@AUTOCAR

写真拡大 (全8枚)

3列シート7人乗りのメルセデスSUV

text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)photo: Keisuke Maeda(前田恵介)

メルセデス・ベンツのSUVラインに加わった「GLB」は、スペース効率を突き詰めたスクエアなスタイリングと、高いオフロード走破性から新たな境地を切り開いた。

【画像】これで分かる ベンツGLB シートアレンジ【実車を撮影】 全136枚

それに加えパッケージングが注目を集めることになった。


メルセデス・ベンツGLB 250 4マティック・スポーツ(日本仕様:696万円)    上野和秀

それは、同社のコンパクト初となる3列シート7人乗りというパッケージで、デビュー以来好調なセールスを続けている。

ドライビング・インプレッションについては自動車メディアで数多く紹介されているが、室内空間の使い勝手を詳しく取り上げたものはまだ少ない。

そこで3列シート7人乗りのGLBの車内にスポットを当てて、ユーテリティ・チェックをしてみることにした。

GLB最大のセールスポイントである3列シートは、乗車人数・荷物に合わせて、2+3+2席をアレンジし様々な場面でフレキシブルに対応できること。

メルセデス・ベンツとしてスタンダードの考えは、普段は2列シートで使用し、3列目は格納して荷室として使用するパッケージ。

3列目シートは、3世代の家族や、仲の良いファミリーと出かける時に、キッズシートとして使用することが想定されているようだ。

3列目シート 実車の写真

それを裏付けるようにGLBのカタログを見ると、「3列目シートは乗車時の安全を確保するため身長168cm以下の乗員が使用できます」とある。

あくまでもキッズや小柄な人のためのシートなのだ。


メルセデス・ベンツGLBの3列目シート    上野和秀

とはいえ安全性に拘るメルセデス・ベンツだけに、2列目と変わらぬシートベルトを始め、高さを調整できるヘッドレストが備わる。

サイドにはポケットが用意され、シート間にはドリンクホルダーが設けられ、ちゃんとした席という認識だ。

身長167cmで太目の筆者が座ってみると、一応座れるがはっきり言って狭い。ヘッドクリアランスもギリギリで、身長160cm以下の同乗者用として使用するのが正解といえる。

それでも往年のS124系に備わる後ろ向きのサードシートに比べれば、はるかに文化的だ。

また、ワンタッチでチャイルド・セーフティシートを装着できるISOFIX対応固定装置は2・3列目に備わるので、好みの席に取り付けることができる。

快適な2列目シート

GLBで最もご機嫌な場所といえるのが2列目シートだ。

リクライニンク機構も備わり、3列目シート使用時に最も前方にスライドしても足元は広く、筆者が座って膝から前席のバックレストまで実測で約10cmの空間を確認できた。


メルセデス・ベンツGLBの2列目シート    上野和秀

座面は60:40、バックレストは40:20:40で分割されており、それぞれを独立してスライド、リクライニング、折りたたむことができる。

140mmスライドするシートを最も下げれば、広々とした空間が登場。ちなみにこの状態ではニー・クリアランスが約25cmまで広がり、Eクラス並みの解放感が得られる。

2列目シートは法規上で3人が座れるが、アームレストを出して2人で使用するのが正解。

写真で見るとシートは平板に見えるが、実際に乗ってみると座り心地に問題はない。バックレストは8段階にリクライニングできるので、ゆったりとくつろぐことが可能だ。

座面からルーフまでは980〜982mm確保されており、Cクラス・ステーションワゴンより高いので、ヘッドクリアランスは問題ない。

ラゲッジスペース 使い勝手は?

SUVとして様々なシチュエーションで使用されるGLBは、ラゲッジスペースの容量が気になる部分だ。それぞれのシートアレンジ時の積載スペースを調べてみた。

まず3列目をフルに使用した7人乗りの場合から。


メルセデス・ベンツGLB 3列目シートを片側だけ倒した状態    上野和秀

この状態では、3列目のバックレスト上部がリアゲートぎりぎりに位置し、カタログで容量は130Lと謳われる。床面で約200mmの奥行しかないため、荷室に入るのはショルダーバッグなどの薄いものが限界。

ボードケース(550×400×200mm/機内持ち込みサイズ)は積めなかった。

そこで3列目の片側を畳むと、奥行936mm(床面)のフラットなスペースが出現する。

Mサイズのスーツケース(710×425×260mm/容量61L)なら、寝かせた状態で楽に積むことができた。立てれば2本を収められるスペースだ。

Lサイズのスーツケース(790×530×280mm/容量84L)も片側を畳めば寝かせた状態で楽に積むことができる。

3列目シートを畳んだ場合

今度は、3列目の両側シートを倒してみよう。

奥行936mm、左右1150mmの広大なスペースが得られ、4人分のスーツケースを楽に飲み込む。


メルセデス・ベンツGLB 3列目の左右シートをともに倒した状態    上野和秀

カタログ値の荷室容量は500Lあり、ラゲッジスペースを比較する際の1つの物差しといえるCクラス・ステーションワゴンの440Lを上回る。

実質的にこの状態がGLBのスタンダードといえ、荷室床下に格納されている巻き取り式トノカバーを取り付ければ、荷室の目隠しができるのでセキュリティ的にも安心だ。

2列目も倒せば1680Lの空間が

SUVとして使用するとスキーやボード、自転車などのスポーツギアを積む機会が予想されるが、GLBは大物でも楽々と飲み込む。

セカンドシートは40:20:40の3分割式で、乗る人数と積む荷物に合わせて自在にレイアウトを変えることができる。


メルセデス・ベンツGLB 2列目シートまで倒すとフラットな空間が生まれる    上野和秀

2列目シートをすべて折り畳めば、フラットな床の荷室が出現。昔のS124のように座面が起き上がるダブルフォールディング・タイプではなくバックレストだけが倒れる方式となる。

しかし、床面は最前部こそ高くなるが、後端までフラットになるので使いやすい。

荷室の前後長は前席シートバック上端からリアゲート内側までの有効長で1687mmを確保。厚みのないボードであればもう少し長いものでも積み込むことが可能だ。

また近年人気がある北欧製の組み立て式家具を買うときも、GLBならば持ち帰りに悩むことはない。

使い勝手の良さがGLBの推し

こうして見てみると、GLBのパッケージングは見事なまでに突き詰められていた。

とくに乗員や荷物の数にかかわらず、どのような使い方にもフレキシブルに対応する考え抜かれた構成が見事といえる。


メルセデス・ベンツGLB 前席内装    上野和秀

スタイリングやキャラクターが類似するモデルが多いSUVの中にあって、GLBは高いオリジナリティと存在感を放っていた。

手頃なボディサイズとあいまって、あらゆるシーンで“使える1台”となろう。