32年前はバサロ泳法で金メダル ©共同通信社

 来春に予定される千葉県知事選で自民党がバタついている。党県連は、鈴木大地前スポーツ庁長官(53)に立候補を打診し、鈴木氏も前向きな姿勢を示していたが一転、見送りに。88年ソウル五輪、背泳ぎの金メダリストとして高い知名度を誇る鈴木氏に期待していただけに、県連は当惑するばかりだ。

 出馬断念の前捌きをしたのは、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相。森氏は10月28日、党県連会長の渡辺博道衆院議員と面会し、「政治家は選挙を乗り越えないといけないが、鈴木氏は選挙を知らなすぎる。政治家に向いていない」と伝えた。面会の途中で鈴木氏も現れたが終始無言。その後、鈴木氏が渡辺氏に出馬断念を電話で伝えたという。

「いくら森氏が『後見役』とはいえ、自分の出処進退を他人に任せるとは情けない。思えば当初から鈴木氏は『出馬の際は政策とお金をよろしくお願いします』と県連側に伝えて呆れさせるなど、確かに政治家に不向きだった」(政治部記者)

 知事選には、熊谷俊人千葉市長が11月2日に出馬を表明。09年に千葉市議から旧民主党の支援を受けて31歳の若さで市長に当選した熊谷氏は、森田健作知事の台風災害への対応や新型コロナ対策の遅れを度々批判し、「市民に寄り添った感覚に映っており、人気が高い」(地元記者)。

「“マル乗っかり”の鈴木氏じゃダメだ」

 地元の自民党関係者は「森氏が不出馬を判断したのは世論調査の結果だ」と明かす。党が鈴木氏と熊谷氏を選択肢として調査したところ、熊谷氏が優勢だった。「年明けの通常国会冒頭で衆院解散がなければ千葉県知事選が菅政権初の大型選挙になる。敗北は許されない」(政治部デスク)。

 そもそも県連は鈴木氏擁立で一枚岩になれなかった。反対の急先鋒は石井準一参院議員。「タレントだった森田健作知事の次も、知名度が高いだけで“マル乗っかり”の鈴木氏じゃダメだ」と一貫して反対。熊谷氏を推す考えを示していた。

 石井氏は政界の暴れん坊と言われた「ハマコー」こと浜田幸一氏の秘書を長く務め、29歳で県議に。以降、20年にわたって県議だった石井氏はいまだに県議会に大きな影響力を持つ存在で、「石井派」と「反石井派」が争っている。

 鈴木氏が出馬しても石井派県議は協力せず、分裂選挙になった。仮に鈴木氏が当選しても県議会で石井派と対立する可能性があった。

「負ければ金メダリストの顔が潰れる。知事になったらなったで県政で立ち往生しても晩節を汚す。不出馬は森氏の親心です」(同前)

 鈴木氏は森氏のあっせんで母校・順天堂大学の特任教授になるという。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年11月12日号)