中国・内モンゴル自治区通遼の学校に戻った生徒ら。新カリキュラムに反対し、約1週間にわたって学校をボイコットした(2020年9月10日撮影)。(c)NOEL CELIS / AFP

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【AFP=時事】内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)では、標準中国語での教育の義務化に対し、住民らは当局に激しく抗議し、子どもたちは学校をボイコットした──。しかし、私服警官の厳しい目が光るなかで学校に戻る息子の姿に、中国の少数民モンゴル族の父親は敗北感でいっぱいだった。

 匿名を希望した父親は、「(抵抗の)精神はまだあるが、われわれは恐怖を感じている」と語る。目の前には、1週間に及ぶボイコットが終わり、自治区通遼(Tongliao)市にある中等教育校に、重い荷物を抱えて戻る子どもたちの姿があった。この父親は、標準語教育によってモンゴル族の文化が抹消されてしまうことを恐れているのだ。

 中国北部に広がる内モンゴル自治区での8月末からの抗議デモやボイコットには数万人が参加し、地元当局が発表した標準中国語で教育を行うというカリキュラムの変更に反対を訴えた。

 同自治区での抗議デモはまれだ。しかしそのデモは、同国が過去数十年で経験したなかでは最大規模となった。

 抗議の後、政府による取り締まりが始まった。装甲車両がデモの拠点となった通遼市内に展開し、複数の学校を包囲した。

 住民の約半数がモンゴル民族である通遼市での弾圧は、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)やチベット(Tibet)自治区における中国政府の動きに呼応する。どちらの地域でも、少数民族を多数派の漢民族に同化させることを目指す政策が遂行されている。 文化的アイデンティティーを打ち出すことによって、国家とイデオロギーを統一しようという習近平(Xi Jinping)国家主席のビジョンだ。

 当局は、子どもを学校へ送り出すことを拒否する親たちには、解雇や罰金、そして子どもの退学という脅しをちらつかせ、ある地域では、復学するよう他の生徒らを説得した子どもたちへの金銭の提供を申し出た。

 内モンゴル自治区滞在中、AFPの記者らは政府当局者と正体不明の男らに尾行された。このことで取材対象者は神経質になり、記事に名前がでることを不安がった。

■「受け入れられない」

 新たなカリキュラムが通知されたのは、9月の新学期が始まる直前だった。変更は、二つの言語を併用する自治区内全ての寄宿学校で、標準中国語の授業を第1学年から始めることが義務付けられた。開始時期が1年前倒しとなるかたちだ。

 歴史、政治、そして文学も、モンゴル語ではなく標準中国語で教えることが必要となった。

「これは受け入れられない」と前出の父親は述べる。

「いま7〜8歳の子どもたちは、10年または20年のうちに自分たちの言語で祖父母と話せなくなるだろう」

 8月には、中国で利用できた唯一のモンゴル語SNSアプリ「Bainuu」が当局によって使用が禁じられた。

 11月になってもそのアプリは使用できない状態だ。オンライン上のやりとりは警察によって監視され、大多数の子どもたちは学校に戻された。

 AFPは、9月に通遼市在住のある男性から話を聞いた。この男性は、地元警察からの脅迫が続くなか、自宅で子どもの勉強を見ていると話していた。

「私の子どもの考え方はまだ伝統的なモンゴル人のままだ。(標準中国語教育を実施する)学校環境に行けば、子どもらはモンゴル人のアイデンティティーを失うだろう」

 米ニューヨークに拠点を置く南モンゴル人権情報センター(Southern Mongolian Human Rights Information Center)のトゴチョグ・エンフバト(Enghebatu Togochog)代表は、カリキュラムの変更は「モンゴルの言語、文化、アイデンティティーを一掃する」という中国の決意を示すものだと指摘する。

「モンゴル族の人々は言語を失うことを本当に嫌がっている。もし失えば、全てを無くすことになるからだ」

【翻訳編集】AFPBB News

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