米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の当選が確実となった。米大統領の交代は、今後の世界や東アジア情勢に、大きな影響を与えよう。中国はバイデン政権への交代を基本的に歓迎している。写真はトランプ氏。

写真拡大

米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の当選が確実となった。アメリカ大統領の交代は、今後の世界や東アジア情勢に、大きな影響を与えよう。

中国はバイデン民主党政権への交代を基本的に歓迎している。トランプ政権の後半、対中強硬路線が強まり、米中の対立が激化していただけに、局面打開につながると期待している。バイデン民主党政権が実現すれば、地球温暖化問題や、イラン核合意などで協調することが可能となることも好材料と見ている。

トランプ氏は貿易交渉の取引を重視し、中国にとって対応しやすい面もあったが、気まぐれなため交渉合意をひっくり返されることも再三だった。第2ラウンドの米中貿易交渉で、中国の国有企業改革を迫ることも懸念要素だった。対中強硬派のペンス副大統領やポンペオ国務長官は共産党を敵視し、中国政権として相容れない発言を繰り返していた。これらのリスクが軽減されることも歓迎の背景となっている。

さらに、トランプ政権が閣僚の台湾訪問や武器売却などで台湾支援を強めていたことに、中国政権は神経を尖らせていた。香港問題でも、反中デモでは星条旗を掲げ、トランプ氏の支援を求めるグループもいた。中国に批判的な論調の香港の蘋果(りんご)日報の創業者、黎智英氏は「アジアで一番のトランプファン」と公言。黎氏は米共和党右派の対中強硬派とのパイプも太く、米国からの資金援助も取り沙汰されていた。

世界で嫌中派にトランプ支持派が多い傾向があり、日本でも例外ではない。欧州ではトランプ氏の人気は低いが、「自国第一主義」への共感からか権威主義的政権が台頭する東欧や移民排斥などを主張する右派政党の支持者はトランプ氏への信頼度が高い。

米中は、従来の覇権国家と新興の2番手国家が衝突する「トゥキディデスの罠」に突き進むとの懸念も根強いが、米ソの東西両陣営が交わりを断って鋭く対立した20世紀後半と異なり、今の米中は深い相互依存関係にあるのが米ソとの決定的な違いだ。在上海アメリカ商工会議所の調査によると、中国で事業を展開しているアメリカ企業の70%以上が、生産拠点をアメリカに戻す計画がないことが分かった。「依然として中国市場は大きなチャンスであり、米中政府の関係修復を望む」(ギブス同会議所会頭)と訴える。

米国の経済界や農業関係者は世界最大の消費市場・中国との取引の維持・拡大を望んでいる。大富豪のブルームバーグ氏が民主党に巨額の資金援助をするなどウォール街(NYの金融街)関係者はトランプ政権の対中政策に反発していた。

政権移行期間の「空白の2ヵ月半」(11月3日の選挙から1月20日の就任まで)が生まれるため、その間にワクチン途上国支援など中国ペースの外交が可能となることも、中国にとって利点となるようだ。スーザン・ライスら親中派が民主党政権の閣僚に指名される可能性があることにも期待している。

ただ個性的なトランプ氏中心の荒々しい外交の時代が終わり、民主党の伝統的な手強い外交が始まることには警戒する向きもある。「同盟」を重視するので、欧州連合(EU)やアジアの同盟を総動員し、中国包囲網を敷かれるリスクも否定できない。人権にあまり関心がなかったトランプ氏と異なり、チベット、ウイグル、モンゴル、香港といった人権問題が批判されるリスクもある。(八牧浩行)