43歳でMBAを取得しましたが、転職回数が11回と多く、書類選考でほぼすべて不採用になってしまいます(写真:freeangle/PIXTA)

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44歳男性です。転職回数が11回と多く、書類選考でほぼすべて不採用になってしまいます。転職の理由は家庭の事情や会社都合がほとんどなのですが、書類だけで判断されるので先に進むことができません。有名私立大学を卒業し、43歳でMBAを取得し、仕事に本気で取り組みたいと考えているのに、日々暮らしていくこともままなりません。

おそらくコネで入れてもらうか、学歴は関係なく、自分のやりたいこととは違う職に就くべきなのかもしれません。しかし、それはなかなか受け入れがたく苦しんでいます。希望の職としては従来関わった広報関係です。

無職 山田

職歴書や志望動機書の大事な構成要素は3つ

書類の段階で前に進めないとのことですが、問題なのは転職回数ではなく、転職の理由と年齢からみた山田さんの経験とスキルでしょう。


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書類で判断される。これは採用における第1関門としては極めて普通のことですから、そこを嘆いても仕方がありません。

採用する側からすると非常に多くの、場合によっては1つのポストに数千の応募があるわけですから、全員と面談するわけにもいきませんので、書類によってまずは「あたり」をつけるわけです。

そのうえで面談となるわけですが、応募者として大事なことは印象に残る「強い」職歴書や志望動機書を作成できるか否か、です。

「強い」の構成要素は言うまでもなく、やってきたことやできることといった「実績」、その背景にある本人のキャリア観や将来観などの「思考」、そして書き方・見せ方としての「プレゼン力」です。

このすべてのバランスが大事であり、3つの構成要素を高めることで採用の第1関門をくぐれる可能性も高まるというものです。

ですから、山田さんとしても考えるべきはその構成要素のうち何が足りないのか、またそれぞれの構成要素の内容はしっかりしているか、です。

書類選考という第1関門をくぐれない理由として、転職回数が多い、ということのみを上げておられますが、本当にそうでしょうか?

例えば転職の理由を「家庭の事情」そして「会社都合」と書かれていますが、その部分だけを取り出すと山田さんご本人には責任はないが、周りの事情で転職せざるをえなかった自分、という思考になってしまっているように見受けられます。本当は違うのかもしれませんが、その理由だけを聞いてしまうとちょっと他責な気がしますので、自らの主体性が求められる40代のキャリア観としては疑問がついてしまう可能性が高いです。

また43歳でMBAを取得とありますが、その取得を通じて何を狙っていたのかは明確ですか?

ご存じのようにMBA取得者は毎年非常に数多くおり、その価値もデフレ気味であり本当のトップ校以外は卒業そのものに価値はありませんし、評価されることはありません。そもそも評価される業界や業種とそうでない業界や業種があります。

今までの経験やスキルとの相乗効果または補完効果を発揮できるタイミングと内容であることと、全体のキャリアストーリーの中でMBAがその一部をきれいに構成していることで初めてその価値は評価されるのです。

ですから、MBA取得の背景とその理由が大事なのであり、言葉はなんですが一発逆転のために行きました的な発想では評価されようがありません。

MBAを持ってます、ではなく「こういった理由で取得しました。その結果これができるようになりました」、そういった整合性の取れたストーリーが大切なのです。MBAは魔法の杖ではなく、単なる学位であり、あくまでもご自身のキャリア上のアイデンティティーを構成する一要素にすぎませんから、全体とのバランスが大切なのです。

行動の背景にある思考がより問われるのが40代

ですから、山田さんは広報関係の仕事に携わってきたとのことですから、その分野においてご自身として横展開できる、つまり会社が変わっても通用する経験とスキルは何かをまずは棚卸ししましょう。アピールするべき自分の武器は何か、まずはそれが大事です(前述の3つの構成要素の1つめ)。

そのうえで、ご自身のキャリア観としてなぜ今転職なのか、なぜMBAを取得したのか、それにはどんな意味があるのか、今までの転職を通じてご自身はどんな成長を遂げてきたのか、そのうえで将来は何がしたいのか、そういったご自身のキャリア観や思考を整理しましょう(3つの構成要素の2つめ)。

そして、最後にそれらをどう書類に記載し、アピールするかを考えるべきです(3つの構成要素の3つめ)。

書類に通らない理由を転職回数と決めつけ、さらに転職理由を他責に求めてしまうようではこの先前に進むことはできません。

成功はまだできていないかもしれないが、人生自分で責任を持って、自分の意志で進んできた。まずはそう言い切れることが大事です。

山田さんが仮に採用する側だとしたら、同じ求職者でもできない原因を他人に求める方と自分の信念と覚悟を持って前に進もうとしている方、どっちが魅力的に思いますか?

「今まで何をしてきたか」「今までどう歩んできたか」も大事ですが、この先前に進むにあたっては、「この先どう歩んでいくか」も大事です。

40代であれば、本来周りを引っ張る立場であり、周りの相談にも乗ってあげるべき立場です。

だからこそ、より「自分はどう生きるか」が大切なのです。行動の背景にある思考がより問われる年代だとも言えます。

山田さんが今までのキャリアを整理し、そのうえで今後どう歩みたいかを明確にし、その道をご自身のペースで進まれることを応援しております。

【2020年12月2日18時30分追記】関係者のプライバシーに配慮して記事の一部を修正しました。