まだまだ先のこと。とはいえ、必ずやってくる老後の資金問題。昨今のコロナ禍にあって、近い将来のことすら見通せないのに、そんな先のことまで考える余裕がない…。というのが本音かもしれません。
でも、まったく知らないよりも少しでも知識があるだけで心構えが違うはず。ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに、老後のお金の備え方を教えてもらいました。


安心して老後を迎えるためにも準備は万端に

必要な老後資金を予想し、強制的に貯めるのがポイント



書道教室の講師と作文添削のバイトで、月15万円ほどの収入を得ていたという読者の大塚まゆみさん(仮名)。コロナの影響で、自身の収入が0円になるというピンチに直面しました。
「大学受験を控える長男と高校生の二男の教育費もかかるうえ、老後資金の備えもあるので、不安でいっぱいで…」

そんな大塚さんに、畠中さんは、こうアドバイスします。
「老後資金を準備するために、まずつかみたいのが老後の生活費。今の生活費から、老後に不要になる支出を引いた額が目安です」

次に、老後の収入である年金額をチェック。
「毎年の誕生月には日本年金機構から『ねんきん定期便』が送られてきますが、50歳未満の人は、下表の平均額で予想しましょう。『年金に対する赤字額×12か月×25年(90歳−65歳)』が貯蓄でまかなうお金です」

加えて、特別支出や家の修繕費などを合わせた額が、準備したい老後資金額。
「大塚さんの場合、子どもの大学卒業時に夫はまだ48歳で、退職まで12年間かけて貯められます。iDeCoや定期積立で確実に貯めつつ、退職金の額も早めに確認しておきましょう」

●STEP1 老後に必要な金額をシュミレーションする




今の生活費から、老後に不要になる住宅ローン、子どもの教育費や携帯代などを引いて老後の生活費を予想。
「年金額は下表の平均受給額を参考に、50歳になったら自分の年金で予想を」

<老後の年金の平均受給額>

・男性
厚生年金と国民年金 196万6080円/年(月額16.4万円)
国民年金のみ 70万5300円/年(月額5.9万円)


・女性 
厚生年金と国民年金 123万696円/年(月額10.3万円)
国民年金のみ 64万104円/年(月額5.3万円)


出典:厚生労働省年金局「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
※厚生年金の平均加入期間は、男性約36年、女性約25年

<大塚さんの場合は…>
毎月の赤字:
年金受給額は、平均受給額から会社員の夫16.4万円と、扶養されている妻5.3万円で合計21万7000円。老後の生活費予想は24万円なので、月の赤字額は2万3000円に。

特別支出など:
特別支出は年40万円×25年=1000万円。そのほか、家の修繕300万円、クルマ買い換え200万円、介護などいざというとき用800万円で、合計約2300万円に。

毎月の赤字 2万3000円 × 25年分(90歳−65歳) + 特別支出など = 老後に必要な金額 約3000万円(2人分)

年金以外に、退職金や保険の満期金などで用意できる額を確認しましょう。また、毎月の赤字額をなくせば、必要な金額は約700万円カットできます。

●STEP2 貯蓄&運用でしっかり備える




2人の子どもが大学を卒業してから、夫が退職するまでの12年間が大塚家の“貯めどき”。
「教育費が不要になれば、年間100〜200万円以上の貯蓄も可能です。収入から先取りで、確実に貯めていきましょう」

おすすめは、かけ金が全額所得控除になる「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」と、毎月強制的に積み立てられる「ネットバンクの定期積立」
「iDeCoを使って有利に運用して利益を狙いつつ、ネットバンクの定期積立で着実に老後資金を増やしてください」

<大塚さんにおすすめなのは…>

●iDeCo(個人型確定拠出年金)

積立額と運用先を決めて運用し、60歳以降に一時金または年金、一時金+年金で受け取る制度。かけ金が所得控除など税制優遇も魅力。

<ここに注意!>
貯めたお金が引き出せるのは、60歳以降。それ以前は引き出せないので、貯蓄の全額利用は×。

<手続きの仕方>
かけ金(5000円以上1000円単位)と運用先(預貯金、保険、投資信託など)を決めたら、iDeCoを取り扱う金融機関から「加入申出書」をもらって記入・押印して金融機関に提出。厚生年金加入者は、勤務先で事業主証明書をもらって、一緒に提出します。

●ネットバンクの定期積立

最初に指定した金融機関の口座から手数料無料で自動的に振込をしたり、普通預金残高から定期預金に積み立てるサービスが◎。

<ここに注目!>
一般の銀行よりは少し高めとはいえ、超低金利。iDeCoとの併用で、効率よく貯めるのが◎。

<おすすめのネット銀行>
・住信SBIネット銀行
代表口座のほかに、目的別に5つの口座が設定でき、他行への振込が一定回数無料など手数料も割安。


・ソニー銀行
ソニーファイナンシャルグループの1つ。ATM手数料無料など各種手数料が低く、積み立て定期預金は1000円から利用できる。


※投資は元本割れのリスクがあるため、自己責任のうえで投資してください。

備えるべき金額と、具体的な方法がわかれば、将来への漠然とした不安は解消するはず。まだまだ先のことと先送りせず、できることから始めてみませんか?

<イラスト/別府麻衣 取材・文/ESSE編集部>

●教えてくれた人
【畠中雅子さん】



ファイナンシャルプランナー。新聞、雑誌などに多数の連載をもち、全国でセミナーや講演を行う。『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」
』(ぱる出版刊)など著書多数