ニュージーランド・オークランド北方約100キロのマンガファイで開かれた選挙集会で演説するビリー・テ・カヒカ・ジュニア氏(2020年9月9日撮影)。(c)Diego OPATOWSKI / AFP

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【AFP=時事】ニュージーランドのブルース・ギタリスト、ビリー・テ・カヒカ・ジュニア(Billy Te Kahika Jr)氏(48)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による混乱の最中、陰謀論者を代表する一人に変身した。そして、先週末の総選挙で議会に反エスタブリッシュメント(既存支配層)の一派を送り込もうと果敢に挑んだが、有権者らからはっきりノーを突き付けられた。

 選挙活動中のテ・カヒカ氏は、しゃれたスーツに身を包み、「良識のある人物」といったイメージを前面に押し出していた。陰謀論者がかぶるとされる「アルミ箔(はく)の帽子」をかぶっていないことに、自分に批判的な人々も驚くだろうと冗談を飛ばす場面すらあった。

 テ・カヒカ氏は先ごろ、オークランドでロックダウン(都市封鎖)に反対するマスクなしのデモを率いたことで、コロナに関して命にかかわる誤情報を拡散し、社会を分断させていると批判された。

 テ・カヒカ氏のソーシャルメディア投稿や演説には、陰謀論がちりばめられている。新型コロナが流行する中、世界中のインターネット上にはびこるようになったのと同種の陰謀論だ。

 そうした陰謀論で決まって語られるのは「ディープステート」と呼ばれる闇の政府の存在で、コロナ危機については各国政府による国民の奴隷化が目的だと説明される。

 テ・カヒカ氏は今月、辺境の海辺の村マンガファイ(Mangawhai)で開かれた新党「アドバンスNZ(Advance NZ)」の集会で、政府の行き過ぎた新型コロナ対策に対抗する意向を明らかにし、首相の「ジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)氏には社会主義者の息がかかっている。彼女がわれわれを先導する先には、中流階級を丸ごと排除し、われわれの権利と自由を奪おうとするもくろみがある」と語っていた。

■惨敗

 ビリー・TKの愛称で知られるテ・カヒカ氏のフェイスブック(Facebook)のページには、数百万ビューのアクセスがあったが、17日の総選挙ではこの数字がそのまま得票につながることはなく、同氏率いるアドバンスNZ党は惨敗を喫した。

 テ・カヒカ氏自身は選挙前、党として15%の得票率を予想していたが、結果的にわずか0.9%しか獲得できず、60人余りの候補者全員が落選した。

 投票日の2日前、フェイスブックはアドバンスNZ党のページを削除した。これについてフェイスブックは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する虚偽情報が繰り返し発信されていたためと説明している。

 フェイスブックでは最近、誤情報に対して積極的に介入する姿勢を強めているが、ニュージーランドの届け出済みの政党に対するこうした措置は初めてだった。

■結党直後の驚くべき数字

 今回、出馬を表明するまで、テ・カヒカ氏は自らの天職は父親と同じミュージシャンだと語っていた。テ・カヒカ氏の父、ビリー・テ・カヒカ・シニア(Billy Te Kahika Sr)氏は「太平洋の(ジミ・)ヘンドリックス(Jimi Hendrix)」と呼ばれた著名ギタリストで、音楽的な影響力は息子よりもはるかに大きい。

 だが、テ・カヒカ氏は6月23日、フェイスブックに「やあ、みんな! ギターは少し置いておいて、美しいわが国と自由を守るために取り組むことを決めた」と投稿。同時にアドバンスNZ党のページもフェイスブックに開設された。

 ソーシャルメディアの分析を手掛ける「クラウドタングル(CrowdTangle)」のデータによると、同党のページ開設以降の動画再生回数は500万回を大きく超えていたという。人口自体が500万人の国で、結党直後の数字としては驚くに値する。

 なお、アドバンスNZ党が掲げている主な主張のうち二つについては、AFPがファクトチェック(事実検証)を行い、偽りであることを証明している。一つは、政府が軍に個人宅への立ち入り権限を与えたという主張。もう一つはやはり政府がワクチンの強制接種を計画しているという主張だった。

【翻訳編集】AFPBB News

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