「チョコモナカジャンボ」と「バニラモナカジャンボ」(写真:森永製菓

「コロナ禍で消費生活が大きく変わった」

「“巣ごもり消費”で食品が好調」

最近こうした話もよく紹介されるが、食品の中には、この10年で1.3倍に伸びて5000億円規模となった「アイスクリーム」市場(※)がある。特に全国各地の小売店で買える「家庭用アイス」は100円程度の商品が多く、手軽なおやつとして消費者の人気が高い。

※家庭用と業務用のアイスクリーム・氷菓のメーカー出荷額。日本アイスクリーム協会調べ。

その業界平均を大きく上回るのが、森永製菓の「チョコモナカジャンボ」だ。1972年発売の“アラフィフ”ブランドで、単品では売り上げ首位。19年連続で売り上げ拡大が続く。

今回は、伸び率では業界随一の姉妹ブランド「バニラモナカジャンボ」(2011年エリア限定、2012年全国発売)と合わせて「モナカジャンボ」と呼び、好調な秘訣や消費者意識を探ってみた。

アイスを「朝」や「日中」に買う人が増えた

「コロナ禍の影響は日本中が外出自粛となった今年4月から数字に表れました。アイス業界は“マルチパック特需”が起き、今年4〜7月の市場全体は対前年比約102.9%(インテージデータ)。『チョコモナカジャンボ』『バニラモナカジャンボ』はさらに好調です」

「モナカジャンボ」(同社社内ではジャンボグループと呼ぶ)を担当する村田あづささん(森永製菓 マーケティング本部 冷菓マーケティング部)はこう説明する。

ちなみに「マルチパック」とは複数の個数が紙箱や袋に入ったもの。これは想像つくだろうが、単品は業界で「ノベルティー」と呼ばれる。

「マルチパックの伸びは、例えば小学生のお子さんがいる家庭なら、外出自粛期にご両親がリモートワークとなり、子どもも通学できない『家族で在宅』が続いたからだと思います。

それだけでなく、購入時間帯にも変化が出ていました」

どういうことか。

「これまで目立たなかった『9時〜11時』『13時〜14時』に買う人が増え、逆に19時以降は減ったのです。喫食シーンも変わりました。コロナ以前は帰宅後に食べることが多かったのが、在宅勤務で仕事中の“ながら食べアイス”をする人も増えています」(村田さん)


外出自粛期の東京都内「コンビニのアイス売り場」(2020年5月、筆者撮影)

自宅ならオンライン通信をしない時は“上司や同僚の目”からも解放される。通勤して職場で一緒に執務――では難しかった「息抜きアイス」となっているようだ。

「実は『バニラモナカジャンボ』がすごく伸びています。昨年11月から今年2月までは対前年比で200%超え。暖冬だったのもありますが、看板商品の『チョコモナカジャンボ』のシェアを食うカニバリ現象もなく、ブランド全体に上乗せされています」(同)

「チョコモナカ」は長年、関ジャニ∞を起用したテレビCMでも人気だ。「バニラモナカ」でもCM訴求を始めたが、2019年には「冬限定品」を投入。アイスの無脂乳固形分を高めて「ミルクのコクアップ」と表示した。


マーケティングを担当する村田あづささん。かつては「ハイチュウ」も担当した(筆者撮影)

「SNS中心に徐々に話題を呼び、あまり買わなかった世代の10代と20代男女に支持されるようになりました。バニラはアイスの王道フレーバーで、みんなに好まれる味。アイスの種類別ではバニラジャンボが『アイスクリーム』、チョコジャンボは『アイスミルク』とすみ分けています」

勢いに乗って今年も打ち出し、チョコジャンボでは「冬限定 今だけチョコ増量」も発売。センターに入るチョコが15%増量となっている。ちなみに中に入るチョコは板チョコではなく、液体を流し込み固めたもの。「喫食時の口溶け」にこだわった結果だという。

冬にアイスが売れるのは、「暖冬」や「メーカーの創意工夫」に加えて、「暖かい室内で冷たいアイスを味わう」消費者の存在もある。寒い北陸地方でのアイス消費も多いのだ。

昨年、石川県七尾市を取材した際、「能登地方は高齢者が多く昔ながらの家屋も多い。暖房は今も石油ストーブが中心で、ファンヒーターを併用する家も目立つ」とも聞いた。


「アイス消費量」が多い石川県金沢市(写真左)と七尾市のアイス売り場(2019年11月、筆者撮影)

アイスの嗜好は人それぞれだが、一般的な傾向として、冬のアイスは濃厚な味が好まれる。逆に、夏はさっぱり系が人気だ。だが最近は、そうした消費鉄則が崩れてきた。消費者の変化として合わせて紹介しよう。

「モナカアイスだけでなく、この夏は『板チョコアイス』が8月でも売れました。ベルギー産チョコレートを用いてバニラアイスをはさんだ、パキッと割って食べるアイスです。秋冬の期間限定だったのを通年販売にしたのですが、予想を上回る売れ行きでした」(同)

「夏もチョコが食べたい」という消費者の声に応えたという。その取り組みが突き刺さり、ツイッターで「板チョコアイス発売されている……うれしすぎる……」の書き込みもあった。


「板チョコアイス」は盛夏でも売れた(写真:森永製菓)

実は、以前の取材時に「好調」と聞いたので、この夏は何度か板チョコアイスを買い、関係者と試食した。取扱店も増え、都内の大手ドラッグストアでは常備されるようになった。

「いくつかの店舗でテストマーケティングを行い、好評だったので通年販売に踏み切った」と聞くが、社内でも議論があったという。

長年、企業やブランドを取材するので、ヒット商品の裏の「抵抗感」はよく耳にしてきた。10年以上前、ウイスキー復活となった「ハイボール」訴求では、それまでおいしいとされた黄金比率(濃さ)を薄めることへの抵抗があった。別の家庭品メーカーでは、簡易な掃除道具を発売する時に「当社が道具に手を出すと成功しない」という反対意見も聞いた。

常に「新たな挑戦」が正しいわけではないが、向き合う相手は「現在の消費者」なのだ。

「上乗せ」派と「そのまま」派

モナカアイスの話に戻ろう。今のところ「チョコモナカ」と「バニラモナカ」はうまくすみ分けができている。その理由を、「上乗せ」派と「そのまま」派の視点で考えたい。

消費者に「好きなアイス」を聞くと、この2タイプにも分かれる。前者には外側をチョコで包んだ競合品もあり、バニラアイスにチョコをはさんだ「チョコモナカ」も上乗せとして楽しめる。「同じ代金なら少しトクした気分」ともいえよう。

一方、後者は「余計なモノはなくて純粋に味を楽しみたい」という人。バニラならバニラ、チョコならチョコを楽しみたい派だ。ただし、両者は固執するのではなく、時にはその日の気分で「上乗せ⇔そのまま」が変わる(ことが多い)。

また、時代とともに「消費者は変化する」のはその通りだが、一方で「人間の本質はそんなに変わらない」とも思う。

特にアイスの好みは保守的で、好きなフレーバーの順位はいつの時代も「バニラが首位」。ブランド全体では1の「エッセルスーパーカップ」(明治)は、同ブランドの2位フレーバーを大きく引き離し「超バニラ」が売れるという。

家庭用アイスの上位ブランドはロングセラーがほとんどだ。各人気ブランドを、子ども時代から親しんできた中高年や若手世代がそれぞれ楽しむ――という構図が続く。その構図を崩してきたのが、全国発売して8年の「バニラモナカジャンボ」だ。


2020年秋冬向けの限定パッケージ(写真:森永製菓)

「モナカのアイス」に手が伸びる理由

「なぜ、ヒトは『モナカのアイス』が食べたくなるのでしょうか」

取材の途中で、あえて森永製菓に聞いてみた。

「消費者の方からは『食べやすいじゃない』という声も多いですね。開けてかじるだけ。手も汚れにくい。割って食べられるので、最初に食べたい分だけ割って、残りは冷凍庫にしまっておける。カップアイスではできない利便性だと思います」(村田さん)

手が汚れにくいのは、“ながら食べ”派には便利だ。特に、現在のながら食べは「スマホをいじりながら」が多い。

あくまで仮説だが、日本の消費者がモナカを好むのは、和菓子の最中(もなか)になじんだDNA(遺伝子)もあるのではないか。

日本のアイスクリーム発祥地は、明治初めの横浜だと聞く。この時、ウエハースの代わりに最中が使われたという説もある。江戸時代から和菓子の最中になじんでいたので自然に受け入れられたのかもしれない。

「コロナ収入減」とも言われる世知辛い時代。消費に対する目はますます厳しくなるだろう。手軽な癒しや気分転換として一般のスイーツよりも割安感があり、冷凍庫での保存がきくアイスの優位性は高まりそうだ。

かつて「成熟市場でもできることがある」という言葉を聞き、時に思い返しながら企画や取材をしてきた。成熟商品のアイスが「巣ごもりの冬」に何が支持されるのか注視したい。