ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

写真拡大

1992年に盗塁王のタイトルを獲得した飯田哲也氏は「野球人生で見た中で一番速い」

■ソフトバンク 4-3 ロッテ(29日・PayPayドーム)

 ソフトバンクの周東佑京内野手が29日、本拠地PayPayドームで行われたロッテ戦の初回に二盗を決め、日本新記録となる12試合連続盗塁を樹立した。1992年にヤクルトで盗塁王を獲得し、昨年までソフトバンクでコーチを務めていた飯田哲也氏は周東の盗塁技術に驚嘆。2歩目からのスピードや早いカウントからスタートを切れることは「他の選手ではできない」と解説した。

 周東が盗塁を決めた瞬間、かつての盗塁王も驚くしかなかった。「走ると分かっているのに、成功するのはすごい。投手が牽制したり、捕手もお尻が浮いている状態でも刺すことができない。出塁しないといけない上に、前の塁に選手がいれば、盗塁は自分一人の力ではできない。そういう難しさがある中で、周東は私が野球人生で見た中で、最も速い男だと思います」とその走塁技術を大絶賛だ。

 周東の盗塁の凄さはどこか。飯田氏はトップスピードに乗る速さが一番と分析する。

「走り出して2、3歩でトップスピードに乗っている。自分の現役時代は5歩くらいでした。止まっているところからすぐにトップスピードにはなかなかできない。その後のベース到達も速いですし、スライディングも上手くなっていますね。体重が軽いというのもあるとは思いますが、足の回転、脚力が頭抜けています」

 周東が現れるまで、飯田氏の中で最も速い走者は元阪神の赤星憲広氏だったという。赤星氏はリードが大きく、普通の人ならば戻れない距離。さらには「リードが大きい場合、帰塁へ意識がいくのに、それを感じさせない」凄さがあった。飯田氏も1992年にヤクルトで33盗塁を決め、盗塁王を獲得するなど、走力に定評はあるが、周東の走塁には賛辞の言葉しか出てこない。

 飯田氏が目をつけるのは他にもある。周東が走り出すカウントだ。この日の記録達成した時の盗塁も2球目だった。

「1、2球目でも、球種がストレートでも、周東は行く。普通は配球を読んで、変化球カウントの時にスタートを切ったりするものですが、周東は配球を考えなくてもいい状態で、盗塁に行っている。自分にとっていいスタートが切れたらいけばいい。配球を考えなくていい域まで、来ています。たまにアウトになったりしたら、躊躇するかもしれないですが、ずっと成功をしているから考え方は変わらない。もう信じられないですよ」と目を丸くする。

後半の周東は打撃も選球眼も素晴らしかった

 飯田氏はヤクルト黄金期のリードオフマンとしてチームを牽引し、現役時代は234個の盗塁を重ねてきた。その主な部分は「変化球カウントを見つけて走るタイプだった」と、データや配球を読み、根拠を持って走ってきた。

 過去に30回連続で盗塁を決めていたことがあったが「(30回と)言われるまで気がつかなかった」と聞かされた直後に失敗をした経験がある。盗塁はメンタルも大きく関わってくる。だが、周東は決めればプロ野球記録となるという局面でも、投手のクイックなど警戒の中でも、強いメンタルで次の塁を盗みに行った。

「今年の周東は後半の打撃もよく、四球も取れたので、盗塁が増えたと思います、盗塁もすごいですが、しっかりと塁に出続けていることもすごいし、自信になっている。出続けることによって次に生かすことができているのかなと思っています。本多雄一コーチも一流の走塁技術を持っているので、彼から学んでいることも多いと思います」

 一言では片付けられない技術が周東の一つの盗塁に秘められている。(Full-Count編集部)