イスラエルのスタートアップ企業Novetoの共同設立者のひとりであるトマー・シャニ氏。(Photo by Annika Grah/picture-alliance/dpa/ AP Images)

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ヘッドホンを使わない未来がすぐそこまで来ているらしい。イスラエルのテック会社Novetoが開発した商標登録済みのデバイス「SoundBeamingテクノロジー」は、身体に内蔵チップを埋め込むわけではなく、ユーザーの耳の周りに直接音を届けるという新技術が搭載されている。

テクノロジー業界の革新者たちは、従来のヘッドホンを使わないプライベートなリスニング体験を誰よりも先に実現し、世間を魅了しようと月日を費やしてきた。2016年、ソニーの研究開発プログラム「Future Lab」のチームは、小型サラウンドスピーカーを搭載した、未来のネックレスのような「Concept N」という製品とともにこの挑戦に挑んだ。Zungleをはじめとするサングラスブランドは、耳に直接音を届ける骨伝導技術を採用し、イーロン・マスクが所有するNeuralinkは、チップのような電子機器を文字通り脳に埋め込む技術を開発中だと報じられている。そして今週、この競争に新たな挑戦者が加わった。

イスラエルのペタフ・ティクヴァを拠点に置くNovetoは、現地時間11月13日に「SoundBeamer 1.0」スピーカーと銘打った計画を発表した。上述の製品と異なり、このコンセプトには、身に付けられる装置は一切存在しない。このコンセプトの目的は、デスクトップテクノロジーやその他の固定式装置に取って代わるものなのだ。両耳の位置を特定し、超音波を送る3Dセンサーモジュールを搭載したSoundBeamer 1.0は、通常であればヘッドホンがある空間に360度式の音の小さなバブルを形成する。ここで注目したいのは、こうした音のバブルが外の音を完全に遮断しないという点だ。そしてこれは、Novetaが意図的に行っていることなのだ。「ホッドホンによる社会的な孤立には、大反対です」と同社の元CEO、ブライアン・ウァラス氏は、同社がまだ発展途上段階にあった2018年に米CNBCに語った。

Noveto曰く、オフィスでこのデバイスを使用すれば、ヘッドホンをかけずに音楽を再生することができ、電話や「質問があるんだけど」と背後から近づいてくる同僚に気づかない、なんてこともない。その一方、テレワークやビデオ会議のときは、スピーカーにつきものの反響効果をカットできる。サイクリングマシンで運動しているとき--ワークアウト中の音を周囲に知られたくないとき--汗でイヤホンが取れそうだ、という場面の解決策にもなり得る。友人たちと長距離ドライブに出かけ、各自が思い思いの音楽を聴きたいときなんかも、不協和音なしにこうしたことが実現可能だ。それに何よりも魅力的なのは、ゲーマーがNovetoのスピーカーを使えば、つけ心地の悪いヘッドギアをかぶらなくても、極めて没入感の高いオーディオ体験に集中できる点だ。

しかしながら、このスピーカーは比較的重く、持ち運びに最適な製品とは言い難いという主な欠点もある。SoundBeamerと一緒に地下鉄に乗る、あるいは屋外をランニングする、というわけにはいかないだろう。入手しやすくなった暁には、どれくらい人気を博すかを判断するのは難しい。だがいまのところNovetoは、同製品を2021年12月の一般向けリリースを予定している。