひとつ確認したうえで、国土交通省が認可することになったといいます。

「現在、国土交通省と協議しており、最終段階まで来ているところです。

 最終の書類を提出して、それの回答待ちの状態です。基本的に追加書類が増えるだけで、ダメとか、やり直しというのはありません。

 日本はEVが進んでいないので、各省庁もあまりわからなく、たらい回しだったのが大変でした」(前出: 蕭偉城氏)

 海外製商用車は日本の過酷な気象環境(高温多湿で積雪地域も多い)や、都市部の渋滞などハードな使用状況に耐え切れない場合も多いようですが、エレモは1年間日本でテストして耐久性も確証されました。

 また、エレモの販売はコスト削減のためディーラー店舗を設けない形式でおこわれます。

 サポートも通常のクルマと変わらない体制を整える予定で、自動車整備振興会との連携でサポート拠点を全国で2万箇所以上を用意する予定です。

 バッテリーの保証も3年保証が標準となりますがオプションで5年保証に延長することが可能。

 2021年4月には予約を開始し、7月頃からエレモの納車をおこなっていき、2021年だけで350台から500台を販売したいといいます。

 今後、2021年から2022年の2年間はCENNTROから輸入した車両の販売・点検をメインの業務とし、2022年後半からはより多くのニーズに対応するためにHWエレクトロ独自の小型EV商用車を展開していく計画です。

日本の物流に変化をもたらす存在になる? エレモの魅力とは

 エレモがほかの商用EVにない強みとして、車体形状の自由度が挙げられます。

 同価格帯のミニキャブがライトバン形状のみなのに対し、エレモは荷台スペースを持つトラックボディです。

 筆者(加藤ヒロト)も展示車のエレモに乗ってみましたが、全長3910mm、全幅1400mm前後で見た目はとてもコンパクトなのですがキャビン内は意外にも広々していました。

 大人2人が乗り込んでも窮屈ではなく、シートはリクライニングも可能です。足元スペースも確保されており、車内での移動も楽におこなえます。

 頭上には収納スペースもセットされ、コンパクトながらも上に広いキャビンスペースを余すこと無く活用している設計です。身長187センチの筆者が乗り込んでも高さと足元スペースはちょうど良いという印象を受けました。

 ボディタイプはフラットベッド(全幅1376mm)、アルミ平ボディ(全幅1440mm)、そして荷室ボックス搭載のボックスタイプ(全幅1400mm)を予定しています。

 配送トラック仕様や、キッチンカーなどの移動販売車、土木作業用の資材運搬車、アミューズメントパークなどでの人員輸送車、地方自治体などが所有する散水車や消防車など、その自由度の高さのためにさまざまな用途での使用が可能となります。

 室内装備も充実しており、欧州仕様にはないエアコンも日本仕様では装備されています。

 ダッシュボードの中心部には走行距離やバッテリー情報、速度、アンペア数、モーター回転数などを表示するディスプレイがセットされており、普通の車と同じ位置にオーディオ関係の操作を行うタッチディスプレイも取り付けられています。

中国製小型EVトラック「メトロ」。室内は日本仕様になっている。

 ドアは一見薄く見えますが、開閉してみるとわかるその質感の高さには驚かされました。

 ドアミラーの調整や窓ガラスの開閉は手動となっていますがコンパクトなボディなのでそれほどのストレスは感じないでしょう。

 車体のシャシは元マグナシュタイア(オーストリア)のエンジニアが設計しており、バッテリーなどの駆動系もすべてシャシー底面に配置されています。

 車台自体がヨーロッパの狭い路地などでも難なく使えるような設計となっているため、小回りの効きが重要となる日本での運用にも問題なさそうです。

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 HWエレクトロでは航続距離の異なるグレードを2種類用意し、基本となるボディタイプも3種類を展開する予定。

 満充電・空荷時で120キロ走る「ELEMO120」は予約価格199万から220万円、200キロ走る「ELEMO200」は予約価格250万から271万円で展開されます。