去年1月、神奈川県横浜市。

この町に住む小学4年生の彩は3学期の始業式を控えていた。
久しぶりの学校で友達に会えるのを楽しみにしていたのだが…ある異変が彼女を襲う。
風呂上りに突然、彩のまぶたは赤く腫れあがり激しい痛みが!さらに体が痙攣し呼吸困難に陥った!

すぐに救急病院へ。
診断の結果、アナフィラキシーショックを引き起こしたとみられる。
彩は病院で処置を受け、何とか症状は落ち着いた。

この日はこのまま帰宅し、何のアレルギーなのかを調べる検査は後日行う事になった。
専門医の予約は4日後…その間に何かあっては大変とアレルギーの事を必死に調べる母。
そこで、何を食べたかを思い出して原因を特定しようとノートに書いた。

ところが、予期せぬことが起きる!
テレビゲームで遊んでいた彩は何か特別に食べたわけでもないのに突如顔が赤く腫れたのだ。その時はすぐに症状が落ち着いたが、今度は宿題の漢字を書いていると…腕に蕁麻疹の症状が現れた。

そして、兄の部屋に行こうと階段を上っただけで全身に蕁麻疹が!
幸い、呼吸困難などの激しい症状が出ることはなかったが…母はいつ、何が起きるかわからず、気の抜けない状態が続いていた。

そして、ようやく専門医の予約の日…彩は検査入院をすることになった。
まず血液検査の他に母が書いたノートを元に食べ物の検査を行ったが…反応はない。

次に行ったのは皮内テストという検査。
皮内テストとは、可能性のあるアレルゲンを皮膚に入れ反応を見る検査なのだが…実はこのとき医師は、発症前の彩の行動からあるアレルギーを疑っていた!

そして、ついにアレルギーの正体が明らかになる!
なんと彩は、自分の汗にアレルギー反応を示していたのだ。

無汗症なのに汗アレルギーという謎

ゲームをして興奮した時や、風呂に入って温まった時に症状が出ていたのはそのせいだった。
しかも、鉛筆を握ったり階段を上り下りする際のわずかな汗にさえ反応していた!

そしてこのアレルギーにより、コリン性蕁麻疹を発症していたというのだ。
コリン性蕁麻疹とは、運動や入浴さらに精神的緊張などにより、発汗することで出る蕁麻疹。
通常の蕁麻疹は痒みを伴うのだが、コリン性蕁麻疹の場合、痒みに加え痛みを伴う事が多い。

医師によると、まだこの病気についての特効薬はないという。
現状できるのは痒みを引き起こすヒスタミンを薬で抑えて症状を和らげるか、減感作療法という治療方法だった。

減感作療法とは患者のアレルゲンを少しずつ体内に入れ徐々に慣らしていくことで、それに対する過敏な反応を減らす治療法。
コリン性蕁麻疹に比較的有効とされている。

すぐに、彩の汗を回収し、治療を始めようとしたのだが…ここで、驚くべき事が判明する。
なぜか、運動しても汗が出ていないことが判明したのだ。

ここで、医師が疑ったのは特発性後天性全身性無汗症というものだった。
これは運動した時や暑くて湿度が高い環境にいても汗をかけない難病。

人は、汗をかくことにより体温を調整しているのだが
無汗症の人の場合はそれが出来ない為、熱中症を容易に発症しやすく、発熱やめまい、さらに意識障害などの症状が出る事がある。
それは、コリン性蕁麻疹の患者に時々見られるという。

すぐに検査したところ、やはり彩はこの無汗症だと判明した。
とはいえ、汗が出ない彩が汗アレルギーとはいったいどういうことなのか?

専門家の福永先生によると、無汗症の人も汗が皮膚の外にうまく出てこないだけで皮膚の中では汗を作っていてそれが皮膚の下で漏れてしまっているような可能性があるという。

この症状はいつ緊急事態になるかわからない恐ろしいものだった。

母の努力で娘が再び笑顔に

母は学校に彩の症状を伝えた。
しかし…いつアレルギーを起こすか分からない今の状況では職員は対応できないという。
さらに病院で併設されている院内学級などに入れた方がいいとまで言われてしまった。

彩は学校に受け入れてもらえず、通えなくなった。
そんな彩の唯一の楽しみは見舞いに来てくれた同級生とのおしゃべり。
しかし、少しでも盛り上がると…アレルギー反応ですぐ顔が赤くなった。
 
年頃の女の子だった彩は、このアレルギー反応を友達だけには見られたくなかった。
こうして、この頃から彩は感情を表に出すことがなくなり笑わなくなった。

そんな苦しむ娘を見て何か少しでもよくなる方法はないか母は必死に調べた。
すると、あるものを見つける。

それは「白虎加人参湯」という体に熱がこもって起こる痒みなどに効くとされている漢方薬。
すぐに医師と相談し、抗ヒスタミン薬と一緒に服用することに。

同時に免疫療法を兼ねて一緒に毎日20分、家の周りをゆっくり散歩するトレーニングも行った。

すると、なんと軽度の運動をしても発症しなくなったのだ!
そこで1年半ぶりに学校に通い始め、表情を抑え込んでいた彩にまた笑顔が戻った。

今回行った治療に関して専門家の福永先生は、「彩さんには漢方薬がよく効いたようだが、全ての患者さんに漢方薬が効くわけではないと思う」と語っている。

適切な治療法や特効薬がまだ無いとされているコリン性蕁麻疹。
あまり知られていない、つらいアレルギーはまだたくさんある。