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先日と違って 日産CEO、真剣な面持ち

text:Kenji Momota(桃田健史)

登壇した日産の内田誠社長は、あの時とは違う真剣な表情で会見に臨んだ。

あの時とは「フェアレディZプロトタイプ」と一緒だった時である。9月16日のオンライン世界発表の時であり、また日産自動車追浜試験場「グランドライブ」(神奈川県横須賀市夏島1番地)で自らステアリングを握って走った時である。

日産ノート(現行型)    日産

今回も、次期Z(Z35)に関して、何か新しいコメントがあるかもしれないと期待したZユーザーはいたかもしれない。

だが、日産の事業は回復傾向が見えてきたものの、未だに収支は赤字だ。

11月12日午後5時から始まった、2020年度上期決算説明会で主要財務指標が公表された。

それによると、20年度上期の売上高は3兆0927億円。前年同期にでは1兆9104億円の減少となった。

営業利益は316億円から1904億円の減少となり、1588億円の赤字となった。

原因は当然、新型コロナウイルス感染拡大の世界的な影響である。

ただし、グローバル市場では2020年4月を底に自動需要はV字回復を続けており、そうした市場基調に日産も他メーカーと同じく乗っている。

そのため、20年度第2四半期は第1四半期に比べて、売上高は1兆1742億円から1.6倍増の1兆9185億円まで回復している。

こうした状況で、新型モデルが続々と登場している。

米では新型ローグ好調 先進性を想起

内田社長は「6つのキーモデル」という表現を使った。

生産事業の視点では、日本は軽自動車「ルークス」、日本とアメリカでミドルサイズSUVの「ローグ」、メキシコでコンパクトカーの「セントラ」、タイ等で日本にも輸出されている「キックスeパワー」、タイでピックアップトラックの「ナバラ」、そしてインドで新興国向けコンパクトSUVの「マグナイト」である。

日産ローグ    日産

また、コアマーケット(主力市場)として、アメリカ、中国、そして日本における各モデルの活躍ぶりを紹介した。

まず、アメリカでは「セントラ」と「ローグ」だ。

「セントラ」については、競合他車と比較して、残存価値が逆転。リセールバリュー(下取り価格)が上がり、今後はセントラから他の日産車への新車買い替えがスムーズ進みそうだ。

ローグについては、ユーザーや各メディアから高い評価を受けていると説明し、アメリカ国内で流れているテレビCMを紹介した。

次いで中国では、「アルティマ」や「エクストレイル」を筆頭に自動運転技術を使った高度運転支援システム「プロパイロット2.0」の装着率が過去1年間で3倍以上伸びた。

またコネクテッド関連での装着車が昨年から倍増し2020年だけで250万台を超えるなど、日産の先進的なブランドイメージが広まっている。

では、日本はどうか?

内田社長は自信「A to Z は順調だ」

ルークスが日産の軽全体を大きくけん引している。また、キックスeパワーの新車効果が大きく、車齢が長いモデルが多い日産の登録車モデルの中で目立つ存在となっている。

次世代技術についても各分野で大きく伸びた。

日産キックスeパワー    日産

日産コネクテッドの契約数は1年前から一気に伸びて、20年度第2四半期だけで6000件に達した。また、プロパイロットの装着率は全日産車のうち31%とこちらも伸びが大きい。

さらに、シェアリングサービスの「eシェアモビ」の契約数も20年度で1万6500件と昨年比でグンっと伸びているのだ。

では、今後の新車導入の流れはどうなるのか?

内田社長は「A to Z は順調だ」と自信に満ちた表情を見せた。

「A to Z」とは、2020年5月に公表した日産の事業立て直し計画「日産ネクスト」の中で明らかにした、2021年度中に市場導入する12モデル新車攻勢のことだ。

具体的には、2020年度上期には、キックスeパワー。2020年度下期には、アメリカでローグ、インドなどでマグナイトを発売済み。

さらに日本で「まったく新しいコンパクトモデルを出す」と、内田社長は胸を張る。

これは、新型「ノート」を指す。年内に発表する。

この「まったく新しい」とはどういう意味か?

日産エクストレイルの新型はいつ?

プラットフォーム刷新、という意味での「まったく新しい」となるだろう。

ノートはeパワーを搭載したことで、一躍トップモデルへの大化けしプリウスやアクアを凌ぐ売上を記録してきた。

日産ノート(現行型)    日産

だが、プラットフォームの設計の古さから、トヨタのTNGAやダイハツのDNGAと比べてしまい、乗り心地やハンドリングの改善を求める声は販売店やユーザーから定常的に聞こえていた。

新型プラットフォーム採用によって、ノートeパワーは再び、登録車ナンバーワンの座を狙う。

直近10月では、登録車の販売トップ6をトヨタ車が独占している状況。そこに新型ノートが風穴を開けそうだ。

その先となる、2021年度には、EVの「アリア」、ピックアップトラックの「フロンティア」、SUVのインフィニティ「QX56」と「QX60」、オフロード系SUVの「パスファインダー」、「フェアレディZ」、コンパクトSUVの「キャッシュカイ」、そして「バン」と表記された商用車らしきクルマがある。

ここで気になるのが、名前が登場していない「エクストレイル」だ。日産としてはローグとしてカウントしている。

日本登場は2021年初めから中頃など、メディアによって予想はまちまち。

日産としては、まずは新型ノートで登録車市場ナンバーワンの座を奪還し、日産復活のイメージを後ろ盾に、エクストレイル導入の流れを作りたいところだ。