名古屋はジェジエウに2ゴールを許した photo/Getty Images

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18日にJ1第23節川崎×名古屋が行われ、川崎が3-0で勝利した。名古屋は第12節の対戦で10連勝中だった川崎に1-0で勝利しており、今節も“もしかしたら”と考えられたが、盤石の相手に跳ね返されている。試合前日のオンライン会見で「先制点が一番大事。こちらが先制し、相手に取らせないことが大事」と語っていたのは去年まで川崎でプレイしていた阿部浩之だったが、言葉どおり先制点が明暗を分ける展開となった。

前半30分ぐらいまでは名古屋が良いリズムで試合を進めていた。「シュートのところで個人的な能力が高ければ入っていたかもしれない」と振り返ったのはマッシモ・フィッカデンティ監督で、決定的なチャンスもあった。13分、稲垣祥からパスを受けた左サイドのマテウスがファーサイドにクロスを送る。このボールを金崎夢生が頭で落とし、フリーで走り込んだ前田直輝が利き足である左足でフィニッシュした。20分には高いポジションでボール奪取に成功し、素早くつないで米本拓司がペナルティーエリアのやや外から右足ミドルで狙った。しかし、いずれのシュートもゴール枠内に飛ばず、重要だった先制点を奪うことができなかった。

「前半は相手のプレスに対して、うまくボールを回せていました。そこから先は、精度、アイデア、スピードが必要ですが、決して悪くなかったと思います。ああいうゲームを続けるというか、ベースにして上積みができればと思います」(阿部浩之)

抜群に完成度が高い川崎から勝利するためには、こうした自分たちの時間帯にしっかりと得点できないと苦しい。状況を打開するべく川崎が中盤の構成を変えると、主導権も徐々に移っていった。それでも、高い集中力を維持して名古屋は耐えていたが、44分にキッカーが中村憲剛から田中碧に変わった1本目のCKに対応できず、ついに先制点が生まれた。

「先制点が大事だと思っていたのですが……。そこからフロンターレに好きなようにやられてしまいました。ただ、それまでは良かったと思います」(阿部浩之)

「前半終わりの失点でバランスが崩れ、後半は前半と同じような戦い方ができずに失点を重ねてしまった」(マッシモ・フィッカデンティ監督)

いまの川崎にリードを許すというのは、こういうことを意味する。その後、セットプレイでさらに2点を奪われて試合は終了した。先制点につながったCKは、ジェジエウのドリブルでの攻撃参加から生まれていた。試合後の阿部は「セットプレイでスキを作らないのはもちろん、CKに逃げないでスローインにするなど、セットプレイを与えないことが大事」と振り返っている。また、それ以上に感じた古巣との違いも言葉にしてくれている。

「スイッチが入ったときの人数のかけ方が去年よりも迫力があって、どんどん人が出てきていました。そのなかでも、出ていく人の役割があれば、展開するためのポジション取りをする役目もあります。それをみんなが理解しながらやっていたと思います。対して、うち(名古屋)は役割分担じゃないですが、出ていく人が少なかったり、もう少し前にポジションを取らないといけないのに、取れていなかったりがありました。ポジション取りの精度、速さに差があったと思います」

こうした感覚は、今シーズンの川崎と対戦した多くのチーム、選手が感じているはず。もうそろそろ、優勝が決まりそうである。今後、各チームがいかに“王者”との差を埋めていくのか──。川崎自身が成長を続けているだけに、この視点は中長期的な見どころになりそうだ。

取材・文/飯塚 健司