明神氏は、随所でメキシコの技術が発揮され、じわじわと日本を侵食してきたという。写真:龍フェルケル

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 結果もそうですし、両者の間にあった実力差がボディーブローのように90分間響いて、終わってみれば0−2。やはり、今の段階ではメキシコとの実力差が、これだけあるのだなというのが正直な感想です。技術、したたかさ、ゲーム運び。もちろん局面でファイトするところのスピリットもそうですし、改めてメキシコは良いチームだなと思いました。

 まずは1対1の戦いでボールを取られない。ただ単に相手が突破してくるという場面の1対1だけではなくて、中盤でボールをキープしながら、簡単にボールを下げないプレーであったり、相手にプレッシャーを受けていてもそれをプレッシャーと感じるか、感じないかという落ち着きであったり。ボールを取られずにキープするところはする、それを奪われずに前へと運んでいく。そうした球際でのプレーの質の差を感じました。

 それでも、前半に関しては正直日本の方が良かったと思います。立ち上がり10分くらいまではメキシコも良くて、日本はなかなか形を作れませんでしたが、10分過ぎから30分くらいまでは日本が主導権を握って形を作っていましたし、ボールを保持することも出来ていました。

 特に、27分のシーンでは、攻撃面において目指す形が作れていたと思います。ディフェンスラインから何本かパスを繋ぎながら、最後は伊東純也選手がグラウンダーのラストパスを出し、中の選手には合いませんでしたが、中盤からもゴール前に選手が押し寄せていく、良い展開でした。

 出来ている部分、流れの中でチャンスを作れている部分はありましたから、それを続けて回数を増やしていければ、さらに良くなるのではないでしょうか。
 
 守備面でも2失点しましたが、全てが悪いというわけではありませんでした。ただし、もちろん修正点はあります。

 失点シーンでも、吉田麻也選手が触って、ボールには対応しているけど、全て相手にボールがこぼれてしまう。悪いディフェンスをしているわけではないのに、崩されたという程ではないのに、相手ボールになってしまうという本当に嫌な流れがありました。

 技術で上回る相手に対して、後半運動量が落ちてきて、徐々に一人ひとりの相手ボールへのプレッシャーがかかりにくくなったり、そこをかわされるようになっていった時に、どうやって耐えるのか。またはどうやって流れを切るのかということが問われます。

 結果論として言えば、プレーに変化をつける方法があっても良かったと思います。

 流れを持ってくるには、自分たちのサッカーを貫くという方法もありますが、逆に、自分たちのやりたいことではなくても、駆け引きとして相手にペースを譲り渡さないやり方もあったはずです。例えば、大きくボールを蹴ってラインを上げるとか、前線に入ったときに上手くファウルをもらうとか、苦しい時に丁寧にボールを繋ぐだけではなく、頭を使った“ずる賢い”というか、プレーの変化で陣地を回復する必要もあったのかもしれません。
 
 やっている選手たちももちろん苦しい時間だというのは分かっていたと思いますし、ベンチからもそういう指示が出ていたと思いますから、そのなかで、チームがどうするのか。

 意思統一して今は全員で引いて守ろうということでも良いと思いますし、相手のディフェンスラインの裏にボールを落として全体で一度ラインを上げようというやり方でも良いと思います。そこでチームとしてどう振る舞うのかという部分こそが、吉田選手も以前から言っているような「修正力」として発揮したかったところではないでしょうか。守れていることにプラスして、さらに流れを持って来られるようなディフェンスが積み上げられれば、さらに結果につながりやすくなるでしょう。

 今後は3月のワールドカップ予選が再開されるまで、だいぶ期間も空きます。選手個々のレベルアップはもちろん求められるでしょうが、それと同時に、代表の活動期間が短いですから、即興でも味方の良さを引き出せる頭の良さ、ボールを扱う部分以外のインテリジェンスがより求められるのかなと感じます。
 
 今までのように直前合宿、親善試合を経てグループワークを高めて、本番のワールドカップ予選へ、というステップが踏めない場合も想定されるなか、トレーニングで実際に取れたコミュニケーションが、今後は頭の中だけで構築して本番に臨まなければならない場合もあるでしょう。

 自分が選手時代に思っていたよりも、サッカーに関して頭を使うということが必要になってきていると感じます。

【著者プロフィール】
明神智和(みょうじん・ともかず)/1978年1月24日、兵庫県出身。シドニー五輪や日韓W杯でも活躍したMF。黄金の中盤を形成したG大阪では2014年の国内3冠をはじめ数々のタイトル獲得に貢献。現在はガンバ大阪ジュニアユースコーチとして活躍中。