エメリ監督はELでついに久保を先発起用するようだ。 (C)Mutsu FOTOGRAFIA

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 ついにタケ・クボ(久保建英)にスタメン出場の機会が巡ってくる。シーズンが開幕してから1か月余り、タケの起用を巡って様々な意見が駆け巡り、大論争に発展していた。とりわけレンタル元のレアル・マドリー寄りのメディアが限定的な出場機会しか与えないウナイ・エメリ監督を激しく糾弾し、その火の粉は、クラブはもちろん、ビジャレアルの選手たち、そしてタケ自身にも降りかかる事態となっていた。

 たしかに6試合を終えてトータルの出場時間は80分。先発出場の機会はゼロで、1試合平均にすると15分にも満たない。鳴り物入りで入団した新戦力としては少ないと見る向きはあるだろう。しかしエメリ監督にとって、これは開幕前から想定していた事態であり、思い描いていた青写真を実行に移しているに過ぎない。

 序盤は既存戦力を重用し、実際、タケが主戦場とする2列目もジェラール・モレーノ、モイ・ゴメス、サミュエル・チュクウェゼといった昨シーズンからの残留組が優先的に出場。タケに課された役割は後半に投入するスーパーサブだった。

 まずはもともといたメンバーを軸にチームの骨格を固めながら、若手や新戦力を肉付けする。そこに例外はなくタケの場合も定期的に出番を与えながら、ヨーロッパリーグの開幕に合わせてチームの戦術に適応していってもらう。エメリ監督の掲げるプランには特に何の変哲もない。

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 しかも指揮官はメディアの前で繰り返しその自らの考えを明らかにし、タケのような若手に早急な結果を求める危険性を訴えることで事態の鎮静化に努めたものの、騒動は収まる気配はなかった。それどころかタケの活躍を1日でも早く見たいという自らの利害を最優先にするマドリー寄りのメディアはこの定石通りの采配を潔しとすることはなく、周囲からの風当たりは日増しに激しさを増すばかりであった。

 しかしエメリ監督は動じることなく、タケは途中出場という形で実戦経験を積み重ねていった。そして現地時間の22日、つまり今夜、ホームにシワススポル(トルコ)を迎え、両者が当面の照準に合わせていたヨーロッパリーグが開幕する。
 エメリ監督はこの過密スケジュールの開始と時を同じくして積極的にローテーションを導入する方針で、タケのほかにもGKヘロニモ・ルジ、DFラミーロ・フネス・モリ、MFフランシス・コクラン、FWカルロス・バッカといった選手も先発が有力視される。

 ポジションについては、エメリ監督はかねてから2列目の左右両サイド、中央で起用する構想を打ち出しているが、もっとも可能性が高いのは、ここまで全6試合にスタメン出場し、このシワススポル戦は温存させることが濃厚なモイ・ゴメスが担っていた左サイドハーフだろう。

 退場処分を受けた日曜日のバレンシア戦の直後にもエメリ監督はタケについて自らに求められている役割を理解しながら、全力で取り組んでいると賛辞を送っている。タケにとっても待ちに待った先発出場の機会だ。左サイドは必ずしも得意にしているポジションではないが、指揮官の言葉を借りれば、この日に備えて準備を積み重ねていたはずで、当然モチベーションは高まっていることだろう。

 もちろんスタメン出場は確定ではない。しかし取材で得た情報と関係者の話を総合すると、確率は100%と予想する。つまり不測の事態さえ起らない限り、今夜タケはスタメンに名前を連ねているはずだ。
 
 その重要な一戦を前に、朗報が飛び込んできた。前述したようにラ・リーガ第6節のバレンシア戦でタケはイエローカード2枚で退場処分を受け、次節のカディス戦は出場停止となっていた。しかしビジャレアルはこの決定を不服とし、スペイン・サッカー連盟(RFEF)の競技委員会に2枚目のイエローカードの取り消しを要求。映像を通してタケが最初に触れたのはボールで、その勢いが余って相手選手と接触したことが確認され処分が撤回となったのだ。

 これでカディス戦の出場が可能となった。とはいえまずはこのシワススポル戦だ。タケにとって定位置争いをかけたサバイバルレースがいよいよ本格化する。

文●ハビエル・マタ(アス紙ビジャレアル番)
翻訳●下村正幸