日本人が抱く外国人のイメージと現実とでは大きく乖離しているかもしれません。とくにビジネスシーンでの注意点を紹介(写真:IPGGutenbergUKLtd/iStock)

職場やビジネスで外国人と接する機会が年々増えてきましたが、知らないうちに相手をいらつかせてはいないでしょうか?

シンガポール、アメリカ、日本の3カ国を拠点に24年間働き、現在は、マイクロソフト シンガポール アジア太平洋地区本部長として活躍する岡田兵吾氏(著書に『武器になるグローバル力 外国人と働くときに知っておくべき51の指針』がある)に、外国人と働くコツについて聞きました。

日本人が勝手に抱いている外国人のイメージの間違い

外国人との英会話と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれていますか。海外ドラマや映画などでみられるように、チークキスやハグでフレンドリーにあいさつする場面を思い浮かべられるのではないでしょうか。

チークキスは映画などでは頻繁に目にしますが、「外国人は皆あんなふうに振る舞うのだろう」と考えるのは危険です。親しい友達同士ならプライベートな場でチークキスをすることはありますが、職場ですることはありえません。

プライベートであっても、握手やハグをするときは注意が必要です。女性のほうから握手やハグをしようとした場合は問題になりませんが、男性のほうから握手やハグを促した場合、セクハラとみなされることもあります。

そもそも、外国人だからといって皆がオープンな性格だというわけでもありません。さまざまな国の外国人が集まるビジネスシーンでは、あくまでも「ビジネスパーソンらしい振る舞い」を心がけたほうがいいでしょう。握手やハグについては、相手に敬意を払って丁寧にコミュニケーションを取ったうえで、相手の性格や周りの状況から判断することをお勧めします。

このほかにも「日本人が勝手に抱いている外国人のイメージ」による間違いがあります。ビジネスシーンでの名前の呼び方です。

映画やドラマを見ていると「外国人はファーストネームで呼び合うのが当たり前」と感じるかもしれませんが、ビジネスの現場では、最初は相手に敬意を払ってラストネームで呼びかけるほうがいいのではないかと思います。

ファーストネームで呼び合ったほうがお互い親近感が湧くことは間違いありませんし、多くの外国人はファーストネームで呼ばれることに寛容です。それでも、まずはお互いに自己紹介をして相手の名前がわかったところで「あなたのことをどう呼べばいいですか?」と聞くのがマナー。

このように尋ねれば、相手から「ファーストネームで呼んでください」と言われることが多いでしょう。確認を経れば、ファーストネームで呼ぶことはまったく問題ありません。

いずれにしても、ビジネスでは丁寧さが大切。つねに相手への敬意や気遣いを忘れず、相手が心地よくなるようなコミュニケーションを心がけましょう。

何も言わないと大きなトラブルに

外国の文化について一例を挙げると、「仕事をあまり忙しくせずに一息つく時期」というのは各国で大きな違いがあります。

アメリカでは、サンクスギビング・デー(感謝祭、11月第4木曜日)からクリスマス、年末までが日本で言うところの「正月休み」のような期間に当たります。この間に手間暇のかかる仕事を何気なく振ったりすれば、相手を怒らせることになりかねません。

一方、日本人以外の多くのアジア人にとっては、1〜2月頃の「旧正月」が日本の正月休みにあたります。旧正月からの2週間は、忙しくさせることはタブーです。

またオーストラリアでは1月26日がオーストラリア・デー(オーストラリア建国記念日)となっており、クリスマスから年末年始を挟んでオーストラリア・デーまでが「忙しくさせてはいけない期間」となります。

日本人にとって師走は仕事の繁忙期であり、年末年始にのんびり「正月休み」を取るのが一般的です。これを知らないアメリカ人が、日本人が正月に休んでいることについて「ホリデー明けなのにまだダラダラしているのか」と言っているのを耳にしたことがあります。お互いの文化を知らないと、不要な摩擦が起きることもありますから、注意が必要です。

また、日本では宗教について考える機会が少ないように思いますが、海外では宗教が生活の中に根付いており、時には戦争や殺人事件のきっかけになるほどの重みがあります。まずは、グローバル社会では「宗教への配慮を欠く発言はご法度」ということを頭にたたき込んでおきましょう。ビジネスシーンでも、宗教に関するイベントには特別対応で臨んでください。

同僚や取引先の方などの宗教上の決まりごとについては、それを当然に許容し尊重する姿勢が大事です。例えば、シンガポールではムスリム(イスラム教徒)も多く、ラマダン(断食月)の期間は日中に水さえ飲まない人もいます。ラマダン中は、仕事をあまりハードにせず、早めに帰らせてあげる配慮があったほうがいいでしょう。

また、海外ではチームのイベントで一緒に食事へ出かけたり、会社のイベントで職場にブッフェをオーダーしたりすることがあります。このような場面でも、宗教への配慮が必要になってきます。

ムスリムはイスラム法で許された「ハラル料理」しか食べられません。一方、ユダヤ人は豚とウロコがない魚類を口にせず、牛肉と鶏肉も牛乳と一緒には食べられません。ルールが細かいので、外食時はベジタリアン向けの料理を選ぶほうが多いようです。

このほか、インド人は何でも食べる人もいれば「牛がダメ」「牛と豚がダメ」「肉がダメ」「魚の出汁もダメな完全ベジタリアン」など、いろいろなパターンの人が混在しています。外食時やブッフェのオーダー時には、その場にいる全員の事情を考慮するようにしましょう。

日本ではタブー視されている宗教の話題ですが、多くの外国人にとって宗教は日常生活に密接に関わっています。知っておかないと「地雷」を踏んでしまうときもあるので、普段から外国の文化や宗教について会話に出して聞き出しておくべきです。

外国人との間ではタブーじゃない!

よく「政治と宗教の話題はタブー」と言われますが、実際のところ、宗教や政治の話をすることはまったく問題ありません。

外国人の多くは宗教を持ち、それに誇りを持っています。有名なビジネスパーソンの中にも、例えば敬虔なキリスト教徒で毎週末は必ず教会に行くということをオープンにしている人がたくさんいます。


宗教の話題は、相手を深く理解する意味でも有用ですし、彼らの生活に浸透した宗教行事(ラマダンやお祈りなど)のことを知っておかないと時に仕事に支障が出ることもあります。

私がこれまでに外国人と宗教について話してきた経験から踏み込んで言えば、宗教の話をするほうが外国人から好かれやすいように思います。

日本人の場合は、「宗教の話を聞くことはできても、自分の宗教観を語るのは難しい」という人は少なくないでしょう。必ずしも深く語れる必要はありませんが、会話の中に皆さん自身の個性やオピニオンが垣間見えることは大切です。

例えば私の場合「日本には外国人がイメージするような宗教はないけれど、日本人には『武士道』という考え方があって……」などと説明したりしています。

皆さんも、自分なりに大事にしていることや信じているものなどについて会話に盛り込めるようにしておくことをお勧めします。