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不倫が報じられていた歌手の近藤真彦さんが無期限の芸能活動自粛処分となった。ジャニーズ事務所が11月17日付で、公式サイトで発表した。

近藤さんは「週刊文春」(11月12日発売)で、25歳年下の女性との不倫を報じられていた。ジャニーズ事務所によると、近藤さんはこの女性との交際を事実と認め、「一連の出来事に対する責任を取り、芸能活動を自粛したい」と申し出た。

事務所側はこの申し出に対して、「最年長である近藤の処分として当然の結論」として受け入れ、今回の処分に至ったという。

とはいえ、不倫はあくまで私的な問題であるはずだ。また、「自粛」という処分は何を意味するのか。不倫という私的な行為を理由に処分することに法的な問題はないのだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。

●「自粛処分」はあまり見かけない表現

――「自粛」の意味からしても、「自粛処分」というのは違和感があります。

「自粛処分」というのは一般的な表現ではありませんし、会社の就業規則でもあまり見かけない表現です。

――法的にはどう解釈されるのでしょうか。

近藤さんがジャニーズ事務所に雇用されていたことを前提に検討します。

自粛という表現ではあっても、タレントが事務所に逆らいにくい関係があること、タレントとしても不本意ながら自粛という形を取らざるを得ない場合もありうることを考慮すると、基本的には通常の「懲戒処分」と同様の処分と考えるべきです。

今回の自粛処分も、就業規則上、そのような処分をすることができるという根拠がある場合にだけ、就業規則に規定された手続きに沿ってのみ行うことができることになります。

なお、仮に業務委託契約の関係だったとすると、近藤さんの同意を得て、事務所が芸能活動自粛をさせることに法的な問題はないと思います。

●「無期限の芸能活動自粛という処分内容は厳しすぎる」

――今回の処分は不倫に対するペナルティとして課されています。

そもそもタレントは会社の家来ではありません。一般の会社員でも、私生活上の活動を理由とした懲戒処分は原則として許されないはずです。

タレントの場合には、事務所との契約内容によっては、私生活上の不祥事やトラブルがあった際に契約解除などを含めた条項があるかもしれません。

過去の裁判例では、私生活上の活動であっても企業の社会的評価を毀損するおそれがあるような場合等については、懲戒の対象となるとされてきました。

――処分は妥当といえるのでしょうか。

不倫によって近藤さんがCMに出演している企業等に迷惑をかけることになり、それが事務所の営業にも悪影響を及ぼす可能性があること、近藤さんが事務所の最年長であること、不倫が広く報道されたことは懲戒処分を認める方向に働く事情です。

CMや出演番組との契約書には「人気が落ちる行為をするな」という内容の条項が含まれることも珍しくなく、その点では近藤さんの規約違反はあったのかもしれません。

とはいえ、社外の人との不倫であることも踏まえると、無期限の芸能活動自粛という近藤さんへの処分は重すぎるものであり、その効力には疑問があります。

【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:さいとうゆたか法律事務所
事務所URL:https://www.saitoyutaka.com/