住宅街に店を構える「新京」

写真拡大

 安い、美味い、居心地がいいといった理由で人気を集める“町中華”。その中でも、驚くほど激安で営業を続けているお店がある。そうした店はなぜ潰れないのか、そしてその魅力とは?実際に食べにいき、理由を探る。

◆地元住民に愛されてこその町中華

 最初に紹介する「新京」は、西武池袋線の東長崎駅から徒歩10分ほど、練馬の住宅街の中にある。周囲には大きな施設があるわけでもないので「ついで」で訪れることは、ないといっていいだろう。

 古びた暖簾をくぐると80がらみの老夫婦が迎えてくれる。驚くべきはその値段。ラーメンがなんと300円だという。店主に安さのわけを尋ねると「儲けは考えてないからね」と笑う。その他のメニューも、令和の都内とは思えない安さが並ぶ。

「50年以上前にこの店をはじめて、それからずっと値段を変えてないだけだよ」という店主と会話をしつつ、筆者は「たんめん」(400円)を注文。カウンター5席とテーブルが2卓とこぢんまりした店内は、調理スペースも小さく、台所以上厨房未満といった風情。

 その中で存在感を放つ大鍋で炊かれているスープを、小さな鍋にわけてそこに野菜を投入して調理していく。驚いたのは、豚肉も注文が入ってからカットし、ニンニクもその場で切って入れるという手間のかけよう。

 7〜8分で提供された「たんめん」は、豚肉やしいたけの他にも、ニンジンやピーマンなど彩り豊かな野菜もしっかり入っていて、到底400円だとは信じがたい。スープをすすると、鶏ガラと豚骨を毎日炊いているというこだわりの深い味わいで、しっかりと芯があるが、野菜の甘みによって角が立っていないまろやかさ。麺は白っぽい中細麺で、少しちぢれがありスープにもよく絡んでいる。量も申し分なく、満足感の中で完食。

 訪れたのは平日の昼時前だったが、筆者の前後にも、地元客が食事をしていた。ここが潰れない理由は、地元に愛される店であることと、安くても手抜きをしない、料理へのこだわりにあるようだ。

 帰り際、店主が「もう体も大変だから、ボチボチ店を閉めるかもな」とこぼしたのが寂しかったが、無理のない範囲で続いて欲しい店だ。

◆東京の超一等地にある激安中華

 毎年3月、日本国内の地価が発表される度に最高額として名前が上がる銀座。もっとも高額な場所では、ハガキ一枚分の敷地が80万円を超えるという。そんな銀座の新橋寄りに店を構えるのがラーメン「三吉」だ。

 商業施設の地下にさがる暖簾をくぐると、カウンターのみ9席の小さな店内で、厨房は夫婦で切り盛りしている。ここ三吉、驚くべきことに銀座にありながらラーメン1杯300円で提供しているのだ。さっそく、ラーメンを注文。

 わずか3分ほどで提供されたラーメンは、透き通った醤油ベースのスープにちぢれ麺が泳ぐ、シンプルなもの。鶏ガラの風味が立つスープは自家製で、毎日何時間も味を見ながら炊いていると店主は言う。独特なちぢれ麺も厨房の奥にある小型の製麺機で作られた自家製で、他では味わえない独特な口当たりを生んでいる。具はチャーシューとメンマ、そしてネギが散らしてある。銀座で300円のラーメンを出していて具まで乗せているのは、ボランティアか何かだろうか。

 こういった店は「創業当時から価格はそのまま」といったところが多いが、ご主人は「昭和50年にオープンしたんですけど、その時は80円だったんですよ」と話す。長年にわたり安さを徹底しているようだ。新橋に近いこともあり、サラリーマンにとってこの価格は何にも変えがたい。安さの訳について奥様は「まず、夫婦でやってるので人件費が節約できますよね。それと、うちはスープも麺も全部自家製でやってるので、中間マージンが取られないんです」と教えてくれた。全てを夫婦2人で完結させることで、この激安価格のまま、銀座で生き抜いてきたのだった。