「スピード婚」の実情は?

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 リクルートマーケティングパートナーズ(東京都品川区)が実施した「ゼクシィ結婚トレンド調査2019」によると、カップルが付き合ってから、結婚するまでの平均期間は「3.3年間」とのことです。この結果、長いと思いますか? それとも短いと思いますか?

 今回は、そんな平均値を大きく下回り、半年以下の短い交際で結婚に至った「スピード婚」の女性にその現実を伺ってみました。

同じ趣味、3カ月でゴール

「まさか、自分でもこんなに早く結婚するとは思いませんでした」

 舞衣さん(25歳、仮名)は交際3カ月のスピード婚。2人を結び付けたのは同じ趣味でした。

「私と夫は山道を走る『トレイルランニング』が趣味で、ある国内大会に参加したときに出会いました。ジョギングとかマラソンが好きな人は多いけど、山道を走るこのスポーツはなかなか理解されないんです。自分の周囲に同じ趣味の人があまりいなかったので、一気に恋愛感情が盛り上がっちゃいました。『世界観、一緒!』って。

交際を始めてすぐ、一緒に大会に出るため彼の車で出掛けるようになり、行ったり来たりするのも面倒なので、彼のマンションで一緒に住むように。そして、私の25歳の誕生日に婚姻届を出しました。私はあまり結婚という形式にこだわりはなかったのですが、海外の大会に参加するためにパスポートが必要だったので、どうせなら、改姓後の長く使える名前にしようと思って」

 同じ趣味という入り口からの恋愛・結婚を駆け抜けた舞衣さん。スピード婚にありがちな後悔や失敗はあまり感じていないようです。

「もともと、結婚にあまり多大な期待もしていなかったので、がっかりすることも少ないんだと思います。優柔不断なところとか、心配性過ぎるところとか相手の嫌な部分が目に付くこともありますが、もともと、赤の他人なのだからしょうがないと思っています。一緒に育ったきょうだいだって、100パーセント好きってことはないですし。私、弟と仲悪いですから、よく分かります。

嫌な面を見過ぎると嫌になるから、マイナス面は見ずにプラス面を見るようにしています。『毎日、筋トレしていて偉いなあ』とか、『泥が付いたシューズを洗ってくれて助かるなぁ』とかたわいないことです。お互いに相手を自分の思い通りに変えようとしないことが、私たちがうまくいっているコツだと思います」

 パートナーの知らない部分が出てくることが新鮮で楽しみと言い切る舞衣さんの割り切り方が、スピード婚の満足感につながっているようです。

2カ月で決断したものの…

「今考えると、結婚=ゴールだって思っていました。結婚することそのものが目的だったかも」

 交際2カ月で結婚した千晶さん(38歳、仮名)は「締め切り計画型」のスピード婚。先述の「恋愛盛り上がり型」の舞衣さんとは違い、「○歳までには結婚したい」とゴールを決めて、合う条件の人が見つかれば、速攻で結婚に持ち込むパターンです。

「20代のうちは正直、ちゃんと付き合った男性はいませんでした。職場も女性がほとんどの部署で出会いもなかったですし。30代になって、親や周囲からプレッシャーもかかり始めたので、婚活を意識して動き始めました。大手サイトに登録して、定期的に紹介された男性と会いましたが、ピンとくる人はいませんでした」

 千晶さんによれば、自分なりに求める結婚相手の条件は明確だったそうです。浮気をされないように地味な非モテタイプ。お互いが気を使わなくていいような、おっとり型。正社員で手堅い業界に勤めている真面目な人――どれも恋愛対象ではなく結婚対象として、「リスクの低い人」を検討した上での条件だったそうです。

 そして、自ら設定した結婚の“期限”が38歳。40歳までに子どもを生みたいので、妊娠期間とその前の期間を考えて定めたゴールでした。

「38歳の誕生日の4カ月前に会った人がまさに自分の考えた条件を満たしていました。この人なら“ゴール”としてもいいかも、と2カ月で決めました。相手も恋愛よりも結婚相手を探していましたから、話は早かったです」

 しかし、結婚後、相手の実家を訪ねて首をかしげることになりました。

「相手の両親と会ったのは、1回目が結婚のあいさつに行ったとき、2回目が結婚式当日ですからね。お互いの本性が分かるわけがないです。結婚後、初めてのお盆の帰省で泊めていただいて、家の中がほこりだらけ、お風呂の中がカビだらけということに驚きました。

その衛生観念が染み込んでいるのか、夫は入浴も歯磨きも嫌い。仕事から帰宅して、そのまま、リビングのソファで毎晩寝て、明け方にシャワーを浴びるというサイクル。別に入浴できないほど疲れているわけではなく、単にソファでごろごろしてスマホをいじって、寝落ちしているんです。1人暮らしが長かったから、自分なりの生活スタイルなんでしょうね。

『ちゃんとベッドで寝て!』と今まで何百回も言いましたが、『俺は潔癖症だから、汚い体のままベッドでは寝たくない』という謎の理屈でマイルールを改めようとはしません。つまり、毎晩、私はベッドで1人寝。夫婦の営みは旅行のときぐらいしかありません。一緒に生活してみる時間をもっと取るべきだったと後悔しています」

「恋愛盛り上がり型」「締め切り計画型」という典型的なスピード婚の2事例でしたが、当事者の感じ方にはこうした違いがありました。

「最低限の確認」は必要

 このインタビューを終えた数日後、知り合いの絵衣子さん(仮名)から、「私、結婚します」と電話がありました。彼女は現在26歳で「仕事が楽しいから、結婚は考えていない」と言っていたので驚きました。相手について尋ねました。

「高校の同級生です。SNSで『同窓会やろう』ってことになり、久々に会って、付き合うことに」

「何カ月付き合って結婚を決めたの?」

「2カ月たってないかな」

「あちらのご両親には会った?」

「いえ、来月会うことになってるんですけど」

「体の相性は大丈夫?」

「2回しか…」

「……(考え込む)」

 確かに、同級生なら気心が知れて、オープンマインドで付き合えるでしょう。しかし、結婚はお互いの実家も含めて、総合的に考えなければ、後から糸くずのように問題が出現します。

 予期される問題点としては、義母との同居問題、性の不一致問題、夫の隠れ借金問題、“元カノが継続していないか”問題です。絵衣子さんについても、最低でもこれらの項目は話し合ってから決断するのがよいのではと心配になりました。「勢いで結婚しないと、生涯独身」論も肯定はしますが、チェックポイントに目をつむらぬよう、ご用心です。

 スピード婚成功の秘訣(ひけつ)は「これだけは譲れない」という問題点については結婚前に確認しておくこと、そして、「後から出てくる相手の意外な一面、知らなかった一面をどれだけ上手に受け止めることができるか」ではないでしょうか。