「今はまだ結婚の予定はないけれど、将来、子どもは欲しいと思うんで卵子凍結を考えています。20代で卵子凍結するのは早すぎるでしょうか。デメリットになることはないですか? また、どこで卵子凍結するのがベストでしょうか。貯金は今、100万円ぐらいあります」(Mさん/26歳、食品メーカー勤務)というご質問をいただきました。

20代の卵子凍結について、認定不妊カウンセラーの笛吹和代さんに聞きました。(前回はこちら)

成功率100%というわけではない

若いうちの卵子凍結。将来への保険という意味で、私はとても賢明なお金の使い方だと思っています。

ただはじめに理解しておいていただきたいのは、卵子凍結することが必ずしも100%、妊娠に結びつくわけではないということです。クリニックで問題なく採卵し、凍結できても、すべての卵子が元に戻るとは限りません。また、実際に受精させるときには、お相手の精子との相性というものがあり、何らかの理由で受精卵にならないこともあり得ます。

最近、若いうちに凍結しておいた卵子を40代になってから受精卵にして戻すという話も、よく聞かれるようになりました。その場合、お相手も40代以降であれば、精子の質の低下も考えられます。ご自身、40代となれば体力的な問題もないとは言い切れません。産婦人科学会は「凍結した卵子を戻すのは45歳までが望ましい」としています。「卵子凍結してあるから、いつでも妊娠できる」ものでもないことを、どうぞ忘れずに。

もう1点、注意事項があります。日本では精子バンクは使えないということです。結果的にお相手が見つからず、年齢的なタイムリミットが迫ってきたというときに精子バンクに頼ろうと思っても、日本では非合法です。「精子バンクを使う可能性が高いわ」と思う方は、今からしっかり法律や海外の精子バンク事情について調べておきましょう。

長くつきあえる保管先の選び方

卵子凍結をするクリニックは十分、時間をかけて吟味しましょう。なぜならあなたはまだ20代、保管期間は5年か10年かわかりませんが、長〜いおつきあいになる可能性が高いからです。

まずは信頼できる実績のあるクリニックを探しましょう。次のようなチェックポイントがあります。

□電源バックアップ体制が備わっているか

災害などで大規模停電が起きたとき、バックアップ電源がなければ冷凍が止まってしまいます。この点、「停電が起きたときのバックアップ体制はどのようになっていますか?」とハッキリ聞いてください。「大丈夫ですよ」と言われるだけでは安心できませんので、実際にどんな設備を備えているのか見せてもらえるか交渉してもいいでしょう。

□経営状態が安定しているか

クリニックも企業です。経営状態が安定しているかどうかは重要です。長いつきあいになることを考えれば、途中で倒産されては困ります。料金はかかりますが、民間の信用調査会社に依頼して調べてみる価値はあります。

□洪水、土砂災害のハザードマップの確認

近年、洪水災害や土砂災害が毎年のようにどこかで起きています。今まで起きていなかった地域が被災するニュースをよく耳にします。ハザードマップを確認し、可能なかぎり、洪水や土砂崩れ、津波の被害などを避けられる場所にあるクリニックを選びましょう。

以上のチェック項目を満たすクリニックというと、現実的には、すでに実績のあるクリニックになるかと思います。けっこう面倒に思われるかもしれませんが、こうしたチェック項目をひとつひとつじっくり調べられるのも、若いうちの特権だと思いますよ。

保管先クリニック選びは慎重にも慎重を期してソンはありません。

■プロフィール

妊活の賢人 笛吹和代

働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。