大人女子が「100均のコスメ」を買いまくる必然

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セリアやダイソーなどの100均コスメが注目を集めています。写真は、ダイソーのU R GLAM(写真:ダイソー提供)

100円ショップの化粧品が人気だ。SNSでは口コミや情報が飛び交い、100円コスメだけでフルメイクを行うYouTuberの動画も多くの視聴を集める。その人気ぶりにメディアも特集を組むほどだが、なぜここまで注目を浴びているのか。

とくにSNSで話題となったのが、ダイソーが2019年から販売するブランド「U R GLAM SEXY AND HEALTHY MAKEUP (ユーアーグラム セクシーアンドヘルシーメイクアップ、以下U R GLAM)」だ。

製販元のドゥ・ベストと共に開発したブランドで、ダイソーで専売している。大創産業の広報の後藤晃一氏はこの開発経緯について「ダイソー全体でお客様の化粧品に関するニーズが高まっていた。『U R GLAM』を立ち上げたことで、化粧品の売り上げも好調を維持している」と語る。

手軽にトレンドを試せる


ブルーミングアイカラーパレット(写真:ダイソー提供)

「U R GLAM」は「クール&シャープで大人なイメージのメイクアップ」というコンセプトで、他ブランドとの差別化も図ろうとしている。

ブランドを担当する土居沙織・化粧品担当バイヤーによると、ターゲット層は10〜20代だ。

しかし実際にはさらに上の年齢層による口コミ投稿も多い。これまで学生向けと見られてきた格安コスメが、大人世代にも受け入れられているのだ。

人気の理由は主に3つあるようだ。

理由1:安くトレンド商品を試したいというニーズ

土居氏によると、製品はさまざまな点でこだわりを持って作られた。「粉質、発色といった品質はもちろん、ラインナップの展開の多さや、高見えするパッケージにこだわった。またお客様の声をはじめ、世界のトレンドなども意識した幅広い視野でアイデアを取り入れるとともに、実用性を兼ねた商品開発を行っている」(土居氏)。

製品はカラーメイクからツールに至るまで幅広く、とくに人気の高い「ブルーミングアイカラーパレットシリーズ」は100円でありながら9色のアイシャドウがセットされたパレットだ。

こういった多色をセレクトするアイシャドウパレットは世界的に人気が高く、韓国やアメリカの製品でも多く開発されているが、1000円を切る商品は少ない。土居氏は「チャレンジしやすい価格と豊富なカラーで、少しでもメイクを通して楽しさを提供したい」と語る。

理由2:口コミによる人気の拡大

100円ショップのコスメブランド名が有名になること自体が珍しいが、ダイソーでは大規模なプロモーションは行わず、SNSや消費者間の口コミを通じて人気が伸びていったという。

「U R GLAM」のもう1つの人気商品に「スリムスケッチアイブロウペンシル」がある。この製品も目立つ宣伝があったわけではないが、SNSや口コミサイト内での好評が拡散され、メディア掲載が相次ぐ商品に成長した。


オーロラアイシャドウ(写真:ダイソー提供)

またアイシャドウは製品レビューが多いアイテムだが、その理由として土居氏は「偏光パールやラメ入り製品が人気となっているが、動画メディアが増えたことも一因なのではないか」と考察する。

さらにダイソーでは来店するたび新しい商品に出会ってもらうため、高頻度で新商品をリリースしているという。

こういった取り組みも、リピーターを獲得するだけでなく、口コミも増やし続けられる理由だろう。

理由3:低価格で高品質をかなえる流通と大量仕入れ

また、3400店以上の店舗に卸す大量仕入れ、運搬までを含めた商品販売に関わるすべての関係者との綿密なやりとりもコスパの良さの要因だという。

30代以上向けの高級路線シリーズも

今年6月には、新コスメシリーズ「U R GLAM LUXE (ユーアーグラム リュクス)」をローンチした。これは300円ショップの「THREEPPY(スリーピー)」「Plus Heart(プラスハート)」「CouCou(クゥクゥ)」などで展開する、30代以上向けの高級路線のシリーズで、商品によっては700円で販売するものもある。

ただ、実際には30代以下の消費者も多いようだ。「ダイソーの中に『TREEPPY』があることから、『U R GLAM』のユーザーが『U R GLAM LUXE』も手に取ってくれるようになり、想定していなかった若い世代のファンも増えている」。

SNSでは100円の「U R GLAM」の質に満足した消費者が、新シリーズにも期待を寄せて、SNSで拡散する動きも徐々にみられているようだ。

100円ショップコスメの人気はダイソーだけではない。同じく100円ショップのセリアでも、その需要の高まりを感じているという。同社の商品部の担当バイヤーである田海氏は「お客様の『トレンドをプチプライスで試したい』というニーズに応えられる商品企画を行っている」と語る。

そのため世界のトレンドアイテムが参考となるケースが多く「水で膨らむ3Dパフ」や「涙袋用アイシャドウ」などをいち早く商品化したという。

また最近ではネイル製品に注力している。特に新型コロナ禍のステイホームでネイルサロンに通うことができず、自宅で楽しむ機会が増えたことで消費者の関心も高まっているようだ。

「韓国で流行している『貼るジェルネイルシール』は、爪に貼るだけで複雑なデザインネイルが楽しめる人気商品の1つ。また街のネイルサロンで施術すれば数千円かかるジェルネイルも『筆付きのポリッシュタイプで使いやすい』と好評の声をいただく。定番カラーからトレンドカラー、ラメ入りカラーなどラインナップも豊富に販売している」(田海氏)。

ネイルをするなら「セリア」を目指す

またジェルネイルにはパーツやスティックなどの用具も必需品で、そういった製品もメーカーと共同開発を行っており、「『ネイルをするならセリア』を目指している」という。

これらの人気も、やはりSNSが火付け役だ。「SNSの話題により、同じ商品を探しに来店されるお客様もいらっしゃる。とくに100円ショップにはテスターなどのサンプルがないので、使用感のイメージを確認するツールのひとつにもなっているようだ」(田海氏)。

低価格コスメへの支出は今後も増えるかもしれない。アットコスメが10月に行った化粧品とライフスタイルに関する調査によると、新型コロナの影響により、メイクへの支出が「とても減った」または「減った」と答えた人は全回答の53.7%にも上った。

一方でメイクへの関心が減ったと答えた人よりも、関心が増えたと答える人のほうが多いという調査結果も示されている。消費者はSNSを通じた情報収集でより賢い買い物を行っているが、これからは低価格の商品が受け入れられるようになることで、化粧品全体の価格競争も激化するかもしれない。100均ショップのコスメも、より他社との差別化が必要になってくるだろう。