専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第278回

 みなさん、エージシュートをご存知ですか?

 自分の年齢以下のスコアをマークすることで、アマチュアゴルフ界では、大いなる誉れとされています。

 アマチュアゴルフの世界では「三大偉業」と言われるものがあって、そのひとつが「エージシュート」で、あとふたつは「クラブチャンピオンになること」と「ホールインワンをすること」です。

 その中で、ホールインワンは偶然の賜物なので、実力はさほど関係ありません。単なるラッキーと言えば、それまで。

 逆に、クラブチャンピオンは1000人以上いる倶楽部メンバーの頂点ですから、100%実力の世界です。アベレージゴルファーのアマチュアの実力から見れば、ほぼ実現不可能なんですよね。

 ですが、同じ実力の世界でも、エージシュートは健康な体で長生きをして、ゴルフを真剣に取り組んでいれば、85歳ぐらいで達成できるのではないか? そう思えてなりません。つまり、健康長寿で、ゴルフを毎週やっているような人であれば、十分に達成可能です。

 現在、日本人男性の平均寿命が81歳くらい。健康寿命は約72歳と言われています。

 健康寿命というのは、文字どおり健康体でいられる年齢のことを指します。ゴルフは歩きですから、少々無理をすればできると思いますが、肩や肘、足腰を痛めていると、かなり厳しいです。そのうえ、運動神経のほか、握力、視力、記憶力、判断能力など、さまざまな点がクリアできていないと、ラウンドはできません。

 ゆえに、72歳以上でゴルフができて、小遣いも少々ある。もうその段階で、「人生勝ち組」と言って差し支えないでしょう。あくまでも平均値ではありますが、72歳になった男性の多くが、足腰が立たなくなって、故障をしてしまうというわけですから。

 ただこのデータ、にわかに信じられない気もしませんか?

 巷で見るお年寄りはみんな、元気そうに見えますからね。健康寿命「72歳説」というのは、ちょっと誇張されているんじゃないか、って思うでしょ?

 けど、そう思うのが勘違いなんです。街で見かけるお年寄りは、健康だから街を歩いているのです。我々の知らないところで、体が不自由になり、誰かのお世話になっている人が、結構いるってことです。

 さて、そこで今回は、健康で長生きをしていれば、自ずとエージシュートを達成する日がやって来るかもしれない、という話をしていきたいと思います。

 今回、なぜこのネタを取り上げたのか。

 実は今年の夏、偶然にもエージシューターと同じ組になり、その実力を目の当たりにして、びっくり仰天。自分が追い求めるゴルフ人生は、「これだ!」と思ったからです。

 そのエージシューターのおじいさんとは、栃木の某ゴルフ場で出会いました。車で1時間半かけて、コースに来たんだとか。年間100ラウンド以上をこなしている猛者で、外見はどう見ても、70歳台かなぁ〜って感じでしたね。

 なにしろ、若々しい短パン姿で、スマホを見事に使いこなしていましたからね。そうした様子を見るにつけ、気持ちも若いし、ハイテク機器の扱いにも慣れていますから、脳年齢は相当若いと思いました。

 実際のラウンドの雰囲気は、非常に社交的で、場慣れしている感がありました。初対面となる組み合わせのゴルフも何のその、自ら積極的に話しかけてきます。しかも、相手のことはさほど詮索してきません。

 打つ時は、「年寄りなので、前から(レギュラーティーに対するフロントティー)でいいですか?」と聞いてきます。もちろん、こちらは気を遣って「どうぞ」と言うだけです。

 打ったボールは安定したフェード。フォームに変な癖もなく、昔からかなりやっていた感が漂います。前方のティーから打っているので、自分のボールをオーバーしていきます。同じレギュラーティーから打っても、おそらく自分よりもちょっと飛ばないくらいでしょう。

 驚くのは、セカンドショット以降の攻め方です。パーオンはしなくとも、グリーンに乗せやすいところにボールを置いてきます。そして、そこから寄せワンパー。

 ふと思えば、3ホールでパーが2回。こちらは、ボギーとダボのパーなし。「あれ? おじいさん、うまいんじゃないか」と気づかされます。

 ハーフを上がってみれば、おじいさんは「39」。なんだよ、一番成績がいいじゃん!?

 昼休み、そんなじいさんの正体を暴こうと、こっちはさりげなく取材態勢に入ります。「前半39なら、70台出ますね。エージシュート、達成するんじゃないですか?」と、冗談ぽくカマをかけたら、あっさりとスマホに記録してある年間成績表を見せてくれました。

 平均スコアが80〜81。現在の年齢は82歳なんだとか。てことは、「全部のラウンドがエージシュート!?」と、思わず大声をあげてしまいました。

 すると、おじいさんは精一杯謙虚に見せて、「9割はエージシュートかな」って。それを聞いて、こっちはあんぐり。そこで、最低でも年間100ラウンドしていることも聞いて、恐れ入りました。


80歳を越えても健康で、こんなふうに人生を楽しめたらいいでしょうねぇ...。illustration by Hattori Motonobu

 というわけで、そのおじいさんを見ていて、健康で長生きしていれば、エージシュートができそうな気がした次第です。実際にできるかどうかわからないけど、気を若くして生活していることが大事かな、と。

 では、具体的にどうやれば、若い気分でゴルフライフを送れるのか?

 何か参考になる書物はないかと調べてみたら、実はあったんですよ。『黄昏ゴルフ倶楽部』(双葉社)という漫画の単行本です。

 原作は、木村和久......って、オレじゃん!? すみません、手前ミソの話になりまして、恐縮です。

「黄昏......」と聞いて思い出すのは、漫画『黄昏流星群』(小学館)ですよね。その作者である弘兼憲史さんに監修をしていただいております。つまり、『黄昏流星群』のゴルフ版みたいな漫画が、『黄昏ゴルフ倶楽部』なのです。

 設定はこうです。

 これから老いていく55歳の主人公、藤原隆一。妻に先立たれて、ゴルフ部に所属する大学生の息子とふたり暮らし。

 まだ枯れる人生を送るには早すぎる。もう一度、錦繍の人生を送ってもいいじゃないか。人生の第3コーナーを颯爽と駆け抜け、恋に、ゴルフに、仕事にと邁進します。

 今まであったトーナメントを中心としたストロングスタイルのゴルフ漫画とは、まったく違うタイプの作品です。市井のアマチュアゴルファーの、等身大の日常奮闘記であります。

『週刊パーゴルフ』というゴルフ専門雑誌で現在も連載中ですが、試合描写に飽き飽きした読者がこの漫画を支持してくれています。

 みなさんがこの漫画を読んで、近い将来迎える"老い"というものに対して、自らの回答を何かしら見出せたら、幸せです。