リモートワークが急速に普及し、話し方で悩む人が増えています(写真:xiangtao/PIXTA)

日本を代表する1部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。

たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。

その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高の話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』を上梓した。その岡本氏が「なぜ、日本人に話下手が多いのか、その根本3原因」について解説する。

リモートワークの普及で「話し方」にも変化が

新型コロナを契機に、リモートワークが急速に普及しています。会わなくなれば話す機会も減り、「コミュ力など、それほど必要のないものになるのでは?」といった思い込みとは逆に、物理的に距離のある時代だからこそ、心の距離を縮める工夫が求められ、その重要性は高まる一方です。


そんな状況下で「端的に伝えられない」「相手との絆を作りにくい」など、話し方で悩む人が増えています。

私は、新聞記者やPRコンサルタントとしての「経験知」と、アメリカやイギリスで学んだグローバルスタンダードの「話し方のノウハウ」を体系化し、企業の社長や役員に、プレゼンやスピーチをコーチングする「家庭教師」として、長年、経験を積んできました。

日本の大企業を中心に、これまでお会いしたエグゼクティブは1000人以上。たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変えてきました。

先の見えないコロナの時代だからこそ必要な、私が体系化してきた人生最強の話し方スキルをお伝えして、皆さんに「鉄壁の自信」を手に入れていただきたいと思います。

第1回目は「なぜ、日本人に話下手が多いのか」その根本的な3つの原因について考えます。

アメリカのある調査によれば、リモートワークの課題は「コミュニケーション」「コラボレーション」(連携・協業)そして、「孤独」の3つの「コ」だそうです。

私の周囲でも「毎日汗水たらして満員電車に揺られて通勤していたのは何だったのか……」と在宅勤務を楽しんでいる人も多い一方で、「寂しい……」もしくは「会社がリモートを認めない……」と、ほぼ毎日、出社している人もいます。

リモートで、「生産性は劣るどころか、逆に上がる」というデータもありますが、「新たな営業先を開拓するのが難しかった」といった声も聞こえてきます。

日本人は圧倒的に「コミュニケーションに自信がない」

評価は分かれるわけですが、ポストコロナになっても、以前のようなフル出勤に戻ることはなく、これからは「ウィズ・リモート」が常態になることは確実です。

そんな時代に、あらためて注目を集めるのが、「話す力」。とくに、ウェブ会議などで、端的にしっかりと、伝えることが求められるようになり、ますます、その大切さや力不足を実感する人が増えています。

礼儀正しく、親切な国民性で知られる日本人ですが、「コミュニケーション」にかけては、他国の人と比べて、もともと「自信がない」「苦手」という人も少なくありません。

「コミュニケーションに自信がない」と答える人の割合は、年代問わず全体の過半数を超えています

旅行サイトの「エクスペディア」が行った国際比較調査で、日本人は世界23カ国中、日本人は世界一「見知らぬ人とのコミュニケーションに消極的」であることがわかりました。「飛行機の中で知らない人に話しかける」という人の割合は、15%。インド(60%)、メキシコ(59%)、ブラジル(51%)と上位の国と比べると、圧倒的に低かったのです。

「知らない人と話す」「大勢の人の前で話す」。各種の調査でも、日本人の多くがこの2つを不得意と考えており、見知らぬ人とも平気で話し、堂々と人前でプレゼンをする海外の人々と比べると、「一億総引っ込み思案」ともいえる状態かもしれません。

もちろん、謙虚さを貴ぶ文化ですから、「慎み深くいていいではないか」という声も聞かれそうですが、グローバル競争時代に「言わなくてもわかる」「お天道様は見ている」ということなどありません

高いクオリティの商品やサービスを生み出しても、それをアピールする力がない。「言うべきことはあるのに、きちんと主張できない」では、あまりにもったいないわけです。

なぜ、これほど「話すことに自信がない人が多い」のか。文化的・社会的に実に多くの理由が折り重なっているわけですが、私は日本人を追い詰める「3つの呪縛」があると考えています。

1つ目の「呪縛」は「間違った『型』に縛られる」ことです。

一方的に「説明」することは正しい型ではない

【1】「話し方の基本ルール」を教わる「場」「お手本」「教科書」すべてない

私は以前、対面でエグゼクティブのコーチングを行っていたのですが、コロナの影響で、すべてがキャンセルになりました。思い悩んだ末、オンラインでのコーチングを始めたところ、「ウェブ会議でのプレゼンや記者会見対応」「社員間のコミュニケーション」などに悩む企業からの依頼が急増しました。

そもそも、以心伝心文化が強く、日々顔を合わせたり、いわゆる「飲みにケーション」をしたりすることで、「伝え下手」を補完していたわけですが、この状況ではそれもままなりません。多くの日本企業が「リモートでの社員間のコミュニケーション」に課題を抱えています

一方で、名だたるグローバル企業の関係者に話を聞くと、オンラインでもコミュニケーションの頻度が高く、エグゼクティブの伝える努力が半端ないことに驚かされます。

「しっかりと前を向き、堂々としたジェスチャーと語り口で、説得力を持って語る海外のエグゼクティブの姿に、心を動かされる」そうです。そういうお手本を見ているうちに、社員たちも「正しいコミュニケーションの型」を習得していくというわけです。

一方で、日本企業の場合、トップが社員にメッセージを発信するのは月に1回。味気ないメールや読み上げているだけのビデオメッセージなど、「聞き手の心拍数をまったく上げない無味乾燥な情報発信」に終わっているケースもしばしば。

スピーチであれば、スクリプトを作って、一言一句、棒読みする。プレゼンであれば、字ばかりで、わかりにくいスライドを見せて、ろくに、カメラに目をやることもなく、つまらない「説明」に終始する……。これでは、伝わるわけがありません。

こういった「お手本」「正しい型」が身近にないのが、日本人の「1つ目の呪縛」です。学校でも同じ。読み書きは教えられても、話し方の教育はありません。教師とて誰も、正しい作法を知らないのです。

子どもたちは、生気のない調子でただ、一方的に「説明」することをコミュニケーションの「型」だと思い込んで育ち、営々とその伝統が受け継がれていくのです。「話し方の基本ルール」を教わる場もお手本も教科書もない。これでは、その力が上がるわけもありません。

2つ目は、「『自分視点』に縛られる」ことです。

相手が受け止めやすい「緩い球」を投げていますか?

【2】「自分視点」に縛られる

「話す」とは「離す」こと。「自分が話したい話は伝わりにくい」ので、「自分(中心)視点」を「離す」ことから始めなければならないということです。

10年以上、企業幹部の話し方の「家庭教師」をしてきて、感じるのは、「言えば、伝わる」と思っている人があまりに多いことです。伝えて終わり。コミュニケーションが手段ではなく目的化しています。

もし「相手と心をつなぎたい」「わかり合いたい」「理解してもらいたい」と思うのであれば、「自分が言いたいこと」ではなく「相手が聞きたいこと」を伝えなければなりません。

なぜなら、人は「自分が聞きたいこと」「自分が知りたいこと」「自分に関係のある話」しか、受け入れようとはしない生き物だからです。

これは、「確証バイアス」と言われ、人は自分と同じ考えの情報だけを取り入れていく傾向がある、ということです。

気候温暖化、予防接種、政治的志向など、信念を持つ人は、その考えに矛盾する情報は一切受け入れず、合致する情報だけしか聞きません。どんなに「ファクト」「ロジック」「正論」をかざしたところで、「考えを変えることはとても難しい」ものです。

多くの人が、「自分視点」で言いたいことを言い、自分の正当性を主張したがります。しかし、そうした「剛速球」で悦に入るやり方では、相手の心の扉は開きません。

「相手が聞きたいこと」「相手が知りたいこと」を見極めながら、受け止めやすい「緩い球」で対話のキャッチボールをする。これこそが、心をつかむ「コミュニケーションの神髄」なのです。

3つ目は「『謎マナーや人の目、同調圧力』に縛られる」ことです。

【3】「謎マナー」「人の目」「同調圧力」に縛られる

「日本人のコミュ力向上」を最も阻害するのは、「他人の視線」を気にし、自分の言動を周囲に合わせることを求められる「同調圧力」かもしれません。

それに加えて、過度な慎み深さや謙虚さを強要する「謎マナー」など、日本人は社会や文化的な制約にぐるぐる巻きにして束縛されています。

私も、かつてそういった「人の目」に縛られ、プレゼンなど人前で話すことが本当に苦手でした。

ニューヨークで、アクティングスクールやボイストレーニングなど、コミュニケーションのワークショップや学校に通い、「恥ずかしい体験」を積み重ね、殻を破ることができました。

日本のように「他人の目」を気にして「言いたいことも言えない環境」では、個人は萎縮していく一方です。

こうした「窮屈さ」、人と上手につながるノウハウの欠如からくる「孤独感」などが、世界最低水準の自己肯定感や幸福感につながっている側面はあるでしょう。

日本人は「正しい話し方」を知らないだけ

世界的に見れば、これだけ文化水準、教育水準の高い国民が、自信を持てず、不幸感をかこっているのは、奇異に見えるようです。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と哲学者アドラーは喝破しましたが、そうであれば「コミュニケーションが『すべての悩みを解きほぐすカギ』を握っている」といえるかもしれません。

これまで、1000人以上のエグゼクティブに「話し方を変えるお手伝い」をしてきてわかったのは、「その良しあしは決して生まれつきの能力ではない」ということです。

「できない」のではなく、「正しい話し方を知らないだけ」。話し方の「黄金ルール」を知り、ほんのちょっと背中を押してもらえれば、あっという間に変わり、自信がつくものなのです。

話し方を変えれば、人生は必ず変わります。誰でも、「正しい話し方」のルールを知り、実践すれば、もっと自信がつく、私は数々のエグゼクティブの人たちと接した実経験から、そう確信しています。