新型iPad Air実機レビュー、万人受けする仕様でiPadの新スタンダードに(石野純也)

目下、iPhone 12祭が絶賛開催中ですが、同時に発売されるもう1つのデバイスも見逃せない存在です。第4世代の「iPad Air」が、それです。デザインを刷新し、ホームボタンレスなiPad Proに近づいたiPad Air。第2世代のApple Pencilや、Magic Keyboardにも対応しています。初代11インチのiPad Proを使っている筆者にとって、気になる存在のiPad Air。その実機を、発売前に試すことができました。

▲iPhone 12と同日発売になるiPad Air。こちらもデザインを一新した

ぱっと見のデザインはiPad Proに近づいたiPad Airですが、よくよく見ると、違いもあります。まずはベゼル。iPad Airのディスプレイサイズは10.9インチで、11インチのiPad Proより0.1インチ小さくなっていますが、そのぶん、ディスプレイ周りのベゼルがわずかに太くなっています。とはいえ、これは比較しないと分からないレベル。ホームボタンありだったiPad Airより視界を遮るものがなく、映像への没入感は高くなっています。

iPadはもちろん、iPhoneにも採用されたことがなかったトップボタン一体型のTouch IDも、第4世代iPad Airの売りと言えるでしょう。トップボタンを押してディスプレイを点灯させる際に、そのまま画面のロックが解除されるスムーズな導線ができています。初期設定時に、縦横両方で使う指を登録するよう促してくれるのもいいですね。縦位置と横位置では、使う手が異なるため、きちんと両方を登録しておくようにしたいところです。

▲トップボタンに指紋センサーのTouch IDを統合

▲初期設定時に、向きを変えて登録するよう促してくれる

少々難点だと感じたのが、Magic Keyboardを装着して文字入力をしている場合。現在使用中のiPad Proの場合、リターンキーを押すとそのまま画面が点灯して、勝手に顔を読み取り、画面のロックが外れますが、第4世代iPad Airではキーボードからいったん手を離し、指をトップボタンに当てなければなりません。これが少々面倒。パスコードでサッと解除するか、キーボード使用時にすぐに画面がロックされないよう、ディスプレイの自動ロックの時間を長めに設定しておいた方がいいかもしれません。運用で解決するというわけです。

▲キーボードを使う場合は、画面ロックまでの時間を長くしておいた方がいいかもしれない

とはいえ、今のところは、Touch IDの方がFace IDよりスムーズにロックを解除できるケースもあります。コロナ禍で、マスクを着用している機会が増えているからです。特に筆者がiPadでキーボードを使うのは、外出時の室内が中心。ほかの人がいることも多く、「密」になりがちなシーンが多くなります。そのため、せっかく便利なFace IDも宝の持ち腐れに。であれば、Face IDよりもTouch IDの方がロック解除の手段としても効率的です。本当は両対応でどちらかを選べるといいのですが……。

Apple Pencilを使った書き味も滑らかです。第4世代iPad Airは、iPad Proとは異なり、120Hzのリフレッシュレートに対応していないため、追従性で劣るのかと思っていましたが、これはいい意味で期待を裏切られました。筆者はiPadを使ってイラストを描いたりするわけではないからかもしれませんが、文章への赤入れ程度であればこれで十分。iPad Pro用の第2世代Apple Pencilを使い回せるため、乗り換えた際に買い直す必要がないのもうれしいポイントです。

▲Apple Pencilの書き味は滑らか

iPad Proには、「Z」や「X」がつくチップセットが採用されてきました。iPad用として、主にGPUを強化するためです。一方で、第4世代iPad Airには、iPhone 12シリーズと同じ「A14 Bionic」が搭載されています。ただし、これでパワー不足かというと、まったくそんなことはなく、試してみた限りでは、4K動画の編集も、何十枚もの写真の現像も、サクサク処理できました。

▲写真の現像や動画の編集もスムーズに行えた。画像はLightroom

試しに、第1世代の11インチiPad Proとベンチマークで性能を比較してみましたが、CPU性能は互角でした。iPad Proは、シングルコアスコアが1120、マルチコアスコアが4656。対する第4世代iPad Airは、シングルコアスコアが1582、マルチコアスコアが4203です。マルチコアではiPad Proに軍配が上がるものの、シングルコアスコアはiPad Airが高くなっています。GPUに関しても、iPad Airは12549で、iPad Proの10960を上回っています。

▲CPUのベンチマークスコアは、シングルコアが初代11インチiPad Proを上回っていた
▲GPUは、iPhone 12シリーズと並ぶハイスコア

「A12X Bionic」の「X」はGPUを強化したチップセットのはずですが、それを軽々上回ってしまうとは……。パフォーマンスの面では、Airとは名ばかりで、実質的なProを名乗ってもいいiPadと言えそうです。どうりで、写真や動画の処理がサクサクなはずでした。こうなると悩ましいのが、第1世代11インチiPad Proの乗り換え先です。

3月に登場した第2世代の11インチiPad Proが直接的な後継機になるわけですが、スペックを考えるとiPad Airで十分なところもあります。LiDARや超広角カメラはついていますが、そのぶん値段もお高め。これに対し、iPad Airはカラーが5色で選ぶのが楽しいうえに、64GB版のWi-Fiモデルなら、6万2800円とリーズナブルです。iPad Proは最小構成でも8万4800円のため、ふところに優しいのはiPad Airでしょう。

▲カラバリが豊富で選ぶのが楽しい。写真は試用したブルー

ただし、64GB版は要注意。写真や動画の編集にバリバリ使っていると、容量がすぐに足りなくなってしまうからです。筆者も、「クラウドがあれば十分」と調子に乗って、第1世代iPad Proは64GB版を購入してしまいましたが、あんな画像やこんな動画を保存しているうちに、あっという間に残りの容量が10GBを切ってしまいました。特に最近は、オンラインカンファレンスでスクリーンショットを取ることが多くなっているため、容量はもうちょっとあった方がいいと思っています。

▲試用したのは256GB版だが、最小構成は64GBなので要注意

そこで容量を上げようと思うと、iPad Airは64GBの次が256GBと大幅に上がってしまい、価格も7万9800円に。これでもまだiPad Proの最小構成より安いため、悪くはない選択肢ですが、なかなか悩ましい価格差になってきました。とはいえ、同一容量の256GB版同士で比較すると、依然として1万6000円の差があります。プロ用をうたっていないものの、これだけの性能でなおかつ価格も安い。iPad Airは、一般ユーザーからセミプロ、プロまで、幅広いユーザーの受け皿になるタブレットではないかと感じました。

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