日本代表のカメルーン戦とコートジボワール戦は、久保建英を巡るメディアの競争だった。

 試合を中継したテレビ局は、この19歳を絶えず追跡した。テレビ局の盛り上げかたには気持ちが引いたが、久保一点集中の視点はインターネット上の記事にも共通していた。他でもない僕自身も、久保にまつわる記事を書いた。僕らメディアは、久保を巡って架空のカーチェイスをしていたようなものだ。

 その結果として、今回の2試合の本質的な論点が置き去りにされてしまった。

 今年3月と6月の国際Aマッチが中止されたため、日本代表の活動は昨年12月を最後に止まっていた。その12月は国内組によるE−1選手権だったから、海外組を含めた布陣での戦いは昨年11月までさかのぼる。さらに言えば、11月はU−22日本代表の強化が同時進行していたため、堂安律と久保建英は合流していない。大迫勇也と冨安健洋も、ケガの影響でメンバー外だった。

 そう考えると、今回の活動の目的が浮かび上がる。

 止まっていた時計を動かすことに大きな意義があり、具体的には森保一監督が語った「基本的なコンセプトの確認と意思統一」にあった。個人的には活動にこぎ着けたことで、すでに成果があったと考えている。

 ヨーロッパでのテストマッチは日本開催より中身が濃くなる、ということも再確認できた。

 日本代表の編成が「史上初のオール海外組」と騒がれたが、カメルーンも全員がヨーロッパのクラブでプレーしている。コートジボワールは21人のうち18人が、ヨーロッパのクラブに在籍していた。ヨーロッパから日本へやってくる時間を節約できたので、どちらのチームもコンディションは良かった。

 ワールドカップ予選がアジアで行われる以上、日本代表の選手たちは「ヨーロッパから帰国してすぐに試合をする」という感覚を持っていなければならない。そのために国内でテストマッチを戦うのは、スポンサーとの関係やファン獲得のためにも必要だと言える。

 ただ、チームの強化という観点に立つと、テストマッチの一部はヨーロッパ開催にしたい。マッチメイクのハードルが下がるだろうし、何よりも試合内容が濃くなる。

 相手のコンディションが良ければ、選手を見定める確度も上がる。森保監督の指揮下でこれまで対戦していなかったアフリカ勢との2試合を通して、吉田麻也、酒井宏樹、冨安健洋のクオリティの高さを確認できた。彼らが揃った守備は、チームの強みになる。

 ヨーロッパでのテストマッチとなると、Jクラブ所属選手は移動の負担が増す。しかし、長距離移動による疲労や時差を経験することは、ACLの戦いに役立つ。国内組が国際基準のタフさを身に着けることは、Jクラブにとっても利益になる。悪いことではないはずだ。

 11月のテストマッチも、ヨーロッパで行われることになった。すでに17日のメキシコ戦が発表されている。メキシコは国内クラブでプレーする選手も少なくないが、コンディションは日本ではなくヨーロッパで対戦したほうが整えやすい。選手の負担を軽減でき、お互いにとってメリットのあるテストマッチになる。

 今回の活動では、日本代表の選手とスタッフから新型コロナウイルスの陽性反応者は出なかった。もう少し経過を観察していく必要はあるが、こうした活動を重ねることで感染対策の知見を得ることができる。

 カタールW杯アジア2次予選は、来年3月から再開される予定だ。その時にはまだ、世界は間違いなくコロナ禍にある。感染症対策のモデルを作り上げていくことも、10月、11月の活動の重要なポイントになるだろう。