不倫相手の「ちょーだい」に従ったら大後悔したプレゼント

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本記事は『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』の一部を抜粋したものです。

二人の関係は終わったが…

《トラブル事例1》

食品の卸販売を手がける六道物産の六道雄二社長は、愛人に株式の一部を譲渡した。愛人である美和子の願いに、あまり深く考えもせず譲り渡してしまったのだ。渡したのは発行済株式数の3%強なので経営に支障はないと考えていたが、数年後には後悔することとなった。

(※写真はイメージです/PIXTA)

今までのことを悔い改め、関係を清算した六道社長は、彼女に渡した株式のことが心配になっていた。二人の関係は終わったが、会社の株式はうやむやになったまま、美和子が持っていたからだ。

美和子は社長との関係を維持したいという気持ちから株式を要求しただけで、事業には全く興味を持っていなかった。そのため、別れてしまえば美和子にとって株式は持っていても仕方のないものになっていった。

しかし、別れ際の身勝手な対応に腹が立っていた彼女は、六道社長とは話をするもの嫌に思い、会社に株式の買い取りの話を持ちかけることにした。後継者である子供から「なぜうちの株式を持っている?」と問い詰められたため、六道社長との愛人関係を暴露。家族はもちろん従業員にまで知られてしまい、やり手の創業社長と評価されていた六道社長の評判は地に落ちてしまった。

愛人が名義株の所有者だったケース

株式は絶対に信頼できる人にしか預けない

株式は経営権と直結するものです。過半数、あるいは3分の2以上を握っていれば問題ないと考えがちですが、少数株を持っている株主にもさまざまな権利があります。《トラブル事例1》では愛人の持分は3%強ということですから、下記の権利の大半を行使できることになります。

株主総会招集請求権(100分の3以上の株式を保有)

一定の理由を示した上で、株主総会を招集するよう会社側に請求する権利

株主提案権議案通知請求権(100分の1以上もしくは300個以上の議決権を保有)

一定の事柄について株主総会で取り上げるよう請求する権利。またそのことについて他の株主に知らせるよう請求する権利

株主総会の招集手続等に関する検査役の選任請求権(100分の1以上の株式を保有)

株主総会の招集に先立ち、総会招集の手続きや議決の方法などを調査する検査役の選任を裁判所に請求する権利

会計帳簿閲覧請求権(100分の3以上の株式を保有)

会計帳簿の閲覧や謄写を請求する権利

業務の執行に関する検査役の選任請求権(100分の3以上の株式を保有)

会社業務の中に法令や定款に違反する行為があると疑われる時、検査役の選任を裁判所に請求する権利

役員解任の訴え(100分の3以上の株式を保有)

不法、不正、定款に違反する行為をした役員の解任が株主総会で否決された時に、解任を裁判所に請求する権利

会社解散の訴え(100分の10以上の株式を保有)

会社の存続が難しいなどやむを得ない事情がある時、会社の解散を裁判所に請求する権利

株主総会を招集されたり、業務の執行に関する検査役の選任を請求されたり、役員解任や会社解散を訴えられたりしたら愛人の存在が知れ渡り、振り回されている姿を世間にさらすことになってしまいます。

従業員が知れば真面目に働く意欲が低下しモラルハザードが起きるかもしれません。取引先や銀行からの目が厳しくなることで、さまざまな弊害が発生することも考えられます。これを防ぐにはまず、「自社株は絶対的に信頼できる人にしか渡さない」という基本を守ることが重要です。とはいえ、すでに渡してしまっている場合には、とにかく一日も早く回収するしかありません。

《トラブル事例1》のように社長との関係が終わってしまえば、愛人にとって株式は無意味な財産です。最後は何らかの処分を考えることでしょう。やはり、話し合いができるときに解消しておくことが賢明です。

社長が個人的なお金ほしさに株を発行していたケース

《トラブル事例2》

七尾精機を経営する七尾俊行社長は、仕事の付き合いと言って顧客や従業員と飲み歩くのが好きだった。

ところがある時、大判振る舞いをしてしまったため、かなり高額な飲食の請求が後日会社に届いたことがあった。そのことが経理を担当していた妻に発覚して以来、スナック通いや遊びに使うお金が制限されているのが悩みの種だった。

そんな七尾社長はある時「新株を発行して誰かに引き受けてもらったお金を使えばいいのでは?」と思いつく。七尾精機の株式は後継者にする予定の娘婿に10%ほど持たせている他は、自分が全部握っている。発行株式の10%程度なら決議への影響もほとんどないので問題はないはずと考えたのだ。

あちこちに声をかけてみたところ、付き合いのある企業が手を上げてくれた。七尾社長は早速、新株を発行して200万円ほどで引き受けてもらい、スナック通いなどの遊びの資金を手に入れた。もちろん新株を発行したことは妻や家族には秘密だ。

そのうちに七尾社長自身も忘れてしまい、誰にもその事実を告げることなく数年後に亡くなった。取引先にとっては七尾社長が亡くなってしまえば、個人的なお付き合いの意味がなくなるため七尾精機の株式を持っている理由はない。資金繰りに余裕がなくなってきたこともあり、後継社長である娘婿に連絡して、買い取ってほしいと伝えることにした。

こうして、七尾社長の隠しごとが発覚。それまで創業社長として尊敬されていた七尾社長は一転、妻や家族、従業員から「なんと身勝手な人だったのか」とあきれられてしまうこととなった。

勝手に新株を発行するのは「会社法違反」

通常の経営者なら当然ご存知のことと思いますが、新株を発行するための手続きは会社法で細かく定められています。非公開株の場合は株主総会の「特別決議」が必要です。

そのため《トラブル事例2》のようなケースでは新株発行自体が無効とされてしまうこともあります。社長の中にも意外に軽く考えている人が多いのですが、違法な資本政策に基づく株式発行を行うと金融機関などからの信用を失ってしまいます。

信用を損なうと以降の取引に当たってかなりの制約を受けることがあり、経営面で大きなダメージとなります。また、勝手に発行した新株が無効とならなかった場合でも、《トラブル事例2》のように後で買い取りを打診されることも考えられます。相続対策を実行する時には買い戻して回収しておくようにしましょう。