成人なのに“犯罪少年”では、「厳罰化」の看板が泣く(写真はイメージ)

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 新聞に「厳罰化」の見出しが躍った少年法改正議論がまとまった折も折、少女に売春を強要したとして18歳少年が大阪府警に逮捕された。しかし、大人顔負けの罪を犯したこの少年は法改正後も「実名報道」の対象とはならないという。

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「18歳、19歳が民法で成人となるのなら、大人と同様の責任をとるべきです」

 と語るのは、「少年犯罪被害当事者の会」の武るり子代表。24年前、16歳少年に長男を暴行されて亡くした「当事者」である。

 先月29日、武代表も部会委員を務める、法相の諮問機関・法制審議会が、少年法改正に向け上川陽子法相に答申した。

 答申で注目されたのは、2022年に成年年齢が18歳に引き下げられる改正民法の施行を控える中、少年法の適用年齢も18歳未満に引き下げるかどうか、だった。

成人なのに“犯罪少年”では、「厳罰化」の看板が泣く(写真はイメージ)

 結局、答申では適用年齢は20歳未満のままで、18、19歳について、

〈家裁から検察に逆送する範囲を、殺人などに加え、強制性交など1年以上の懲役・禁錮刑の罪に拡大〉

 とし、刑事裁判の対象を広げた上で、

〈実名報道は検察の起訴後、解禁する〉

 旨が記され、玉虫色の決着となった。

 中央大学名誉教授の藤本哲也氏は異論を唱える。

「18歳と19歳は選挙権も与えられるのに、彼らは少年法の対象として保護されることに。世界を見渡しても刑事法上、18歳以上を成人とするのが主流です。これで国民の理解を得られるのでしょうか」

 先の武代表も、

「加害少年は、処分が軽く済み、名前が報じられないといった少年法を知った上で犯行に及んでいることが多い。少年法の適用年齢が引き下げられなかったことは残念の一言です。私は答申要綱に賛成しましたが、議論は平行線で、どこかで折り合いをつけねばなりませんでした」

 と苦衷を語る。

 そこへ発覚したのは、18歳少年による売春強要事件である。先月5日、無職の18歳少年が複数の少女に売春行為をさせたとして、児童福祉法と売春防止法違反の容疑で大阪府警に逮捕されたのだ。

「ヤクザがいる」

 府警関係者が言う。

「少年は15歳の元カノや彼女を通じて知り合った中学生らを、大阪府庁の元課長や元中学教諭らにSNSを通じてあてがっていました。ホテルなどで売春行為をさせ、得た報酬は少女と折半。総額で60万円は報酬を得たと見られ、少年はその半分、30万円を懐に入れていたことになります」

 さらに少女を「俺の後ろにはヤクザがいる」と脅すなど、少年とは思えない手練手管を弄していた。

 当然ながら、今回警察発表で少年の素性は明かされず、また、このケースの法定刑の下限は罰金刑。すると、

「少年法が改正されても原則、検察への逆送にはなりません」(法務省担当記者)

 すなわち、少年は実名報道の対象にもならないのだ。

「人の命を奪っていなくても、何人もの少女に売春させた悪質な犯罪だと思います。悪いことをしたら人一倍努力して更生しなくてはならない。逆送したり、名前を報じたりして、教育をした上で本人に事の重大さを分からせるべきではないでしょうか」(武代表)

 成人なのに“犯罪少年”では、「厳罰化」の看板が泣く。むしろ、国民や被害者に対する「欺瞞」と言えるのではないか。

「週刊新潮」2020年11月12日号 掲載