「自己肯定感」を高めるための本が多数出版され、ある種のブームのようになっています。これまでに8000人を超える人の悩みを解決してきた心理カウンセラーの山根洋士さんは、自己肯定感を上げよう、高めようとすることの危険性を指摘します。自己肯定感を高めてもいつまでも悩みが晴れない理由とは――。

※本稿は、山根洋士『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

■自己肯定感ブームの功罪

私は心のクセを直す「メンタルノイズ」カウンセラーの山根洋士です。

最近、自己肯定感という言葉をいろいろなメディアで見かけるようになりました。これだけ自己肯定感といわれると、「自分はどうなんだろう」と気になってしまいますよね。

すでに多くの心理学者やカウンセラーの方が、自己肯定感の上げ方などを語っています。そんな中で、なぜ私が今、「自己肯定感低めの人」のために本書を書いたのか? ここではそんな話をさせていただきます。

私のところには、いろいろな悩みを抱えた方が相談にいらっしゃいますが、悩みはバラバラでも、ある一点では共通しています。過去にたくさん心理学の本を読んだり、カウンセリングに参加したりしても、うまくいかなかったという点です。なぜそんなことになるのか。ここにこの本の根本があります。

そもそも自己肯定感ってなんなのでしょうか? 私は昨今の自己肯定感ブームで、ここが誤解されやすくなっているのではないかと少し心配しています。自己肯定感とは「自分はありのままでいい、生きているだけで価値がある、という感覚」のことです。

自信があるとか、自尊心が高いとか、ポジティブだとかいったことは実は関係ありません。

例えば自信がなかったり、ネガティブだったりしても「自分はありのままでいい」という感覚があれば、自己肯定感は低くならないですよね。

その感覚があるかないか、どちらかですから、あの人は自己肯定感が50点、この人は30点、その人は90点……などと競ったり比べたりするものではありません。

■自己肯定感の強要はポジティブハラスメントだ

だから、自己肯定感を上げよう、高めようとするのは、ちょっと危ないんじゃないかなと思ってしまいます。

自信が持てるなにかをつくらないといけないとか、ネガティブ思考じゃダメだとか、そういう「べき論」のようになっていくと余計に心は苦しくなります。

もちろん前向きなことはいいことです。でも「さあ前向きに!」「うつむいていたらダメダメ!」なんて言われたら、しんどくないですか? これではまるでポジティブの強要、ポジティブハラスメントです。

■いつまでも悩みが解消されない根本原因

だから私は、自己肯定感が低めの人のために、この本を書きました。この先のページまであなたが読み進めてくれるならば、ひとつだけ、心構えを伝えておきましょう。

「自己肯定感を高めようなんて思わなくていい」

これだけです。大事なのは、いろんな悩みや問題に直面したときに、自分はそういうものだと納得できること。

あなたに必要なのは、自己肯定感よりも「自己納得感」です。

良いも悪いも含めて今の自分にまず納得する。それがないと、いくら心理学を学んでも悩みは解消されないのです。

詳しくは本編に譲りますが、人は意外と自分のことを知りません。なにしろ普段の行動の9割が無意識だというくらいです。でもメンタルノイズを知れば、あなたが今まで意識していなかった自分が見えてきます。

本書では、ノイズとはなにかからはじまり、あなたのノイズの見つけ方、そしてノイズと上手に付き合うための心のエクササイズまでを解説しました。

前向きになろうとか、性格を変えようとか、メンタルを鍛えようとか言われても、急には無理ですよね。まずはあなたが自己納得感を得ること。そんな低めのハードルからトライしてみましょう。

■悪いのはメンタルノイズ

今度こそ痩せられると思ってはじめたダイエットだけど……、また続かなかった。仕事でチャンスをもらったけど、失敗が怖くて、終わってみたらミスだらけ。共感してもらえると思ってSNSに書き込んだけど、会ったこともない人にまで誹謗中傷されて。お金を貯めようとしたけど、半年経っても、まったく残高が増えない。リモートワークならストレスから解放されるかなと思ったけど……、上司との関係が悪化して今日も眠れない。

写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

ダメだなあ、うまくいかないなあ。こんなことがあると、誰だってそう思います。すべてが完璧な人などいません。失敗して落ち込んだり、後悔したり、がっかりしたりするのは当たり前で、みんな同じです。

ところが、自己肯定感の低い人は、「私ってなにやっても続けられない」「私はうまくいったことなんてない」「どうせ私は誰にも認めてもらえない」などと、必要以上に自信をなくしたり、自分を責めたりしてしまいます。

ちょっと待ってください。

「自分なんて……」と思っているあなた、うまくいかない原因を間違ってませんか?

なにをやってもうまくいかないのは、あなたのせいだと思ってませんか?

痩せられないのも、ミスをするのも、誹謗中傷されるのも、貯金できないのも、そして上司とうまくいかないのも、実は、原因はほかにあります。

だから、「自分なんて……」と卑屈になるのは、もうやめましょう。

それでは、原因はなに? それは、あなたの心の中にある「メンタルノイズ」です。

メンタルノイズがあなたを邪魔するから、なにもかもうまくいかないのです。

■胸のザワザワの正体とは?

うまくいかないのは、心のノイズのせい。

急にそんなことを言われても、ピンとこないですよね。私も普段のカウンセリングでは、少しずつノイズを感じてもらうようにお話をしていきます。

山根洋士『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)

この本を手にとってくださったあなたにも、「ノイズってこんなものか」と感じてもらえるように、順を追って話を進めていきましょう。

例えば、こんなことってないですか?

SNSで他人の投稿を見て「みんな充実している。自分はダメ」と凹んでしまう。逆に自分は投稿したいネタも見つからないし、あっても投稿するのを躊躇してしまう。「SNSうつ」なんていう言葉もあるくらいですから、割とよく聞く話じゃないかなと思います。

さて、こんなふうに凹んだり、躊躇したりしてしまうのって、なぜなんでしょうか? とてもわかりやすい例なので、あなたも察しがついているかもしれません。

「仲間とワイワイ活動して映える投稿ができる人はスゴい」と思っていたり、「自分の投稿に『いいね』がつかないと格好悪いし、叩かれたりするのがイヤだ」と思っていたりするからですね。

実はこれがノイズの一種。

なんだか胸のあたりがザワザワ、もやもやする感じって、ありませんか? そんなときはノイズがあなたの思考や行動を邪魔しています。

■「なぜかうまくいかない状態」は変えられる

要するにメンタルノイズは、あなたがついやってしまう心のクセなのです。簡単な例なら他にいくらでも思いつきませんか?

好きな人に「うっとうしいと思われたらイヤ」だから、声をかけたり、LINEを送ったりできない。

友達に「いいやつだと思われたい」から、頼まれごとを断れない。実際にはそうとは限らないのに、つい考えてしまう。それがノイズです。こういうことが積み重なると「はあ、なんて自分はダメダメなんだ」と自己肯定感が低くなってしまいます。

胸のザワザワ、もやもやに、もし思い当たることがあるとしたら、ノイズが発動している証拠です。

いかがでしょうか?

ピンとこなかったノイズも、「まあ、こういうことならあるかも」くらいには感じていただけたでしょうか。

でもこれはノイズのほんの一部で、超入門編です。問題はここから先。人の心理や脳の仕組みはとっても複雑で、実はあなたがまったく無自覚で、考えてもみなかったようなノイズが、日常生活のいろんなところで発動しています。

でも安心してください。そのノイズを見つける方法はあります。そして、ノイズが見つかれば「なぜかうまくいかない」状態を抜け出す大事な一歩になるのです。

----------
山根 洋士(やまね・ひろし)
心理カウンセラー
これまでに8000人以上の悩みを解決してきた心理カウンセラー。両親の離婚、熱中していたスポーツの挫折、就職の失敗などを経てノンフィクションライターとして成功をつかむものの、激務でダウン。過労死寸前まで追い詰められ、入院生活を送る中で心理療法と出会って人生が激変。「なんのために生きるのか」を模索した末に、心の風邪薬のようなカウンセリングを提供したいという想いから、カウンセラーになる。心理学だけでなく、数多くの経営者やプロスポーツ選手、芸能人等への取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れた、メンタルノイズメソッドを開発。実践中心のカウンセリングで一線を画す。カウンセリングには、著名な精神科医やスピリチュアリスト、占い師などに相談しても結果が出なかった人が殺到。すぐに実践できるワークと、論理的なセッションで好評を博している。
----------

(心理カウンセラー 山根 洋士)