2020年卒の女子大実就職ランキング。昭和女子大学がトップに。

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女子大の実就職率ランキングのトップは昭和女子大学。敷地内にアメリカのペンシルベニア州立テンプル大学の日本校を誘致したことで話題になっている (写真:Lukas/PIXTA)

2020年度の大学入試は、景気に対する不安感や情報系分野の人気の高まりなどから、就職に強い理系学部の志願者が増え、文系学部の志願者が減少した。女子大もこの波に飲み込まれて志願者が減少し、志願者は、前年を1万2000人程度下回った。

景気悪化の影響で志願者が減少

この状況について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏は、「文系学部の定員が多いことに加え、メガバンクの採用減など、景気が厳しくなるという見方が広がったことから、女子大の志願者が減少した」と話す。


個別の大学の志願状況を見ると、翌年に大学入試改革を控えたことによる受験生の安全志向もあり、東の津田塾大学、東京女子大学、日本女子大学。西の京都女子大学、同志社女子大学、神戸女学院大学といった、東西の女子大御三家すべての志願者が前年を下回った。

もっとも、志願者減の一因である就職に対する不安感は、受験生や保護者の認識不足ではないか。大学通信が医学部と歯学部の単科大学を除くすべての大学を対象として調査した実就職率ランキングを見ると、女子大の平均実就職率は、常に大学全体を上回っており、20年卒は全体の88.7%に対し、女子大は91.4%だった。

この傾向は長らく続いており、リーマンショック後に新卒の求人倍率が大きく下がった2010年や2011年当時でも、女子大の平均実就職率は大学全体を上回っている。その要因として、男女雇用機会均等法施行(1986年〜)以前、女子学生の就職が厳しかった時代に蓄積された就活のノウハウが現在に引き継がれていることが挙げられる。

「女子大は生き残りのために積極的な就職支援を行って結果を出してきた。就職率と入試の倍率を勘案すると、女子大はお得と言える」(石原氏)

女子大の就職力について、全就職先と有名企業400社を対象にした実就職率のランキングでそれぞれ傾向を見ていこう。ランキングの対象は女子大で卒業生100人以上の大学だ。

全体実就職率のランキング1位は昭和女子大学だった。卒業生1000人以上と規模が大きな女子大の中では、10年連続でトップに立つ。国際、グローバルビジネス、人間文化、人間社会、生活科の5学部(2020年3月卒業時点)からなり、グローバルビジネス学部の実就職率は100%だった。駿台の石原氏は、「かつての良妻賢母型から実務型に変わったことが、女子大の就職の良さのベースにある」と言う。

ビジネス系の実務型学部が強みになっているのは、6位の安田女子大学も同様で、現代ビジネス学部の実就職率は100%だ。

就職に有利な資格が取得できる学部の充実も、高い実就職率の要因になっている。2位の岐阜女子大学は、家政学部と幼稚園や小学校などの教員免許が取得できる文化創造学部で構成され、3位の聖徳大学は、全6学部中、児童、心理・福祉、人間栄養、看護の4学部が資格系学部だ。

4位のノートルダム清心女子大学は、人間生活、児童、食品栄養の3学科で構成される人間生活学部を持ち、5位の東京家政大学は、家政学部に児童学科や栄養学科を設置するなど、就職に強い資格取得ができる学部が揃っている。

以下、7位仙台白百合女子大学、8位東京女子大、9位千里金蘭大学、10位園田学園女子大学など、日本各地の女子大がトップ10にランクインしている。

有名企業400社実就職率は津田塾大がトップ

一方、日経225採用企業や就職人気企業といった有名企業400社を対象としたランキングでは、津田塾大が前年の3位から1位になった。同大の特徴は、ただ有名企業に強いだけでなく、就職者の9割以上が総合職や専門職に就いていること。女子大の中では全国から学生が集まる大学であり、もともと地元を離れている学生は、勤務地にこだわりを持たない学生が多いことが一因になっているという。

2位は前年トップだった東京女子大、3位は5位から上がった日本女子大。この2校も総合職や専門職の割合が高く、トップ3を東の御三家が占めた。4位の聖心女子大学まで実就職率が20%を超えており、5人に1人が有名企業に就職している計算になる。これは、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)など、有名総合大学と比較しても遜色のない数値だ。

以下、5位奈良女子大学、6位学習院女子大学、7位神戸女学院大、8位同志社女子大、9位昭和女子大、10位福岡女子大学、同10位白百合女子大学と続いた。

ただこの女子大の有名企業400社の実就職率はここ数年下降傾向にある。その要因がメガバンクにおける事務職の採用減。メガバンクの採用者が多かった2017年と比較すると、実就職率が20%を超える大学は、当時の8大学から4大学に減った。当然、ランキング中の大半の大学で有名企業400社への実就職率が下がっており、ベスト10に入った大学の内、当時を上回っているのは奈良女子大のみだ。

エアラインの採用中止がどう響くか

実就職率の変化と連動して、就職先の上位企業も変わっている。ランキング上位の大学の就職先を見ると、2017年はメガバンクが多く並んだが2020年は大幅減。押し出されるように学生の人気が高い航空業が上位になっている。

聖心女子大を例にとると、2017年のベスト3は三菱UFJ銀行(12人)、全日本空輸(11人)、三井住友銀行(10人)だったが、20年は日本航空(11人)全日本空輸(10人)、ANAエアポートサービス(8人)となっている。

またメガバンクの減少分は、航空業に加え、生損保や製造業などへ就職先のすそ野を広げることで補っており、各大学の400社の実就職率は減少しているとはいえ、大幅に減るという事態には陥っていない。

その要因として駿台の石原氏は「男子学生がいない女子大の学生は、あらゆる役割を経験することにより、積極性を身に付けて社会に出られる強みがある」と指摘する。各大学の手厚い支援とともに、女子大生ならではのタフさも就職率減少の歯止め要因になっている。

今後、メガバンクの採用減以上の逆風が女子大に吹くことが予想される。2021年卒に関しては航空業の各社が採用中止を打ち出しているからだ。さらに、景気後退により採用状況が不透明になる2022年卒以降についても気になるところだ。

こうした状況の中でも女子大は、入試の倍率は低いが就職に強い、“お得な”大学であり続けられるのか。真価が試されることになりそうだ。